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冥府の先まで 〜記憶喪失なんだけど、闇も執着も底が見えない男に捕まった〜  作者: アマヤドリ


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5ー⑤

読みにきてくれた方ありがとうございます!

5章も終盤に差し掛かりました。




「ふぅ…。」

思わずベンチに腰かけているエルスは、思わずため息が出ていた。

「疲れましたか?」

にこりと、ちっとも隣で疲れていない様子のシルドが聞いてきた。


「…。」

どの口が…と言いたくなったが、多分口では負ける事は目に見えているためレリアは黙り込む。


歩き疲れと手を繋がれ続ける精神的な疲れにより、レリアは中庭にあるベンチに腰掛けて休憩を取っていた。


近くの噴水の脇に飲み物を売る出店があったため、シルドが買いに行ってくれたジュースを渡されて飲みながら喉を潤す。



「…?」

一瞬錆びた様な後味がしたが、気のせいかとそのまま飲み干した。


「ふう…。それにしても、ここの場所って本当に広いですね。」

「私も過去1度しか来ていませんが、前より随分と大きくなりました。」

中庭のどんより曇る空を見ながら、色々と感想を言い合う。


レリアはちらりと、隣に座るシルドを見上げた。

悪戯とはいえ、先ほどまで手を繋いでいたのを思い出して顔を赤くする。

唐突に意識してしまったレリアは、視線を波打つコップの液体へと無理やり向けた。


レリアは恥ずかし気にしていたが、肩が触れ合いそうで触れ合わない、そんな距離感で座る2人の間には穏やかな時間が流れていた。


(…また、来たいな…。)

(こんな時間が、ずっと続けばいいのに…。)


「…この時間がずっと、永久に続けばいいと思ってますよ。」

「…え?」

驚いてシルドの顔を見る。

まるで心の内を読んだかのように、此方を彼が微笑みながら自分に聞こえる様に囁いだ。




どう言う意味かを尋ねようとしたが、レリアはそれを聞いてどうするのだと口をつぐむ。

自分と同じような気持ちかも分からないのにと、勘違いするなと心の中で葛藤した。

悩み始めて何も答えない彼女をくすくす笑うと、シルドは十字の目をレリアから彼女の背後へと移した。



「…さて、しばらくここで休んでいて下さい。…私に用向きがある方がいる様なので。」

シルドの視線の先には、黒い服を着た黒の使徒がじっ…とこちらを伺っていた。

「お仕事ですか?」

「そんなところですかね。」

少し話してきますと、シルドは優雅に席を立つ。


「いい子で待っていて下さいね。」

「はーい。」

「誰かから何か渡されても、飲んだり食べたりしないように。」

「…そこまで信用ありません???」

子どもじゃないですとレリアは少しばかりむくれつつ、ベンチから黒い髪を翻して去っていく彼へと手を振ったのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



「…相変わらず、自分の事には鈍いですね。」

毛先が紺に少しだけ染まる彼女の髪を目で追い、まずコップを捨てにシルドはその場を後にする。


「信頼してくれているというのは分かりますが…いささか不用心と言わざるを得ません。」

誰にも聞かれずに呟き、血のにじむ指先を見つめた。

だがその血はヒトの流す「赤」ではない。

もっと黒く、どろりとしたものだった。



「…彼女を見ていなさい。」

どろりとシルドの影が動き、一部が地面を這っていく。


「…。」

シルドは指先についた傷にふっと息を吹きかける。すると、みるみる傷口が閉じてあっと言う間に塞がった。




「久しぶりに聞きました。...貴方の心の響きを。」


「私も想っています。幸せな時間が続くことを。」

貴方と同じ気持ちである事が、こんなに嬉しいなんてとシルドは笑みを綻ばせた。



「...大丈夫ですよ。そうしてみせますから。」

何があってもと、ゴミ箱へ捨てられたモノを覗き見ながら、シルドは決意した瞳を宿していた。

顔を上げると、もう普段の微笑を湛えて歩き出す。



「思い出すのに近づけるといいですが…。」

こればかりは私の苦手な運にかかっていると、ベンチで休む彼女に自分の「目」をつけて暫く見守る事にし、自分を尋ねに来た黒の使徒の元へと向かっていった。




ーーーーーーーーーーーーーーーー



レリアはシルドが黒の使徒と話しているのを見て、取り合えずあまり離れない様にと、噴水の周りを散歩しながら待つ事にした。


噴水には様々な彫刻があり、どれも意匠が凝ったものだった。

鳥や葉っぱ、花や蝶…。

その中に剣の模様が彫られているのを見付けた。


(これ…。)

前にも似た様な剣を見たことがあるのを、レリアは思い出す。


ーーー「神名 レムリア」

あれから、あの夜に見た記憶について色々と考えていたものの、結局よく分からないという結論しか出てこなかった。剣を扱う神様なのかとなんとなく思ってはいるが、自分の記憶には関係ないだろうと…。


(自分の知り合いに、神様はいないと思うし。)

だが「思い出した」という感覚は拭えず、ただ違和感が残り続けている。



ーーー「ーー!」


びくっと、大きく聞こえた声にベンチに、座っていたレリアの肩が跳ね上がる。


「え…?」

きょろきょろと周囲を見てみるも、周りは談笑したりのんびり歩いていたりと特に変わった様子はない。



ーーー「万歳!」

もう一度、今度ははっきりと耳に入ってきた。


ーーー久しぶりに聞こえる、はっきりとした記憶の声だった。

何処から聞こえてくるのだろうと、歩きながら声がした方向へと足を向ける。


(これから聞こえてくる...。なんだろう?)

観光客の合間から、ちらりと後ろから見てみる。

中庭の中央にある噴水の前に、地面に突き刺さる長方形の透明な箱のようなものがあった。

見ていた人がいなくなり前へと進み出てガラスケースを覗くと、入っている白い葉っぱから、声が聞こえてくる。


不思議な事に、真四角のガラスケースの中で葉がふよふよと浮いていた。


(どっかで見た事ある様な…。)

白い葉をしげしげと見ながら、近寄ってガラス越しに手を伸ばす。



「…っわ!」


近づきすぎたと思った時には、もう既に遅かった。

次の瞬間、葉とレリアの両方が光に包まれ、彼女の視界は白く染まっていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




話が長くなりそうだったので、分ける事にしました。

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