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紹介1作品目 「SESSION2」

この作品はフィクションです。


 作品名: SESSION2

 作者名: FTW48 さま


 【あらすじ】

 とある老舗ブログサービス「FiaryNote」では、最近ユーザーの失踪が多発していた。

 コメント欄に謎の定型文メッセージが書き込まれたユーザーは、それ以降の更新が一切途絶えてしまうというのだ。


 やがてSNS上では「これは神隠しだ」「ネットだけじゃなくリアルでも消えているらしい」などといった噂が広まりはじめる。

 自分も神隠しに遭うのではないかと恐れたユーザーたちは、次々と退会してしまう。


 主人公は、噂の神隠しに臆することなく更新を継続する大手ブロガー。

 リアルでも付き合いのある友人ブロガーが数人いたが、彼らもまた神隠しに遭い、ブログ上でも現実世界でも失踪してしまっていた。


 親しい友人たちの行方を追うため、主人公はこの怪事件の真相を暴く決意をするのだが……。


 この作品は実際に起こった神隠し事件を追った男の、一部始終の記録である。



◆◆◆


 最近は昼も夜もめちゃくちゃ暑すぎますよね。

 こういう夏はやっぱりホラー作品を摂取して、気持ちだけでも体温を下げたいところ。


 そんなわけで記念すべき第一回目の紹介作品は、ネットにまつわる都市伝説ホラーです。

 本作はドキュメンタリーレポートを装ったホラー小説、いわゆるモキュメンタリ―作品。

 最近は小説、映像作品問わず流行のジャンルですね。


 本作の構造としては主人公が怪事件の主観的な推理や備忘を書き連ねる日記パートと、事件に関係ありそうなネット記事やSNSなどをコピペして紹介する転載パートを交互に繰り返しながら真相に近づいていく、といった感じ。


 この手の実録風作品にしては登場人物たちが結構個性的で「本当にあった怖い話」とするにはリアリティが低めですが、その分エンタメとして振り切っているのが個人的に良かったですね。



【本作の良いところ】


 お気に入りポイントとしては、モキュメンタリ―だけあって各種ディティールが細かく没入感が凄いです。

 序盤では神隠しが起こる前のブログ記事の様子がいくつか紹介されますが、これが本当に存在しそうな塩梅で転載されていて、かつての「FiaryNote」が雰囲気明るく交流も活発なブログサービスだったと伝わってきました。


 そんな楽しげなサイトを舞台に友人たちが次々失踪していく過程が、主人公の精神をじわじわと追いつめていく。

 そんな様子が日記パートの独白で生々しく描写されていきます。

 その描写がなんというかじわじわと絶望感が漂う感じで、なかなかにホラーしています。


 あとは中盤から加速する調査パートもいい感じに興味を惹かれましたね。

 作中に登場する「謎の定型文」は半ば暗号のようになっているのですが、それを解読するところから始まって、情報を集めながら怪異の正体に迫っていく展開がわくわくしました。


 タイトルになっている「SESSION2」や定型文の中に登場する「ダニエル924」など、聖書関連のキーワードが解説されはじめたあたりから俄然オカルト味がマシマシに。


 そこから流れるように終盤の怪異対決パートを経て、最後は一応のハッピーエンドへ。

 なんだか映画を一本見終えたかのような満足感がありました。



【本作の悪いところ】


 かなり面白かったのですが、気になる点が二つあります。

 作者さまには申し訳ないのですが、はっきり言いますね。


 まず一点目。

 企画投稿作品としては、文字数が十万近くあって流石に多すぎると感じます。


 たしかにモキュメンタリ―はリアリティを出そうとして細かいテキストが増える傾向にあるかもしれません。

 ですが大半が短編で勝負する傾向の強い「夏のホラー」で十万文字超えの長編は、読む側にもかなり気合いが求められるのではないでしょうか。


 とくに本作は基本的に出来事や情報が淡々と提示される構成なので、人間ドラマで読者の興味を引っぱる力が弱いです。

 そうなるとモキュメンタリ―慣れしていない人は途中で脱落してしまいそうな気がしました。


 そして二点目ですが、終盤の怪異の種明かしパートが個人的に期待外れです。

 読者にもよるでしょうが、怪異の正体が納得できるものではありませんでした。


 ネタバレになるので詳細は触れませんが、中盤の調査パートで出た情報から読者が推理できる真相では到底なくて、こじつけ感があまりに強すぎるんですよね。

 それらしき伏線はたしかにいくつかあるのですが、あんなの予想できないですわ。


 エンディングが綺麗にまとまっている分、なおのことラスボスパートが浮いてしまってます。

 たしかに壮大な難敵ではあるものの、たいして怖くないですし。

 しかもその倒し方もかなりご都合主義に感じました。


 表現したいことは伝わったのですが、読者によっては怒り出す人もいるでしょう。

 最後の最後で、ホラーというジャンルから大きく外れてしまっている気すらします。

 それも作者さまの狙いだとは思いますが、万人受けしないのは間違いないですね。


 気になるひとは是非本作を読んでみて!



【総括】


 終盤の展開がかなり怪しいけれど、全体的には読みごたえがある作品でした。

 実録風味にしてはキャラ萌えできる部分も結構あったりで、かなり楽しめました。


 気軽に読める文量ではないですが、伏線が散りばめられているタイプの作品ではないので、ある程度は雰囲気で読み進めていっても読み味を損なわないと思いますよ。


 それでは、今日はこの辺で!


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― 新着の感想 ―
[良い点] "「夏のホラー」で十万文字超えの長編 " で腹筋が崩壊した [気になる点] 笑い殺す気か [一言] くやしいくらい面白いです
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