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冥府の先まで 〜記憶喪失なんだけど、闇も執着も底が見えない男に捕まった〜  作者: アマヤドリ


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手にしたものは5-①

5章に突入しました!

読みにきてくれた方ありがとうございます!

評価やブクマもありがとうございます!



ーーー夕闇から夜へと陽が落ちた頃



レリアはシルドと神殿の部屋の前で別れた後、鏡の前に立っていた。



帽子をとり、髪の毛をよく見てみる。

「…。」


(朝よりも白い…というか灰色??っぽいのが広がってる様な…。)


自分の紺色の髪の毛が、どんどん白く浸食されていた。

明日の朝にはどうなっているのか、少しだけ不安になる。

(シルドさんは大丈夫だろうと言ってたけど…。)

髪をつまんで見てみるが、色が変わり始めているだけで他に身体の異変は特にない。


髪が抜け落ちるよりはいいかと、自分を慰める。


(とりあえず、身体を拭きたいな。)

神殿には風呂はないため、1日歩き回って汗をかいた身体を綺麗にしたいと、机に置かれた木桶を持って準備をする。



ぱたん。

小さくドアが閉じる音がした。


廊下に出ると、すでに外はもう夜で、真っ暗な空が見える。

奥の方に、水が出っぱなしになっている水場があるため、そこまでいこうとペタペタとタイルの上を歩く。偶に雲の合間から出てくる星明りと、所々にある蝋燭の灯りが道を照らしていた。


(あれ?)

よく見ると、蝋燭の火は、見慣れた黒い色をしていた。


(この神殿に、黒の使徒でもいるのかな?)



ーーまさか、それらが全て彼の目であり、脚であると言うのは知らず、レリアは呑気に鼻歌も歌い始めるのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーー



ぱしゃんと水の跳ねる音が徐々に大きくなる。

音に気付いて目をやると、石造りの水場が見えてきた。レリアは近くによって、持ってきた木桶に水を入れる。


水の流れる音だけが、暫く耳に心地よく流れ、入れている間に水場のタイルの模様やレリーフを眺めていた。


(あれ?これ見たな…。)

壁の方に、盃と剣の模様にあしらったタイルがある。

それは、アグロースの城にあったものと、同じような模様だった。

だが、もう少し精巧に作られているのか、剣の模様が見える。


柄の方に、羽ばたく鳥の模様が描かれていた。

(この鳥…鳩??)

ふっくらとした丸みを帯びる形は、平和を象徴する鳥だと気付く。

そっと手を伸ばし、その形をなぞる。


(どこかで…見た様な気がする。)


「ーーーー。」


「ーーーーー。」



「ーーーレリア。」


「?」

呼ばれたような気がするも、後ろを振り返るが特に誰もいない。

気のせいかと前を向く。



ーーーー「剣をとれ。」


(え?)


ーーー「戦え。」


ーーー「戦え!」



ーーーー「殺せ!」




「?!」

殺戮を願うような声が、頭に響いてくる。

驚いて思わず水の溜まっていた木桶を落としてしまい、服が濡れてしまう。


それでも、此方に命じる様な「声」は止まなかった。



「...やめ...やめて!!」



四方から聞こえる声に、思わず叫ぶ。


「...はぁ。...はあ。」

廊下に大声を出した余韻が残る。


ポタポタと、服から水が滴る音だけが廊下に響いていた。



(どういう事…?)


こんなにはっきりと、突然「声」が聞こえるなんてと思っていると、景色がぐらりとぼやけていく。



ーー突如、目の前に、誰かが自分に剣を差し出してきた。

美しく輝く、白い剣だった。



「…この剣を其方に渡すのは、戦うためではない。」

何処かで、聞いた事のある声に、耳を、目を奪われる。


ーーーー「…守るために不殺を誓う。」

レリアの口が勝手に開き、言葉を言った。


ーーー「聖水を」

濡れた体に、温い雫が頭から注がれる様な感覚。

下まで身体を濡らし、水たまりが出来る。



ーーーー「神名に誓い、レムリア・フーーーテ・シーーーース。」


ーーーー「国が亡ぶ…その時まで。」



(レムリア...?)

