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3章はこれでおしまいです。
フィリア王国とウォーレムス帝国の歴史に触れています。
ネタバレになるので読んでない人は気を付けて下さい。
ーーー花びらをまき終え、2人は屋台の並ぶ場所へきた。
(守護神様、願いを叶えてくれるといいな。)
レリアは歩きながら、先ほど願ったことを思い出して、シルドの横顔を見る。
やはり、彼の表情に陰りはもうない。
(…再会を願った人には、見せるのかな。)
ーーー彼の背負う物を。
そう思うと、気分が沈んできてしまう。
これではいけないと、レリアは顔をあげて、祭りの屋台や楽しむ人々を見ながら歩く。
無理やり気分を持ち上げていくと、やがて少しづつ賑やかさに惹かれ、顔に笑みが戻ってくる。
「…。」
その彼女の様子を、隣から赤い目をした「権能」ごしに、シルドはじっと見ていた。
彼は叶わないかもしれないと嘆いていた、先ほどの表情とは異なり、己の願いが叶う事を確信して、にこりと微笑んでいた。
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「ほら、こっちにおいで!」
「出来立てだよー!食べてみな!」
活気づいた声が、通りのあちらこちらから聞こえる。
露店では、沢山の食べ物が売られており、レリア達は外で座って食べれる場所にやってきた。
「わぁ!美味しそうですね!」
「今夜はこちらで夕食をとりましょう。」
屋台から漂う、香辛料の刺激的な香りが、食欲をそそる。
「レリア、買ってくるのでここで待っていて下さい。」
シルドに席で待つように促されて、椅子に腰かけていた時だった。
「おや、嬢ちゃん、もう花びらはまいたのかい?」
「あ、この前の…!」
隣から声を掛けてきたのは、着いてすぐに会った、果物を買った店の女店主だった。
どうやら主人とその友人達と一緒に、露店に集まって食事をしていた様だ。
「おや、あのかっこいい彼氏さんは?」
「違います…。お付き合いはしてないんです。」
否定するも、照れなくていいのにと取り合ってくれない。
どうやら、お酒が入って気分よくなっている様子だった。
だが、まだシルドが戻ってこなさそうだったのもあり、レリアはせっかくならと話しかける。
「…そういえば、月花祭はいつ頃からやりはじめているですか?」
「確か、500年ぐらい前だよ。」
女店主の旦那さんが答えてくれる。
「守護神がいたフィリア王国で、戦争が起きたのさ。…当時同盟国だった、この国と。」
「え、ウォーレムス帝国とですか?」
(戦争なんてしなくていいぐらい、お互いに豊かな国のイメージがあったけれど…。)
ウォーレムス帝国は、他国に戦争を宣言されて返り討ちにして領土も広かったし、フィリス王国は国土は小さかったが、昔は宝石が取れたり、川に沿って穀倉地帯が広がっていたりと肥沃な土地だ。
「戦争をふっかけたのは、帝国らしいけど、理由はよく分かってない。」
「それに、3日戦争って言われてて、決着も早かったんだ。」
「え?たったの3日で終わったって事ですか?」
レリアは驚いたように目を白黒させる。
「ちなみに勝ったのは?」
「そりゃあ、ウォーレムス帝国だよ。」
ウォーレムス帝国が、それ程強かったのかと驚くと同時に疑問も湧いた。
「じゃあ、守護神は?フィリア王国を見捨てたんですか?」
「いやいや、最後まで王国に残って守護をしていたらしい。フィリア王国の国民は、ほぼ全員、ウォーレムス帝国に下って、保護を受けたのさ。それを促したのが守護神だったって話だ。どちらの国の国民にも、死者が出なかった戦争さ。」
「死者はいないっていったが、まあ、フィリス王家は別。初代はいいけど、最後の王は、いっぱいなんかやらかしてたなー。」
付け加えるかのように、主人の隣で酒をあおる髭の男性が割り込んで話す。
「それに、文献でも、王城の周りを薄い黄金の膜が取り囲んでいたそうだ。王城に残る国民を逃がすために、時間を稼いでいたそうだよ。」
(守護神の権能…守護領域の展開って確か教えて貰った気がする。)
守護神の歴史は少し知っていたため、何度も侵略に打ち勝ってきた神が、そう容易く負けるとは思えなかった。
「…だが、まあ、相手が悪かったな。」
「相手?」
そうそう、と言いながら話を続ける。
「今もそうだが、ウォーレムス帝国の、戦争を起こした張本人…冥炎の神がいるからな。」
「その神様…。」
(シルドさんが、祝福を受けている神様だ。)
「ほら、黒霧港のある湖、あそこは元々王国があった場所で、冥炎の神が沈めちまったのさ。」
「え、ええーー!じゃ、じゃあ、あそこ一体全部を???」
思わず湖の方を見る。
まさかそんなと思うが、事実な様で、うんうんと酒飲みたちが一斉に首を縦に振っていた。
「今でも王城は残ってるらしいってのは、聞いてるがな。」
(それって…まさか。古城の事!?)
