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冥府の先まで 〜記憶喪失なんだけど、闇も執着も底が見えない男に捕まった〜  作者: アマヤドリ


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42/53

3-⑩



「まだかな…。シルドさん。」


暫く設置されていた椅子に座っていたが、何もすることがないため、レリアは立ち上がった。


未だ固まって、金縛りが解けていない受付嬢が視界に入る。

流石になんだか可哀想に思えたのもあるが、ここの場所についても聞こうと思い、彼女に声を掛けた。


「あの…すみません。」


「ひいいいいい!」


(私は幽霊か何か...?)


そう感じる程に、後ろに下がって怯えている。

もっと可哀想になってしまった。


「私は見てません。私は見てません。私は何も見ていないです!!!」

此方を見ないように必死だ。

何故なのか、さっぱり分からない。


いよいよ心配になるが、どうやら自分に原因がある様子のため、レリアは仕方なくそっとその場から離れて、掲示板や飾られている調度品を眺めていた。



そもそもの身長が違うため、彼に強制的に被らされた外套の下裾を、ずるずる引きずりながら、動き回る。



黒い大理石で作られた、動物の彫像

掲示板の、幽霊に関するお悩み相談や予定表


そして、階段近くの茶色い壁に、大きなタペストリーが飾られており、大きな文字で刺繍がされていた。


「えーと、何々…。


冥炎の神に仕える我々は

闇を恐れず 炎をまとい 死の架け橋となる


…わお。」


なんとも壮大な理念が記されていた。


「ん?この島…。」

タペストリーの下には、島の上に立つ城が描かれていた。

白い城で、両端に2つの高めの棟がある。

見覚えがあると思いながら、ぼーっと眺めていると、黒の使徒と共にシルドが戻ってきた。


「お待たせしました。」

「おかえりなさい!何か収穫はありましたか?」

レリアは変わらず下を引きずりながら、彼に駆け寄った。


「はい。永遠の女神の居場所が、見つかりました。」

「こんなに早く…?」

レリアは少し驚いたように目を見開く。


「美の女神ではなく、永遠の女神の場所ですから。」

簡単に声を辿れましたと伝えられる。


「ここの街の外れである事が、分かっています。」


「なら、行ってみましょう!」

扉に向かおうとする彼女の腕を、シルドが掴んだ。


「…何か、あったんですか?」

引き留められたため、彼と向き合う。



「レリア。…貴方に、残念なお知らせもしなくてはなりません。」

「…。」

彼の顔を見たレリアが、深刻そうな表情を見て何かを悟った。



「もう既に、永遠の女神は、美の女神にほとんど融合されかけており、神格も無理な外からの力により、内側にヒビが入っているそうです。」

ですから…と、言い辛そうにシルドは口を開いた。

「彼女ごと、神格を破壊しなければ、美の女神は倒せません。」




「…。そうなんですね。」

彼の言葉を聞き、肩を落とした。

(シルドさんが言うなら、もうどうする事も出来ないって事だよね。)



「シルドさんの考えを、聞いてもいいですか?」

レリアは、分かり切ってはいたが、これからどうするつもりかを彼に尋ねた。


「もし、誘惑の力が、祝福を持たない人々に向けられれば、ひとたまりもありません。貴方が落ちかけたように。」

「実際、1000年見つかっていませんでしたから、黒の使徒の預かり知らぬ所で、誘惑を受けた被害者がいた可能性があります。」


「私は、このまま2神とも消滅が良いと思います。」

真剣な表情にある、切れ長の鋭い目が、レリアを言葉と共に貫く。


「長い間、耐えた彼女には悪いですが...。」


一度言葉を切る。

重たい沈黙が、部屋の中に充満した。

そして続きの言葉を、レリアは苦しい気持ちで待った。


ーーー「消え去る所を見たくないのであれば、ここに残ってください。」

シルドは少しためらった後、彼女に伝えた。


「…。」

レリアは押し黙る。

(多分、消滅する所を、私に見せたくないのかもしれない。…シルドさんって、悪霊の時と言い、そういう所あるよね。)

優しさ故に、自分が見て怖がったり、深く悲しむのではないかと心配しているのだろう…そうレリアは、心の中で思っていた。



助けられなかったという、罪悪感。

審判を下さなくてはならない、彼への心苦しさ。




ーーーでも、ここできっと「前」みたいに、駄目だなんて言えない。



またきっと...