何を言っているのだろうと、


自分で言いながら、誰なのと声を出そうとした瞬間…

全身をひんやりとした冷たさが襲ってきた。


意識が戻った時には、レリアは自分が水たまりの中に倒れ込んでいるのを自覚し、ゆっくりと身体を起こす。



(…今の…何?)

恐らく記憶なのだろうが、途切れているのか、自分の身に何が起きたのか、レリアは最後までよく分からなかった。



「…レリア、大丈夫ですか?」


髪からぽたぽたと雫が落ちながら、茫然とへたり込んでいた所、シルドに声を掛けられる。

彼に支えられて、レリアは慌てて立ち上がった。


「あの…、今、声が…。」

震える様な声でレリアが言う。


「えぇ、私も聞こえました。…あの…そのレリア。」

急にシルドは横を向き、レリアから目を逸らした。


「???」

「いえ、その...。」

シルドに、身体を一度拭いた方がよろしいかと…言われ、視線を下に下げる。

気まずげに言う彼に、濡れた自分の状況がとんでもない事になっているのを自覚した。



「あ....。」



見えてしまいましたかとは聞けなかったが、横を向いたまま、目を伏せるシルドの様子を見て、恥ずかしいと顔を赤くして、レリアは暫く蹲るのだった。





ーーーーーーーーーーーー



レリアは、一旦部屋で着替えてから、自分の部屋に合流する事になった。

その間シルドは、彼女の影に忍ばせていた使い魔を呼び戻す。



「そうですか。」

彼女の影から戻って来た使徒の話しを、シルドは詳しく聞いていた。

「…私も見ていましたからね。」

彼女の倒れてた、聖水だまりを覗き込む。

だが、男からも「水」なのか、違う記憶が混ざりこんでいてよく見えず、聞こえない。


「神殿の…まさか…聖水に彼女の記憶が宿っていたとは。」

巡り巡ってここに辿り着いたのかと思うが、恐らく偶然ではない。

永遠の女神が指していたのは、これの事だとシルドは思った。


「ですが…先ほどの記憶に、間違いがなければ…。」

急いで確かめなくてはと、シルドの全身を黒い炎が包み込む。



そして、一瞬で島の古城に戻る。

レリアが気味が悪いと出ていった、あの埃が積もる大部屋の机にある蝋燭が音を立てて燃え盛り、男の姿が現れた。



シルドは机の上に立ち、外套や髪には炎が燻っているままだったが、気にせず歩き出す。



「…モリアス...貴方は知っていたのですね。」


こんな近くに手掛かりが眠っていたと呟き、古びた剣の突き刺さる玉座に大股で近寄る。

「はあ、やはり私はいつも運だけは、神とやらに見放されてきたが、今回はそうではない様ですね。」


そして、錆びついてはいたが、まだ輝きの残る白い剣を、シルドは思い切り抜き取る。


「…忌まわしいと、触れる事さえ嫌っていましたが...。」

そう、今まで思っていたと白い剣を、愛おしげに長い指がさする。



「モリアスも意地が悪いですが、まあ、好きな方の事は自分で知ろうとする努力も必要と言っていましたから。」

他者に教えられるほど、確かに惨めな事はないと呟く。



「さあ、彼女の神名を、私に教えて下さい。」


「…レリア。」

それは、昔も変わらない、彼女の愛称。

だが、今の男の知りたい名ではない。


白い剣を上からなぞる様に、指を這わす。


今度こそ、記憶の声をシルドは鮮明に聞き取った。




ーーーー「ふふふ…レリア、いや…「レムリア・フロンテ・シューリクス」」




口ずさみ、味わうかの様に目を閉じる。

そして、ゆっくりと彼女の本当の名を、飲み込んだ。



「なんて、素敵な神名なのでしょう。」


ーーーこれで貴方の魂は、永遠に私のもの。



「我が主!我らが神よ!」

「おめでとう御座います!」

「拍手でもって、喜びを!喝采を!」



亡霊たちが騒ぎ出すも、シルドは咎めることなく受け止めた。



「…ふふふ...あはははは!」



紅蓮に彩られた瞳の男は、高らかに笑いを響かせる。



元フィリア王国の王城の謁見室では、500年の歳月を得て、息を吹き返すかの様に、異様な喜びで満ち溢れていた。










いよいよ物語も、最後の方に近づいてきました。

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