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冥府の先まで 〜記憶喪失なんだけど、闇も執着も底が見えない男に捕まった〜  作者: アマヤドリ


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34/41

3ー③

楽しいデートの回です




-----港町の全貌が見え、黒霧港に到着後


接岸すると、直ぐに板が出される。

レリアとシルドは、ウォーレムス帝国の交易の玄関口、マルウェルへと降りたった。


ようやく陸地に着き、船旅でふらついている足を、すぐにシルドに支えられる。


「大丈夫ですか?」

「は、はい!平気です。」


(こういう所...エスコート慣れしてるよね。)


外見も仕草も、貴族の様な紳士的な魅力があるから、やっぱり周りは放っておかないのでは?と思うレリアだった。案の定、暑さから頭の外套を彼が脱ぐと、その美貌ゆえに、周りの婦人達の視線が大集合していた。

その手をとるレリアは、凡人たる自分を見ないで下さいと言わんばかりに、下を向く。



その後すぐ、船長が挨拶に来てくれたため、レリアの視線は上にあげる事が出来た。


「ありがとうございました!またよろしくお願いします。」

「お待ちしております。大きな荷物は、宿泊先に運んでおきますので、観光を楽しんで下さい。主人も、よい旅を。」

「ええ、では。行きましょうレリア。」


「はい!」

「せっかく街を散策するのですから、今度は顔を上げて下さいね。」


「...はい。」

(見透かされてる...。)


彼女の手を取るシルドが、少し呆れた様な視線を向けてきた。

「...なぜ、貴方は自分の事となると、鈍感になるのでしょうかねぇ。」

「突然なぜ、(けな)されるんですか...?」

到着早々、そこまで言われる必要あります?と聞き返したくなるレリアだった。


視線が気になり、顔が下向きになりかけていたが、そう言われるなら仕方ないと前を向く。




---彼から見たレリアも、他者から視線を向けられており、「魅力的でしょう。見るのは自由ですが...駄目ですよ。」

...などと思われている事等、知らずにいたのだった。




------------



2人が船員らと別れた後、少し歩いて周りを見渡すと、町には賑わいがあり、屋台や家々が所狭しと建ち並んでいた。

島にいた時とは違う、活気のある騒がしい雰囲気に、レリアの心も踊る。



それに、どの建物も屋台にも、様々な青い花や旗が飾らせており、街を綺麗に彩っていた。


屋台のある石畳の道通りを歩くと、美味しそうな匂いにつられ、レリアは色々と目移りしてしまう。

(あ、美味しそう。)

