表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冥府の先まで 〜記憶喪失なんだけど、闇も執着も底が見えない男に捕まった〜  作者: アマヤドリ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/70

決裂の調べ①

読みに来てくれた方、ありがとうございます。

評価やブクマも嬉しいです!




すっかり陽が落ち始めて、辺りは暗くなり人影もまばらになっていた。


(…どうしよう。)

きっとシルドさんは心配しているだろう。

だが、自分の記憶と照らし合わせた事実が己を苦しめる。


(私は…500年も寝ていたの?)


どうして話してくれなかったのか。

なぜ今までずっと秘密にしていたのか。

…そうやって責めてしまう。

(…シルドさんに話して…いや話してくれるかな。)


(でも、いつまでもここにいる訳にもいかない。)

これからどうするかは考えていないが、レリアは立ち上がると小道の奥から何故か光が零れているのが分かる。

しかもどんどん近くなっているのか、光が移動している。


「えっ。」


(なんでここに…!)


それは先ほどまで見ていた白い葉だった。

だがよく見ると枝もついてふわふわと宙に浮いている。

黄金の輝きを放ちながら、自分の前にまでゆっくりときた。


「どうして…。」

訳が分からずに茫然と立っていたが、掌に伝わる温かな光が心の動揺を落ち着かせてくれる。


(触れろって事?)

枝を持つと一瞬で葉が生い茂った。

きらきらと輝く光の粒の1つ1つから声が聞こえる。


(これ、神樹よね?)

しげしげと眺めていると、突然枝も葉っぱも輝きに満ちて全て光の粒になって弾けた。




「うわ!!」

壊しちゃったと慌てているのもつかの間、記憶の波にさらわれる様な感覚で視界が白く染まっていった。



ーーーーーーーーーー


白い光と金の瞬きが視界を覆いつくすと、あちらこちらから声が聞こえる。


「なら私は…貴方とは、友達をやめます。」

(…えっ。)

その中でも、強烈な拒絶の声が唐突に胸を貫く。

思わず聞こえた方に目を向けると、いつもと違うが赤い目をしているシルドと思しき人物がいた。

黒い十字の動向が開いており、怒りが宿っているのがはっきりと分かる。


(…えっあっ…シルドさん…?)


「守って欲しいと頼んだ事はありません。むしろ、今では力は私の方が強い。守ってもらわなくて結構です。何より貴方とはじめて友になろうと誘われた時から、ずっと違和感を感じていました。」


声色で彼なのかと気付いた。

目は違うが間違いない。シルドだとレリアは確信する。


「それに、何故、耳を傾けて下さらないのですか!貴方が嫁いだ所で、あの馬鹿な王が止まると、本当に思いますか?愛人を、王妃の席に座らせる様な輩です。貴方を大事にするとは、とても思えない!」




ーーーー「(でも…!彼はモリアスの子孫なの!)」


(えっ…?)

思わず口に出してしまった声に、レリアの時が止まった。


「それとも、あの者らも大切なものに入っているのでしょうか?私を大切だという口で、同じように...。」



「どこまでも、「愛」とやらがお好きな様で...。貴方を見ていると、最近どうも苛立ちます。」



ーーー「(やっ、いや、ごめ、)」

咄嗟に謝ろうとするも声が出ない。


「謝るくらいなら、何故...。...何故受け入れたのですか!!」

慟哭の様な声で責められる。

憤怒の形相でこちらを見る彼に、レリアは胸が締め付けられそうになった。



「契約が我々にとって、どれほど重い事なのか…分からないはずないでしょう?」

「貴方の場合、破棄はどちらの同意もなければ出来ません。それでもいいと、なぜ受け入れたのですか!」

ただ只管ひたすらどう彼に伝えればいいのか分からずに黙る。


(「...。」)


