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冥府の先まで 〜記憶喪失なんだけど、闇も執着も底が見えない男に捕まった〜  作者: アマヤドリ


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ある男の大変な出張話②

4章で用があると書き置きを残したシルド...何故か離れたのかが分かります。

4章よんでない方はネタバレになりますので、気をつけて下さい!



「着いたぞー...大丈夫か?」

「とりあえず島に上がるぞ。」


「うぇ、気持ち悪い...。」

船酔いで吐き気に悩まされていた俺…スティーブは、相棒のトムに支えられながら、ふらふらと島へと上陸した。



「じゃあな、頑張れよ。」

送ってくれた船員に手を振られながら別れ、おぼつかない足取りで、霧がかかって前が全然見えない島へと、仕事のために入り込んだのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


まず2人はランタンに火を灯す。

ただの火ではない、冥府に宿る黒い炎だ。

黒い火の種火は本部に保管されており、俺たちもそこから拝借したのを使っている。


島に入ると、スティーブはその異様さに目を開く。

「なんだこの島...。」

(めちゃくちゃ居るじゃん。)

幽霊だらけだと、辺りを見渡す。

おかげで、気持ち悪さは吹き飛んでしまった。


一方の相棒は、平然と幽霊の間をすたすた歩いていた。

トムには幽霊の声が聞こえるからなのか、生きている人とほとんど変わらないと前に言っていたのを思い出した。

(そういう精神でやっていかないと、気が狂うのかもしれない…。)

なんて考えていると、立ち止まる自分に声が掛かる。


「おい、行くぞ。」

促され、古城に続く長い階段を上っていった。

(なんでこんな長いんだ…。)

無駄に長い階段をひたすら上ると、城の裏に出た。

そこから暫く石畳の道を歩いていく。


「…そういえば、お前は悪霊って見た事ないんだったよな。一応見に行くか。」

トムがしれっという。

「…トム、ここに来た事が?」

「先輩と一度な。」


早く言えよと思いつつ、無駄話はあまりしない口下手な相棒に、それは無茶な注文かとイラっとした心は仕舞いこんだ。


「何処に行くんだ?」

「罪の監護ってとこ。」

そう言うと、ついて来いと案内してくれる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー



「すげー。下まで続いてるな。」

自分の声が、冷えた石造りに反響しながら落ちていく。

監獄の底を覗き込みながら、スティーブは興奮したように言った。


「おい、落っこちるなよ。」

呆れたように、自分を見ながら言っているが、そういうトムも見ている。

お前も気になるんじゃねーかと思いつつ、檻の中をちらっとみる。


「あれが…。」

「悪霊どもだ。」


檻の中には、黒い何かが動いていた。

時折呻く声や悲鳴…気でも触れたのか笑い声まで聞こえる。

彼らを憐れみながら、自分がそうはならない様にしないとと、人生の先輩方へ失敗の見本を見せていただきありがとうございますと、胸の中で合掌する。


「これ、どこまで続いてるんだ?」

下に続く黒い炎の檻が、ごうという音を立てながら下まで何個もあり、その中に蠢く影がちらちら見える。


「さぁな。」

「行ったことはないのか?」

「どこまで下があるのかも知らないし、最下層は誰も見た事がない。」

覗き込んでも見えない下の方…ただ暗闇が広がっているだけだった。


「底があるのかすら知らないって話だ。」

「ふーん。」


するとトムがランプを掲げながら、上の方を見る。

「罪が洗われた幽霊がいれば、檻ごと上がってくるんだけど…まあ、なかなかないからな。」

今夜はいないと言いながら、その暗い場所を後にした。




ーーーーーーーーーーーーーーー



「とりあえず、島を見回るか。」

墓が並ぶ所で一度立ち止まり、トムからここでの仕事について、簡単におさらいされる。


「未練のある霊は、この島に集まる様になってる。…悪霊も含めてな。」

「新入りがいるか探しにいくのが、この島での仕事だ。」

だから、ランプの灯は絶対に消すなよと、トムに釘を刺される。

この黒い火は悪霊に効くため、遭遇した時には手放さない様に先輩たちにも言われた。


スティーブは、無意識にランプを持つ手に力を込める。

そして2人は、濃い霧の中、うろうろと進み始めた。


暫く歩くと、2人組の大きめの霊が手招きをする。

よく見ると、何やら外套の様なものを羽織っていた。

霊は生前に着ていたモノや年齢を自由に変えられるらしいが、それを見る限り、「黒の使徒」…元同僚だと言うのが分かる。


「…話を聞いてくる。」

トムが何やら話し込み、幽霊がこっちだと指をさした。


「…そうか、ありがとう。」

「どうやら、この先の小道にずっと泣いている霊がいるらしい。」

言葉が聞こえる相棒が、教えてくれた。


小道の先を進んでいくと、小さな子がポツンといた。

半透明の身体を丸くし、蹲りながらしくしく泣いている。


「坊主、どうしたんだ?」

相棒が訳を聞きにいくと、何やら話し始めた。

(あんな小さい子が…。)