今までいた古城が、まさかのフィリス王国の城だったという事実を知り、レリアの目は点になる。
(そういえば、「黒の使徒」の支部にあった、タペストリーの城…どうりで見覚えがあるはず。)
一部崩れて形が異なる所はあるが、自身の部屋として使っていた北の棟と思われる形が、そっくりなのを思い出した。
「だが、その戦争の後、守護神が姿を現さなくなったって話だ。」
「当時、祝福を受けた者達からは、祝福が残っていたから、生きているはずだと。」
「ちなみに、俺の遥か昔の祖先様は、フィリア王国から逃げてきた人さ。」
自慢気に、女店主の主人が話していた。
「守護神が好きだった花を、戦争が終わった後に住み始めた家に付けたり育てて、帰ってきてほしいと願いを込めて飾るようになったのが、この祭りのきっかけという訳さ。」
得意げに語る主人を小突き、女店主が教えてくれた。
「成程…。それで花びらを流して、願い事をする事に繋がったんですね。」
「いや、それをはじめたのは、逃げた人々じゃないさ。」
「え?そうなんですか?」
「冥炎の神サマだよ。神官が、神サマがやっているのを見て、真似して広まったんだ。」
「国を滅ぼしたのに…?」
冥炎の神様は何がしたいんだと、頭をひねる。
「…そりゃあ、後悔でもしたんじゃねえのか?戻ってきてほしいって。」
「500年も、仲良くなけりゃ同盟やってないだろうし。」
「かー!となって怒って、後でやっちまったなんて、よくある事だろ。規模はでかいけど。」
(…規模が大きいという話ではない気がする。)
怒って国を沈められてしまうなんて、たまったモノではない。
「そりゃ、お前とかみさんの喧嘩だな。」「隣の家まで、響いてるぞ!」
「うるせえ!!ほっとけ!」
やいのやいの騒ぐ彼らを見ていると、丁度シルドが両手に夕食を持って現れた。
「お待たせしました。」
いただきましょうと、レリアの前にトレーを置く。
だが、食欲よりも先に、違う興味が湧いていた。
「あの、シルドさん…。」
「なんでしょうか?」
レリアは大きく息を吸い込み、思い切ってシルドに伝える。
「ウォーレムス帝国がフィリア王国に戦争した理由って分からないんですか?3日で戦争が終わったって聞いたんですけど守護神は亡くなってないって聞いてるのでどうして負けたんですか?それから花びらをまいて願い事をするのは冥炎の神様がきっかけってそうなんですか?あと冥炎の神様がフィリア王国を沈めたってきいたんですけどあの湖ほんとにそうなんですか?!それに私たちがいたあの古城は、フィリア王国の王様の城だったりしますか???」
「…はい?」
酔っ払いたちの情報過多により、聞きたい事が山ほどあったレリアは、取り合えず一息で言った。
だが、流石のシルドも、彼女の言葉の全てを覚えておく祝福は、持ち合わせていなかった。
次回から4章に移ります。