(あれ?…前なんて、あったっけ?)





ふと、頭の中に浮かんだ、自責の念の中に郷愁を感じ、不思議な感覚になる。



(前があったかどうかはさておき、命を助けられないなら…。)



ーーー別の方法で 

1000年、助けを待っていた彼女の事を 救ってあげたい。



レリアは、暫く思慮した後、自分の考えをシルドに伝えた。


「シルドさん。」

「...なんでしょうか。」

「確かに、あの誘惑は、大人の私ですら抗うのが難しいと思います。あの力がもし小さな子どもに向けられたらと思うと...。」

(被害者がいたかもって言ってたし。)



(それに、永遠の女神様を手にかける事の苦しみがあるなら、声を聞いた私も一緒に背負いたい。)

ならばと、決意を固めてシルドを見た。



「永遠の女神と一緒に消滅しなければ、美の女神様を倒す方法がないなら、私も賛成します。」

「彼女達の最後を、一緒に見届けましょう…だから、ついていくので、置いてかないで下さい。」



「…!」

彼の目が見開いた。


その様子を見て、シルドが自分の考えに賛同の意を示すとは、思っていなかったようだとレリアは感じた。


だが、彼女の考えは、それだけではなかった。


「…ですが、シルドさん。1つだけ...お願いしてもいいですか?」






助けてという、あの乞い願う声を、やっぱりレリアは無視出来なかった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



辺りが薄暗くなり、虫の声が聴こえてくる。

芝生が沢山生い茂る場所を、先頭を行くシルドがかき分けながら進んでいた。


「こんな所に…?」

そう言いたくもなるほど、街はずれの誰も使っていないであろう、ぼろぼろの教会に2人はようやく到着した。



屋根は所々穴が開いており、星や紺色の雲が見え隠れしている。

下の木は腐っているのか、歩くたびに軋んだ音がし、草花が顔を覗かせていた。


「ここに永遠の女神様が...?」

どこにいるんですかと、レリアはきょろきょろと辺りを見渡す。



「分かってはいませんが、どうやら彼女の事を、誰かが隠したか、逃げた様です。」

「隠したか、逃げた?」

「1000年前のフィリア王国の革命がある日まで、彼女はそこの前王国にいた女神です。ですが、特に悪さをしていたわけでもなく、革命の時は逃げたと思われていました。」

「革命よりも前に、ある神に敗退した彼女は、自分の神名を世に晒されていました。ですから、戦う様な力はなく、弱かったと思います。」


シルドは話しながら、教会の前にある本を持った片腕の折れている女神像に近づいた。

「…これですね。」

そう言うと、女神像の後ろを見る。

レリアも一緒に覗くと、蔦で覆われた茶色の大理石の様な箱があった。


「…まさか、これですか?」

「これです。」

「…中にいるんですか?」

「どうやら、永遠の女神の肉体は無いようですが、これには神格が収められています。」


そういうと、葦を手で取り除き、ぱかりと箱の蓋を開けた。

中の中央に、小さな玉が鎮座しており、白と薄い緑の色が混ざり合う様に光っていた。



「…聞こえますよ。2神の声が。」

シルドは両手で持ちながら言う。


ーーーーーー「ねぇ、おいで。」




ーーー「助けて」



レリアは2つの「声」を聞きながら、これからの事に意気込んでいた。


「では、レリア…心の準備は宜しいですか?」

「はい!勿論です。」

決意がより一層固まった気がした。


「私は、永遠の女神の声だけを拾うのは難しいです。もし、貴方が出来ないと判断すれば、その時点で意識を引っ張り上げますから、そのつもりでお願いします。」

シルドは箱の上に手を掲げる。


「分かりました!精一杯頑張ります!」

レリアはそう言うと、シルドの手の上に自身の手を重ねた。




ーーー(あの時、お願いとして頼んだ事…出来るといいな。)





ーーーーーーーーーーー




「…ですが、シルドさん。1つだけ...お願いしてもいいですか?」


「彼女の命を助けられないのなら、私は彼女の心を救ってあげたいです。」


「私ならたぶん、彼女の意識ある「声」を拾えると思います。…最後にやってもいいですか?」





ーーー過去の私も、もしかしたら諦めが悪かったのかな。


ーーー今の私が出来る事を、彼と一緒にやっていこう。



そう思いながら、レリアは意識を「彼女」へと集中させた。

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