病なのか、不慮の事故なのか、可哀そうにと思いながら、トムの話しが終わるのを待つ。


相棒が幽霊の子と話を終えると、自分に訳を話してきた。

曰く、「ママがいない」と、母親を探しているのだそう。

亡くなってから、今までずっと探し回っているらしい。

前に同じ様な服の人に会ったそうだが、怖くて逃げ回っているうちに、ここにきていたとの事。

確かに、黒の使徒の服は真っ黒だし、追い回されてれば怖いと思っても不思議ではない。


「ちなみに、名前は分かるのか?」

「ペレス、ペレス・ランドゥ」

「ランドゥな…分かった。探してみる。」

最近亡くなった人の名簿を見てみる。

探してみると、ランドゥの苗字でなくなったのは、その子だけのようで、他には載っていなかった。

「どうだ?」

「…母親はまだ生きてる。」

それを聞いたトムは、息を吐きながら、子どもの霊の目線になってしゃがみこむ。


「よく聞いてくれ。」

「ペレスには、2つの道がある。お前の母親は、用事があってまだこの島には来れない。だが、この島にはお前みたいに、誰かに会いたいと残ってる奴も沢山いる。このまま島に残って、母親を待つのが1つ。

2つ目は、お前の母親からはペレスを見る事は出来ないが、会いに行ける方法がある。触れたり、話しかける事は出来ない。…見るだけだ。お前のじいさんやばあさんは、そうやってペレス達を見ている。」


「どうする?」

「…。」


酷な事を聞いているのは分かる。

だが「亡くなる」というのは、どうしたって別れがついてくるのだ。


「…●●●??」

「ぁあ、母さんが来るまで、一緒に待っててくれるだろう。」

どうやら子どもが答えを出したのか、相棒が頷きながら聞いていた。


「なんだって?」

「母さんと話が出来ないのは寂しいが、独りきりはもっと寂しいそうだ…。じいさんとばあさんに会いに行くと。」

「…送ってやれ。」



「なら、俺の出番だな。」


まかせろと、スティーブは手を何も見えない空へと伸ばす。

霧の中、薄っすらと光が入りはじめる。


すると虹のカーテンのような光が、まるで階段の様に道になっていった。


原初の神へ…天に続く架け橋だ。



やがて霊は相棒に促され、さようならと手を振りながら、虹と共に掻き消えていった。



(…じーちゃんとばーちゃんに会えるといいな。坊主。)


「…。」

「…。」


俺たち2人は光が消えるまで、暫く見守った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



---何日か過ぎた後


ついに俺らは悪霊と対峙する事になった。


「あああああ゛、くそ!!!はなせぇぇぇぇ!!」

なりかけみたいな、そんな感じだった。

多分反省しないで、段々と縛りが強くなってきたのだろう。


「お前が何を過去にしたかは知らないが、こっちも仕事なんだ。」

怯える自分と違い、冷静な相棒は本当に頼りになる。

だが力が強いのか、トムだけの力では、鎖が上手く巻き付いていかない。


「があああ!!」

鎖を引き千切り、暴れる悪霊と一度距離をとりつつ、前方にトム、背後に俺と囲い込む。


「ちっ、スティーブ!おい、鎖は?」

「もっ持ってる。」

持ってるだけで、どうやればいいか分からず、右往左往していると、石に躓き倒れ込んでしまった。

その拍子に鎖が崖の下へと落ちていき、ランプも割れてしまった。


自分を守れる術が失われてしまう。

ぐるりと、悪霊の目がこちらを見た。



「に、逃げろ!」


(さ、最悪だ!)

相棒の焦ったような声と共に、身の危険から慌てて逃げだした。


(やばいやばい!!)

すぐ後ろに、悪霊がずるずると追いかけてきているのが分かる。

墓石の間を躓きながら行くと、真っ白な木の所にやってきた。

すると、突然追いかけている音が止む。



不審に思い、スティーブは後ろを振り返ってみる。

「う…ぐぁ…。」

何故か悪霊は白い木には近寄れないのか、苦しげに呻く。

取り合えず木の近くに縋りつき、相棒が来るまでなんとかやりすごそうとしていた時だった。




ーーー「大人しくしていなさい。」



その声とともに、外套を目深に被る1人の男性が、何処からともなく現れた。


「はぁ。今、あまり彼女の側から離れる訳にいかないんですがね。」

仕方ないと言いながら、霊を自分達よりも太い鎖で縛り上げる。

暴れまわっているのに、男の身体はぶれることなく立っていた。


「これはまた...なかなかの事をしでかしましたね。」

赤い目を細めながら、にこりと悪霊に近づいてく。

だが、瞳の奥は一切笑っていない。

男の異様な雰囲気に、スティーブも後から駆けつけてきたトムも圧倒される。


鎖から尚も逃れようとする悪霊を、くつくつと笑いながら蹴り飛ばした。

ごろりと転がった悪霊は、男の長い脚がのせられ、踏みつけにされる。



「おやおや、健気に逃げようと?」




「ふふふ。   ……愚か者め。」


そう呟いたかと思うと、悪霊を縛る鎖が黒く燃え上がる。




(あれは…!!)



ーーー黒い炎を自在に操れる者は、この世に1人だけだ。


スティーブは、自分達の目の前にいる者が、誰なのかを悟った。



という訳で、黒い炎を経由して、悪霊退治に戻りました。

彼は船を使わなくても、彼の炎があるところなら、どこでも瞬時に移動出来ます。


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