4ー⑧
彼女が隠していた事が、シルドにばれます。
読みに来てくれた方、ありがとうございます!
美味しいお酒を堪能した後、アグロース町の小道に入りながら散策を続けていた。
「んーーーー。…結局、他には何も聞こえなかったなぁ。」
永遠の女神様が教えてくれたのは、やっぱり古い城で見た時のだったのかなと諦めの心境に入る。
でもそれも重要な手がかりだ。収穫はあったと自分を慰めつつ、歩き続ける。
すると稲穂を揺らしていた風が、突如、強くレリアに当たる。
「っと。」
大きめの帽子が飛びそうになり、慌ててレリアは頭に押さえつける。
(危ない危ない…。)
飛んでいくとこだったと息をつくと、シルドが立ち止まって自分を凝視していた。
「…。」
「…。」
…特に頭を。
「…レリア。」
びしりと固まる彼女に、シルドは上から声を掛ける。
「一度帽子を外して、髪を見せて下さいませんか?」
無言でレリアは顔を蒼くし、首を横に振る。
頑なな彼女を見るや否や、シルドは、がしりと帽子のつばを掴んだ。
「いやーーー!離して下さいーーーー!」
まだ見せられる心境にいないんですと、レリアはシルドに懸命に言う。
「何を言っているんですか。」
呆れた様な物言いで、問答無用と帽子をむしり取られてしまう。
そこには出かける前にあった、紺色の髪の上部に染まりつつある、白の髪の毛が晒されてしまった。
「…。」
しばし、沈黙がおちる。
「いつからだったんですか。」
シルドに白状しなさいと詰め寄られる。
「…。」
「…今日の朝からでした。」
「はぁ…。」
髪の上部を見つめられながら、レリアは居心地が悪そうに目を背けていた。
「どうしてこうなったのかも…分からないです。」
「自分が、その…事実を受け入れられなかったというのもありますが…。」
(こんな一気に若白髪になるとは、思ってなかったから…。)
しゅんと縮こまりながら、言い訳の様に言葉を探しながら言う。
「…あまり心配をお掛けするのもと思いまして。」
身体が光ったり、今度は髪の色まで…。
現実逃避もしたくなる。
「…自分の事でしょう?何かあっては遅いので、必ず教えて下さい。」
シルドは、今度は早めに教えて下さいと釘をさされた。
「はい…すみません…。」
そしてレリアは、謝りながら更に縮こまるのだった。
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(全く…何故早く言わないのでしょうか。)
内心呆れていたが、彼女が自分に言わなかった理由も分かる。
自分の事になると「我慢」する傾向は、彼女の癖だ。
こちらが気付くまで隠すつもりだったのかもしれないと、溜息をつく。
(先ほどの様に、相手を想う様に、自分の事も気にかけてほしい。)
だが、それはもしかしたら…一生難しいのかもしれないとシルドは思った。
…グラスを交わした時に、彼女の微笑みを見れば…。
自分ではない、誰かの為に願う優しい笑みだ。
そしてそれは恐らくシルド…自分の為だというのも。
(こういう時はとても敏い…。狡いですね。)
尚の事、貴方を求めてしまうのだと、心の中で苦し気に叫ぶ。
シルドさん?
いいえ、シルドさんが大丈夫じゃない気がしたもので。良かったら、お話し聞きますよ!
----シルド、大丈夫じゃない顔してるから…話聞くから、どうしたの?
(誰かの大丈夫は気にする癖に、自分の大丈夫は気にしない。)
いつもお疲れ様です。今日は大変だったんですか?夕食は、シルドさんの好きなメニューにしましょう!
え、なんで気づいたと言われても...。勘?
----なんで、そんな疲れきってるの?大勢の悪霊に襲われたりした?甘いもの持ってくるから、休憩しよう。ん?なんで疲れてるか…甘いの好きか…えー?分かったって言われても..勘?
(相手を無意識によく見ているのか、さり気ない気配りが嬉しい。)
相手の欲しい時に、救いあげる優しさ。
でも、自分に関する事にはとことん鈍い。
ふとした時に、貴方のことを考えてしまう。
貴方の一挙一動を見ていたい。
もっと、ずっと一緒に過ごしたいです。
…だから、離れていこうとするのが、耐えられない。
レリア
貴方に、記憶があろうと無かろうと。
私は何度も貴方に恋をし、愛するのでしょうね。
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ーーーレリアは帽子を被りなおすと、シルドに向き直る。
そして、彼に促されるまま、小道の脇にあったベンチに腰掛けた。
「シルドさんは、髪の色が突然変わる現象…何か知っていませんか?」
「いえ、流石に知りませんよ。」
「そうですか…。」
物知りなシルドさんが知らないとなると、誰に聞いてもほとんどの人が分からないだろう。
考えられる理由としては、守護神の祝福を受けたから…となるが、その代償が大量の若白髪とは。
ずーんとレリアは俯いて落ち込む。
「ですが、貴方の身体に何か不都合がある様には、今の所見受けられません。」
隣からシルドの声がする。慰めてくれている様だった。
さらりと、白が一部交じった自分の髪を彼の長い指が持ち上げる。
「どちらの髪でも、混ざっていても、素敵だと思いますよ。」
「…嬉しいです。」
ちっとも嬉しくなさそうな顔で、レリアは心無い喜びを伝えたのだった。
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(目も…色が変わっている。)
自分に鈍い彼女は気付いていなかったようだが、顔を覗き込んだ時に気がついた。
少し蒼が侵食していた瞳が…茶色一色になっていたのだ。
此処に来てからというもの、彼女の変化が著しい。
ーー心の声を聞くことが出来なくなった。
ーー金色の守護の力を宿した。
ーー髪の色が白くなりはじめた…いや、おそらくこれから灰色にかわるだろう。
そして切れ切れになって見えたという彼女の「記憶」を見る力…恐らく薄れ始めているのだ。自分の…彼女に注いだ冥炎の力が。
はじめは、記憶同士が混ざっているからだと思ったが、どうやら違うと散策している時に分かった。
これらが意味する事…。
ーーー彼女は近いうちに記憶も「力」も全て取り戻すだろう。
シルドの中には、その確信があった。
だが…嬉しいと思う反面、最大の懸念が残っていた。
(…彼女に自分が干渉できないのであれば…。)
やはり「神名」を手に入れなくてはと、その算段を頭の中で描き始めた。
シルドの彼女に関する気持ちを語りました。
あと1~2話で、次の章に移ります。