「答える気はないという事ですか...。」

冷たい瞳に見下ろされていながら、レリアはついに記憶に見える彼の顔も見る事が出来ずに俯いてしまう。


「いいでしょう。私にも考えがあります。」

「貴方が、その様な態度を取り続けるという限り...。考えを改めないというのでしたら...。」

そう言いながら己に背を向けていく。そのまま黒の外套を翻して踵をかえして歩き出した。


ーーー「(ま、まって!)」

手を伸ばそうとしたが振り払われる。

縋る事も、話す事も許されないという雰囲気が、彼との距離をどんどん離していく。



「ああ、博愛な貴方は、憎いです。」

扉の前で足を止めて呟かれる。

最後の言葉が、レリアの心をより一層凍り付かせた。



「さようなら。」

目の奥に哀しみを携えながら、シルドは吐き捨てる様な言葉の棘と共に大きな白い扉を開く。


やがて扉からバタンと大きな音を立てて、彼は去っていった。




ふわりと溶ける様に「シルド」の姿は掻き消える。

だが、レリアは彼から向けられた感情に耐え切れず、ぽろりと涙を零した。

訳も分からず哀しいと心が叫ぶ。



ふわりと金色の丸みを帯びた光が、胸に触れて気持ちに呼応するかの様に語り始めた。


ーーー…本当は助けてっていいたい。


ーーー結婚なんてしたくはない。でも、拒否すれば...。


ーーーーーーーー


私は、この世ではじめて、神と婚姻する!

ははははは


断わるのか?守護神。

悔しそうだな。


そうだなぁ。

今度また税を上げるか?


お前は私を傷つけられない!



おっと、守護神とあろう神が、他の神に助けてと言うのか?

情け無い。そうだな…結婚に反対するなら…民の中から何人か見繕うか?


はははと高笑う、大切な友人の子孫。

目はモリアスと変わらず、稲穂の様に豊かな色味を帯びていると言うのに、その奥は氷のように冷たい。


ーーーーーーーーーーーーーー


ーーー(愚かな契約をしてしまった。)



…博愛じゃない。

私は、私の好きな人しか愛していない。

モリアスも、ジゼルも、アリスも、それから町の友人や騎士団の皆が、私にとってたいせつな人達。

だが、今の王になって国は荒れ始め、領土を広げようとする様になってしまった。



剣を握るのも

英雄や聖女の様だと言われるのも。


人を斬る感覚も。


モリアスと約束したのに。

不殺をと、守りの為に力を使うと…。

彼との約束を、破ってしまった。

本当は嫌だ。でも、このまま逃げ出したら、神としての私の力は弱まり続けるだろう。

そしたら、誰が「私の大切」を守ってくれるのか。

残念ながら、今の王に期待は出来ないし、私が嫌がれば貴族や王が民に厳しい政策をとってくる。



民が人質となっている今の状態

モリアスが見たら何と言うか...。



…私の大事な人を守りたい気持ちは、その気持ちだけは嘘偽りない。

大切なものを守るなら、手段は選ばない…あの愛人となんら変わりないのだろう。



今の王と貴族を...なんとかして引き摺り下ろさなくては。




だから、いかないと。

だから、ごめんなさい。◾️。



ーーーー貴方とはじめて友になろうと誘われた時から、ずっと違和感を感じていました。


友達の関係も嫌だったのだろうか。

でも、最後に見た時…目が怒りだけではないのは、分かった。





…貴方を悲しませて、ごめんなさい。


…シルド。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーー


「はっ...あ。」


白い光に包まれていた身体が解けていく。

やがて一粒ずつ輝く黄金の球体が、指先や胸、身体のいたるところに舞い落ちて吸い込まれていく。


(今の...何?)

(私、何を見たの...。)



瞬間、割れるかの様な頭の痛みが襲いかかる。


「あっ…あ゛!!」


ーーーーー


レリア様


レリア



レムリア...。


ーーーーーー


どういう事か、理解し難い映像が頭を流れていったが、はっきりと自分にしっくりくる様な感覚。

抜けていた記憶のピースのほとんどが埋まった。



(そうだ…)


思い出した...私は、私が..!


友人達。

仲間も。

モリアスの事も。


そして、今までの記憶に出ていた残像の彼が、冥炎の神シグルードという名前なのを。




ーーー自分が、守護神レムリアだったと言うのを。






「レリア。」


ひくりと肩が動く。

誰の声かは明白だ。


だが聞こえてきた後ろを振り向けなかった。

自分の警戒心が最大限に引きあがるのをレリアは無意識に感じる。



「何処に行かれるのですか。」


夜の闇が濃くなった裏通りに、本物の闇が訪れた。


最終章に入っていきます。

完結後にまだやってない番外編を更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