第6章
ぼくは、「食わなきゃ、やせる」ということはわかっていた。
さらに、それに加えて、運動をすれば、相乗効果となり、減量のスピード、効率が高まるということも。
しかしながら・・・
まだ寮生活をしいられて、自由に食事をコントロールできる時期・環境ではなかったぼくは、美絵子ちゃんへの「再戦」を誓いながらも、まだ食事面での、おおがかりな「改善」というものに、着手してはいなかったのだ。
・・・それには、ちゃんとした理由がある。
ぼくは、この「減量」「ダイエット」をきれいに成功させるために、その経過を、まわりの人間・・・特に、農業大学校の連中には、あくまでも「秘密裡」にしておく必要があった。
なにせ、ふだんからぼくの見た目と、汗をかく様子をからかっていた妖怪たちである。
ぼくが、減量開始したとして、急に「おかわり」を減らしたり、運動のためにロードワークにでも出ようものなら、たちまち「邪魔」しにかかってくるに決まっている。
これまでぼくに、容赦なくあびせかけてきた「嘲笑」「哄笑」は、ますます、あからさまになり・・・
せっかくの熱意・やる気をそがれてしまうだろう。
大切な、「美絵子ちゃんとのリターンマッチ」のイベントも、きっと台無しになってしまうにちがいない。
連中の言動・表情・目の配り・・・これらを、この1年間、じっくりと観察・注視してきたぼくは・・・
そういったことも、想定の範囲内として、きちんと予測・シミュレートできていたので、
きたるべき日に備え、それまでは、従来どおり、ガツガツと食べて、このひそかな「減量計画」を、誰にも悟られなうように・・・何も考えていないようで、実は細かく気を配っていたのである。