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冥府の先まで 〜記憶喪失なんだけど、闇も執着も底が見えない男に捕まった〜  作者: アマヤドリ


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4-⑥

読みにきてくれた方々ありがとうございます!




ーー次の日の朝…

扉の所に紙が挟まっており、レリアは取り出して開けて見てみる。

どうやらシルドは用事で出かけており、昼ぐらいに神殿に戻ると書置きがされていた。

それには待っていて下さいとあったが、いかんせん部屋に閉じこもるのは、レリアの性に合わなかったため、彼女の頭の中では「昼前に戻れば平気」と、出かける準備を始める。



(聞き込みをする予定だったし…。)

小さな鏡台を見ながら白い帽子の被る位置を確認し、鏡の中にうつる自分を見る。


「あれ?」


帽子からのびる、自分の紺色の髪の毛に、白い髪が交じっていた。


(…若白髪?!)

しかも何本か見つかったため、1人がーんという音が聞こえるぐらい落ち込んでしまう。

帽子を一度とって確認してみると、頭のつむじからすでに灰色や白っぽい髪になっていた。

もはや、抜いて誤魔化せるというレベルではない。



(…。)

レリアはみんなに見せられない…と帽子をそっと被り、現実から目を背けた。



ーーーーーーーーーーーーー



さっそく外に出たレリアはこの町に住む住人に、自分の事を知らないかというのを聞こうと考えていた。

どこかこの景色や空気、建物の面影に、はっきりと覚えてはいないものの、やはり既視感が拭えず「故郷なのでは」という気持ちが何処かにあったからだ。



(とりあえず、声を掛けまくってみよう。)

町にちらほら見える人影に向かって、足を進めた。


だが結果は思わしくなく、数刻頑張ってはみたものの、結局色々な人に尋ね回ったのだが、自分を知る人はいなかった。レリアは、思い違いをしていたのかとがっくりと肩を落とす。



(シルドさんは、まだ用事終わってないかなぁ。)

とりあえず、今度は見覚えのある建物が他にあるか散策してみようと、レリアは当てもなくウロウロする事にした。


町のすぐ外にある麦畑からひょこりと顔を出しながら、レリアは香しい匂いを楽しむ。

「…ここに住んでもいいなぁ。」


(ご飯も美味しいし、のんびり出来る。私が出来そうな仕事も多いし。)



だが、頭の中では暗い、あの古城の冷たさを思い出してしまう。



「…帰りを、待ってるって。」


ジゼル

クルル

城で働いている幽霊たち…彼らに、無性に会いたくなる。


そのまま物思いに耽りながら歩いていると、役場近くに掲示板が立っていたため、暇だった事もあり読み始める。

「ん?」


その中にあった、田舎への短期移住体験の貼りが目にとまった。

どうやら、1か月ぐらいのお試しで空いている家を無料で貸し出し、住んでみる体験が出来るというものだった。

(これなら…。相談してみよう。)



シルドはいなかったものの、話しを聞いてみるぐらいならと、隣の煉瓦造りの建物に入る。

役場には数人がおり、手続きをしている人もおらず、がらんとしていた。

「あのーーすみません!」

「ん?…おや、さっきのお嬢さんじゃないか。」

そういうと「自分を知らないか」と聞き回っていた際、会った老人にレリアは巡り会う。



「短期移住体験の貼り紙が気になって、話しを聞きたいんですけれど、その...いいですか?」

「あぁ、構わないよ。そこに座ってくれ。」

そう言うと、温かみのある木の椅子に案内される。

暫くすると、何やら書類を持ちながら、のんびりと老人が戻ってきた。

資料を見ながら、レリアも説明を受ける。



話には、ここの魅力や仕事について…基本的には、誰でも出来るという事だったので、1か月の体験ならと、乗り気になる。一応、登録だけして、後から辞めたりも出来ると言われて、レリアはやっておこうとするも、思わぬ所で待ったがかかる。



「では証明書を。」

「…しょうめいしょ?」

何だそれはと、首を傾げる。

「えー…自分の事を何か示す事が出来る、書類とかプレートみたいなものを、持っていないかい?例えば出自証明とか、学校の卒園履歴とか。」


「…。」

(な、何もない…。)

記憶がないというのが、ここにきて足かせになっていた。


「あの、自分を証明する何か…はないんですが…。そもそも私記憶がなくて…自分の本当の名前も分からないんです。」

「ええ!名前も思い出せてなかったのかい?てっきりレリアは本名だと思っていたが…若いのに大変だね…。」

老人の係の人が驚いた顔をした後、可哀そうにという視線を向けてきた。


「困ったな…助けてあげたいのは山々なんだが、そうなると登録は出来ないな。」

「登録出来ない?」

「ああ、そうなんだよ。それどころか、ほぼ全ての国で仕事は難しいだろう。」

おじいさんが、レリアに申し訳なさそうに言う。

「え、えぇっ?!ほぼ全ての国で仕事も?!」

どうしてと、なんでとレリアは身を乗り出しながら尋ねる。


「前に神託があったんだよ。」

「…神託??」

神託というと…確か神様が皆に言ってくる事だよねと思い出す。


「確か…冥炎の神からで、まぁ、簡単に言うと、出生の記録や何か身分を証明するものがないと、仕事も出来ないし、住むことも出来なくなったってわけさ。」

「今までは都市部だけだったんだが、よそからくる犯罪者や逃亡犯が、冥炎の神のお膝元に来させないため…暮らせない様にするための法整備だね。」

「すまない。あんたは人も良さそうだし、私たちも歓迎なんだが…。」

「勝手な登録は、出来ないんだ。」

力になれず残念だと、書類を老人は片付け始める。

レリアは茫然としながら、机の上をぼんやり見つめていた。


「…そもそも記憶がないとなると…中央都市の方で、出自審査手続きの申請が必要になるな。」

その姿をみて哀れに思ったのか、レリアの身の上を考えた上で教えてくれる。

「中央都市?」

「ウォーレムス帝国の中にある、神聖公国…そこまで行かないと駄目だ。」

「分かりました…。」


まさか仕事も住むのも出来ないとは思わず、残念だと諦めて次の機会にしようというのと同時に、「神聖公国」という聞き馴染みのない国に興味がわく。



(あれ?そうなると、古城は平気なのかな?今まで平然と住んでたけど。)