島でも食べた事のある水辺で育つ果物、リムの実が箱いっぱいに入っている屋台があった。



レリアの視線に気付いたシルドが、果物屋の女店主に声を掛ける。


「これを1つ下さい。」


「はいよ。袋は?」

「そのまま頂いても?」

「分かったよ、ちょっと待ってておくれ...はい、どうぞ。2ペレだよ。」

「はい。」


シルドは金を払うと、レリアへ「貴方に差し上げます」と声を掛ける。



「え、でも...。」

「遠慮しないで下さい。折角出かけているのですから。貴方も楽しんで下さい。」


中身を吸う用の棒を刺して、店主が彼へ実を渡してきた。

「レリア、どうぞ。」

「あ...ありがとうございます。」

シルドから受け取り、実の内側の果汁を飲む。


「...美味しい!」

すっきりとした甘さを味わい、素直な感想と共に笑顔で堪能する。その様子を穏やかに見守るシルドに、店主が声を掛けた。



「おや、可愛らしい彼女さんだね。今日はデートかい?」

「?!」

「ふふふ。そうです。」

店主に聞かれて、レリアは思わず咽せそうになるが、シルドは嬉々として答える。



「...え、そうです?」

否定しないシルドに、嫌な予感を感じる。



「なら、もう一本棒をさしとくかい?」

店主が長めの棒を、追加で渡してきた。

「...理由をお尋ねしても?」

「知らないのかい?最近の付き合ってる若者の間じゃ、1つの飲み物を仲良く分け合うのさ。」

「ならいただきましょう。」


店主の言葉を聞き、シルドが即決してしまう。

「いいです、大丈夫です!」

慌ててレリアが否定するも、恥ずかしがらずにと店主に言われてしまった。

「あ、あのシルドさん!」

一応、城での幽霊達の手伝いに、対価としてお金を貯めていたため、シルドさんも飲みたかったら、私が払いますと声を出そうとすると、自身の口元に彼の指が添えられる。


「おや、レリア...そこまで否定なさるとは...。一本でよろしいと?...すみません店主、私の彼女は、随分と情熱的なもので...。」



----1本を2人で分け合いますねと、シルドは棒を店主に返す。



「...。」



散々揶揄(からか)われ、顔から火が出そうなぐらいに固まっている哀れな彼女に、シルドは「ふふ、レリアが飲んで頂いていいですよ。」と笑みを浮かべながら言う。


そんな彼らを見た店主が、豪快に笑いながら声を掛けた。


「あはは!仲がいいねぇ。ここへは観光かい?」

「まあ、そんなところですね。」


「2日後に本番の月花祭(げっかさい)があるから、この国にまだ滞在するなら、良かったら参加してみたらどうだい?」



壁に貼られている月花祭げっかさいと書かれたポスターを、シルドが見上げた。

赤くなっていたレリアだったが、その絵に視線を移し、徐々に冷静さを取り戻していった。


「この国で祭られている、女神様を称えるお祭りさ。大体1週間ぐらい祭りが続いて、今日は5日目ってとこさね。」

「通りで…素敵な飾りが沢山でしたし、どこの建物や出店にも青い花や飾りで彩られていたので、不思議に思っていたんです。」

店主の話に耳を傾けながら、レリアが話し掛ける。


「本番の日には、この青い花、エイレーネっていう花を使うのさ。」

これは造花だけどねと、屋台の柱に飾られている花を指差しながら、店主が言う。


「そういえば...この花、あれですよね、シルドさん、温室に沢山咲いてる花。」

「そうですよ。月明かりにのみ花開き、光り輝く花です。」

レリアは、島で気に入っていた場所の1つ...ガラスの温室を思い出した。


「夜になったらこの花びらを、祭りの参加者全員に神官たちが配って、川や湖に浮かべるのさ。」

湖は海に繋がってるから、流れに沿って蒼く輝いて、とっても綺麗だよと言われる。想像するだけで、幻想的な雰囲気であるのが伝わってくる。



「そういえば、女神を祭ると言っていましたけど、女神様とは?」

レリアは疑問に思っていた事を尋ねる。


「ほらあそこの絵をごらん。綺麗な神様だろう。」

ある家に飾っている絵を指さす。

灰色のような髪に青い花がついており、手には白い剣を持っていた。


「なんでも、元人間だったって話だよ。」

「人が神様に…?」

なれるの?という疑問を持ちながら、レリアは彼女の話の続きを聞く。



「守護神と呼ばれる方で、色々な国の騎士が信仰する神様さ。といっても、最近じゃ平和になったから、解釈も拡大して、家を守ってほしいとか、狩りや漁を習わしにする者の無事を祈るために、守護神にお願いしたりするね。」


「そうそう、もう何百年と神官様達が、神託もお姿も見てないって話だけど、逸話が沢山残っていてるから、国民の間じゃ劇になったりしてるよ。」

店主は一度言葉を区切ると、何かを思い出したかの様に道の先を指さす。


「ほら、あそこの大きな天幕で無料でやってるから、暇なら観に行ってみな。多分、丁度やっている劇は、確か…「王の凱旋と女神」だから、人間から神になった様子を劇にしてるはずだよ。」



「教えていただきありがとうございます。」

さようならと、飲み終えた実を渡し、世話焼きな店主と別れた。



「シルドさん、劇に行ってみませんか?」

レリアの瞳は、もう観てみたいと期待が込められていた。

「ええ、かまいませんよ。」

貴方が行きたい場所へ行きますよと、シルドも隣を歩く。



側から見れば、完全に付き合っている男女の姿になっているが、レリアは知る事なく、彼と共に、一層賑やかな音のする天幕へと、仲良く足を運んでいった。






彼が1番楽しんでますね。

振り回しております。


次の話は劇の内容になりますよ。

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