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冥府の先まで 〜記憶喪失なんだけど、闇も執着も底が見えない男に捕まった〜  作者: アマヤドリ


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47/55

3ー14

月花祭のお話は3~4話に分けます。




ーーー次の日の昼頃



「シルドさん、お待たせしました!」

レリアは玄関で待つシルドの元へと、急いで駆け付けた。

小走りできた彼女の、水色と青の縞が入るフレアスカートが、階段から降りてくるのに合わせてふわりと揺れる。上は、シンプルな白いブラウスに大き目の青いリボンが、首元に彩りを添えていた。

シルドは変わらず黒い外套と服だったが、外套の留め具にブローチがあり、エイレーネの花を模した飾りが付けられていた。




「レリア、では行きましょうか。」

「はい!」

シルドの隣に立つと、宿の出口へと共に向かう。




ーーーーいよいよ、今日は月花祭の当日。




2人が日の明るい外へ出ると、青々とした花やガーランド、旗が街を飾る中、前日までにはなかった変化が見られた。その一つが、街を行き交う人々の服の一部に現れており、青や水色等の色が入っていたのだ。空の晴れた色と相まって、晴れ晴れとした祭りの喜びを鮮やかに彩る。


「青い服、持ってきておいて良かったです!」

「せっかく、この月花祭を楽しむならと、慌てて服を探しました!」

ほくほくとした笑顔で、レリアは心が躍るような雰囲気を楽しむ。

シルドも隣を歩きながら、彼女の顔を見て微笑みを湛えていた。



レリアは、宿のフロントにいる女性から、祭りの当日は青や水色の服を着て、楽しむと良いと教えて貰ったのだ。どうやら、守護神が青い飾りや服を、好んで付けていたり、着ていた事に由来するらしい。


「青色、とても似合っていますよ。」

「シルドさんのブローチも素敵ですね。…黒が相変わらずお好きなんですか?」

変わらない外套と中の服装の色に、青色も似合うのにと、レリアは隣からシルドを見上げる。


「特段好きでも嫌いでもないのですが、「黒主」として印象をあまり変えられないものでして。」

「成程…って、その黒主って何ですか?」

「それはですね…。」

聞こうとした時だった。


「お客さん お客さん!」

下から声がし、視線を向ける。

木を編み込んだバスケットを持つ少女が、声を掛けてきたようだ。


「お客さんも、おひとついかがですか!20マーニです!」

小さな手に握られた、青い花と蔓で編み込まれたデルフィニウムの花冠を、一生懸命にどうかと尋ねてくる。


「どうやら、お祭りに遊びに行くためのお小遣いが欲しいようですね。」

シルドが子どもの様子を見ながら、レリアに伝えた。

確かに祭りには、玩具屋や輪投げ、くじ引きといった遊びをする出店も出ている。

何よりレリアは、甘い香りのするお菓子を、後で買おうと思っていた。

きっと、この少女も祭りを楽しむ予定なのだろうと、腰にある鞄に手を掛けた。


「ねえ、2つ下さいな。」

レリアは小さな鞄からお金を出し、少女へと渡す。


「買ってくれてありがとう!」

「こちらこそ。」

少女は祭りを楽しんでねと言いながら、また新たな客を探しに、元気に駆けていった。


「さて、シルドさん。」

屈んで下さいなと、レリアが彼に言う。


「予想通りというべきでしょうか。」

まあ、貴方ならと、シルドは彼女の手が届くように屈んだ。

かさりと、小さな音を立てて、灰色の長い髪に花冠が被せられた。


「…似合いますよ!」

青みが増え、街の雰囲気に十分溶け込んだと、満足そうに彼を見上げた。

「…私に花冠をのせてくるのは、貴方ぐらいですね。」

おやおやと言いつつも、シルドは嬉しそうに頭に冠をのせた頭をさする。



「それは褒めています?」

本当に似合ってますからと、レリアはシルドに伝えた。


「なら、レリアの分は私が。」

そういうと、シルドはレリアの腕にあった花冠を取る。

そして、紺色の髪の毛にそっと冠を両手で乗せた。


花冠から外れた花びらが髪につき、シルドが指で摘んで手のひらにのせる。

やがて、穏やかな風に運ばれていった。


「…レリアも、とても素敵ですよ。」

彼女を見つめるシルドの目が、優し気に細まる。



「ありがとうございます!」

買ったかいがありましたと、レリアは嬉しそうにシルドに言った。




ーーー冠をのせている彼を見た、通りすがりの「黒の使徒」達が、2度見どころか凝視していたが、祭りの雰囲気に浮かれている2人は気付いていなかった。



ーーーーーーーーーーーーーー



「…あれ、そういえば私、シルドさんに何を聞こうとしてましたっけ?」


「…さあ?」

シルドも覚えていないと首を傾げ、レリアも何だったかと結局分からずじまいになった。


ふわりと温かな日差しの香りが、風と共に舞う。



「あ、とと。」

自分とシルドの間を、楽し気に剣を持った2人の子どもが、笑い声と一緒に通り過ぎていく。

そして、直ぐ近くの一軒の家の前にいる女性に、えいえいと剣を向けていた。


「そこまでよ!ナヴィータ!」

「このおおきな けんで やっつけてやる!」


「…なんですって!」

家を飾り付けていた女性が、子どもへ振り返る。


「お金をあげよう!食べきれないほどの美味しいお菓子は?」

「顔も変えてあげる 美しくしてあげるわよ~。」

母親だろうか、子どもと相手の相手をして、美の女神のふりをしている様だ。


「ふん!そんなの、いらないよ!」

男の子が、玩具の王冠と木で出来た剣を持って言う。


「ほら、ミアも!」

「えっと…あ、そうだった。」

男の子に小突かれて、女の子は覚えてきた言葉を思い出す。


「わたしは あなたの こえに みみをかさないわ!」

「わたしは あなたのさしだすものは なんにもいらないわ!」




「わたしは いまの わたしが すきだから!」




女の子も負けじと、細い剣を持って一生懸命に言っていた。



「私も 貴方たちが大好きよ~」「「きゃー!」」


ぎゅっと抱きしめられ、母親と子どもは家へと入っていった。





1000年以上続く、子ども達の中で語り継がれる 平和な光景だった。


月花祭の夜のお話は、次回に持ち越しです。

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