そもそも、あの霧に包まれた島は何処の国に所属しているのかと、ふと疑問に思っていた時だった。

役場の扉がバタンと開く音がし、レリアは後ろを振り返った。

そこに、見慣れた黒い背格好の姿が現れる。


「あ、シルドさん!すみません。…まだ大丈夫かなって思っていたんですが。」

「…昼前まで待てなかったのですか?探しましたよ。」

どうやら自分を探しに来たらしいシルドに、声を掛けられる。レリアは書置きを知っていながら出ていったため、申し訳なさそうに言う。


「まぁ、仕方ないですね。はやる気持ちも分からなくはないですから。」

そう言いながら彼女に近づいていく。

レリアは、ここでの用は済んだと椅子から立ち上がった。


「聞き込みをしていた様ですが、何か分かりましたか?」

「いえ、特には…。」

首を横に振り、成果が無かった事を伝える。

そしてレリアは、世話になった役場の老人へと目を向けた。

「じゃあ、また機会があれば!」

「ええ、いつでもお待ちしています。...よければこちらを。」

「ありがとうございます!」

資料を渡した老人は、よいしょと立ち上がり、再びのんびりと役場の奥の椅子へと戻っていった。



「…何かあったのですか?」

2人の様子を見て、シルドが尋ねてくる。

「あの、実はですね…。」

切り出したレリアは、先ほどのやり取りを思い出しながら、シルドへと資料を渡して話し出した。



------------



----「神聖公国ディアネオですね。」

大きな神殿があり、国民は神官のみと言う珍しい国ですと言われる。


「...どうしましょう。私このままだと、何処の国に行っても住居不定の無職になっちゃいます。」

身分を証明出来るものがなければ、この状況は改善されないだろう。


「なら、次にディアネオに行きますか?」

「いいんですか?」

色々と審査があると言うのはさっき聞いたが、やはり今後の事を思うと、自分を証明出来るものがあって損はないとレリアも考え、シルドの意見に賛同した。


「自分を証明出来るものですね...。貴方の場合は記憶喪失のため、私が申請の手続きをお手伝いしましょう。」

ついでに、貴方なら申請は必ずおりるから大丈夫と、何故か太鼓判を押された。

「ありがとうございます!」

心強いとエルスは頷く。



「…ふふっ。」

「…何か??」

シルドは喜ぶエルスの表情を見て、なぜか悪戯気に目を細めていた。

今の話しの何処かに、笑う要素があったのかと首を傾げるが、それは申請をする時に明らかになるのだった…。





「あ。そういえば、私達がいた古城って、何処の国なんですか?私、実質勝手に住んで仕事を一応していますけど、そうなると...シルドさんが罪に問われたり...。」

レリアは、さっき頭にあった疑問を聞く。

もし、私のせいで何かあったらと思うと、流石に申し訳なさすぎると、レリアは心配になったからだ。


「それは大丈夫です。」

「分かると思いますが、あの場所は特殊なために治外法権です。」

シルドは、何も不安に思う事はないと、エルスに伝えた。

「...なんとなく、分かりました。」

幽霊沢山いるしと、その特殊性から国に属さないと言われも、レリアは納得出来た。



「次行く予定も決まりましたし、とりあえずお昼にしましょうか。」

レリアも朝が軽かった事もあり、お腹が空いている実感が湧いてくる。


「分かりました!あ、でも一応、色々まだ手掛かりが残ってるかもしれないので、「声」を色々と聞いてから行きたいです!」

「えぇ、構いませんよ。」

2人は出口の方に向かうと、シルドが先に扉を開けて、レリアに「どうぞ」と促したのだった。





------------




「…まったく、目を離すと…。先手(神託)を打っておいて、正解でした。」

資料をちらりと見た後、力がこもっていたのか、紙の端がぐしゃりとつぶれる。



「呼んでくれてありがとうございました。」

その声に、さざ波を立てたシルドの影がゆらりと動く。


「...。」

扉の外にいるレリアは、明るい日向を浴びながら稲穂を背に「シルドさん!」と呼びかけてくる。


「はい、行きます。」

今行くと笑顔で返しながら、その胸の内側がひりつく様に感じ、掻きむしりたくなる衝動に駆られる。


眩しいその光景がレリアに似合い、尚のこと目に焼け付く様だった。

...だが、それを認める訳にはいかなかった。




「…一緒に、かえりましょう。皆、待っていますから。」



役場の奥を一瞥し、先に出た彼女を追う様にして扉から出ていった。






ーーー


役場の奥の壁には、大きな絵の肖像画が飾られていた。


肖像画の下には磨かれたプレートがあり、詳細が載っている。



ーーーーーーーーーーーーーーーー


「モリアディス・イーロ・フィリスクレー」


享年 1350年12月12日 65歳


彼はこの地に潤いと女神をもたらした。


ーーーこの町は、フィリス王国、初代国王の出身地であると。



次の国で最後です。

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