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冥府の先まで 〜記憶喪失なんだけど、闇も執着も底が見えない男に捕まった〜  作者: アマヤドリ


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5-⑥

読みに来てくれた方、ありがとうございます!

もうそろそろで終章に入ります。





次に意識が戻ると、レリアに見覚えのある場所だった。



目がチカチカする様な豪華なシャンデリア。

高らかに鳴り響く音楽。

それに、華美に着飾った男女が楽しそうに踊っている。

胸元や髪の毛には白い葉がブローチのように飾られており、参加している全員がつけていた。

葉っぱは不思議な光を帯びながら、時折輝きをもたらすす。


(ここ…。どっかで見た様な…。)

ふと視線が上になった瞬間、ホール天井にある女神のステンドグラスが視界に広がった。

灰色の様な髪に、花で彩られた女神のステンドグラス。

(あの城...?)

細工の周りの文字はなかったが、間違いなくシルドと自分が過ごしていた城だと分かった。



記憶を覗き見ていながら、これが自分なのか…はたまた違う人なのか…と思っていると記憶の持ち主が動き出す。どうやら、来賓の客の男性に向かって歩いている様だ。



「やあ、ハルグス卿、パーティーを楽しんでおられるかな。」

「ええ、勿論、カール卿。しかし...今日の主役はまだの様です。早くお会いしたい所なのに。」

どうやら自分は、「ハルグス」なる人物になっているというのが分かった。

グラスの酒を煽りながら、カールという名の人は肥えた身体を揺らしながら近づいてくる。

「まったくだ。焦らされているようで...おや、来た様だな。」


赤い式典用のカーペットが敷かれた階段の上から、王冠を被った年若い青年が現れた。


「国王陛下の御成!」


(国王…?)

レリアは王と紹介された彼を見る。


(えっ…!!)


金髪に陽の様な瞳

背格好、立ち姿や口元に浮かぶ笑みまで…


何もかも「モリアス」にそっくりだった。



(でも、どうして...。)

頭で酷く混乱していると、突然、頭が床を向いた。


どうやら全員が頭を下げているようだ。

しかし、隣にいる彼と一緒に会話をボソボソと続けている。


「あれが...新しい王ですか。」

「革命に偶々成功した…運の強い私生児よ。」

(私生児…。)


あの自分が知るモリアスが国王な筈がないと、レリアは偶々似ている人だと…咄嗟に自分に言い聞かせた。…だが、偶然と呼ぶにはあまりに似すぎている。


「ふん、随分と身体もだが器も小さそうだ。」

「我々の大きい器を見せて良さそうですね。」

「そうだな。後で会いにいくとしよう。」


(...うわぁ。)

汚い大人の内面をみたようだ。

なんて不穏な事を考えるんだ。

支えてあげなよ大人!


モリアスに激似な青年へ、レリアは憐みの気持ちを向ける。

逃げて!其方に嫌味な男が2人行くから!と思うも、無常にどんどん近づいていく。


挨拶の順番になると、人込みに紛れて分からなかったが、隣にヴェールをした背丈が同じくらいの女性らしき人物が彼の傍で立っていた。



「彼女が...お初にお目にかかります、勇者様。」

ぺこりと白いヴェール越しに「勇者」がお辞儀をする。


「これはまた、随分とお可愛らしい。」

「王の側に寄り添っていると、とてもお似合いで。」


(嫌味だ...。)

確かに小柄かもしれないが、遠回しに2人とも小さいと口で攻撃している。



「共に苦しい時を乗り越えた戦友でもあります。」

王は彼女の肩に手をやりながら、にこりと微笑んで伝える。


(話し方まで…。)

何もかも、自分の記憶にある「彼」にそっくりだった。


「似合うというのも満更ではありませんが…。」

言い終えると、なぜか王の視線が後ろに向けられる。

それに気付いたのか、記憶の持ち主も後ろを振り返る。


すると人の波が横に割れ、1人の足の長い黒ずくめの人物がこちらに来た。

王の隣にいた彼女と同じように黒く長いヴェールをしており、歩くたびに黒髪がさらりと靡いている。

また、背も高さだけではない圧倒的な雰囲気を身に纏っているせいもあるのか、周りにいる人々は次々深々と礼をしていた。


王の傍にいる彼女の隣へと、自然な流れで立つ。

白と黒のコントラストが対照的でありながら、2人の立ち姿はとても神秘的で目を惹かれるものがあった。


「残念ながら今日のエスコート役は私ではないのです。今日は、私の最も信頼する友人が、エスコート役を引き受けて下さいました。」


「紹介しましょう。」

王自ら前へと促すと、2人を見下ろす。

緊張なのか怯えているのか、2人共立ち尽くしていた。

黒いヴェールの人物が誰なのかを分かっている様子だった。



ーーー「ウォーレムス帝国の皇帝であり、そして死の…冥炎の神であるシグルードです。」



「...!?!」

その名にハルグスとカールが慌てて深々と礼をする。


「可愛らしい彼女ですが、彼と共にいると、きっと大人な女性に見える事でしょう。」

(やりおるな。この青年。)

(ふはははは、ざまあー!)

視界の端でぐぬぬと冷や汗を流して悔しそうにしているカールを見ながら、自分がした訳ではないのに手を叩いて喜ぶ。

(それにしても…前に名前も似てると思ったけど、雰囲気もシルドさんに似てるなぁ。)

髪の色も黒くて一緒だと思っていると、やがて2人がすごすごと退散していった。


やがてパーティー会場にあるベランダ付近のカーテンで立ち止まると、記憶の自分であるハルグスが口を開いた。

「…あの新しい皇帝は、出方を考えた方が良さそうですね。」

「表は友好が宜しいかと。」

「そうだな。帝国の神が背後にいるなら...それ以外で力を削げばいいだけの事よ。所詮小童…どうとでもなる。」

カールは雑談の様に言っているが、新しい王に対しての不満を漏らしている。



「政務では…今夜の様に、軽い口が役立つといいがな。」

ぐるりと淀んだ瞳が、人々に囲まれる王へと向けられた。



ーーー「…モリアス新皇帝。」



(...モリアス?…まさか...。)


口惜しそうに呟かれた名前に、レリアは呼吸が止まりそうになる。



新皇帝の顔をもう一度よく見てみる。

明るい会場の中、一番の主役として輝く彼の笑いがホールに響いていた。

まるで太陽の様なその人を。


(本当にモリアス...。あなたなの?)


自身の知り合いになんと王族がいたかもしれないという事実に、思考がぐるぐると回っていた。


心の中で疑惑が確信を得始めた瞬間、意識が引っ張られる感覚があり、彼の姿は霞に溶けていく様に消えていった。


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