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僕は死に損ない  作者: 夢遊
第一章 初めての異世界
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トンネルを抜けずとも

 ──目を開くと見知らない空が広がってた。


 ……いや、見知らぬも何もただの空なんだけど。雲一つない快晴である。


 仰向けに寝転がっているのだろう、地面と日の温かみを身体全体で感じ取っている。

 顔を掠める草が妙にこそばゆい


 「……おはようございます」


 取り敢えず寝起きの挨拶を口にした。人間たるものどんな状況であっても挨拶を欠かしてはいけない。


 その場から立ち上がり周りを見渡してみる。

 遠くに山や森が見えるだけで、一帯に野原が広がっている。建物どころか人工物さえ見当たらない。余程の田舎だろうか。ともかく現状では場所の特定すら出来ない。


 そして問題なのが、


 「何でこんな所で寝てたんだ?」


 ここまでの経緯に思い当たるものが何一つなかったことだ。


 最新の記憶を思い出そう。

 朝起きた。

 洗面済ませた。

 ご飯食べた。

 用事で家を出た。

 今に至る。 


 「……え?」


 もう一度頭の中で記憶を復唱する。朝起きて洗面してご飯で家出て今、起きて洗面ご飯家今起きて洗面ご飯家今起洗面飯家今家今家今家今家今──


 なるほど、つまりこれは


 「──記憶がないってこと?」


 しかも明らかに部分的に記憶が欠如してる。家出た瞬間に見知らぬ場所で仰向けになってるなんて、家の玄関のドアがどこでもなドアになってない限りありえない。

 ならば不審者に誘拐という線はどうだろう。しかし幼い子供ならまだしも今年で成人を迎えんとする自分を誘拐するのは(そもそも誘拐自体が)如何なものだろうか。そもそも身代金要求されるほど我が家は裕福ではない、寧ろその逆である。


 他にも色々考えてみたが、根拠に欠ける。取り敢えずここにいても何もできない。


 「情報収集と洒落込みますか」


 そうして俺、灰本宰(かいもとおさむ)は山も森もない方向に足を進めた。


 ─────


 1時間程だろうか、ひたすら歩いて行った先に町らしきものが見えた。


 一帯が人の背丈程の柵に囲まれており、その中に見える建物は時代的に古いものであった。石材や木材で出来ているものばかりで少なくとも数世紀以上前のものにしか見えない。

 おまけに手前に見えてきた道も、草木を抜いて均しただけの地面といった感じだ。

 ……田舎にも程がある。これでは町というより村に近い。

 しかし規模はかなり大きかった。広さからすると千は人がいるのではないだろうか。


 色々観察しているうちに入り口らしき場所に着く。(これまた入り口も木製である)受付や見張りがいる様子もなく、無人の入り口をそのままくぐる。


 中には人がそれなりに歩いていた。全員見た感じ日本人ではあるのだろうが、これまた身なりも現代としては少し古めに見える。これではパーカー姿の自分が不自然に見える程だ。

 まるで自分がタイムスリップしてしまった様な気分である。


 取り敢えず1番近くにいた男性に声をかけてみる。


 「すみません少し聞きたいことがあるのですが」


 「なんだ君は?珍しい格好をしているが」


 向こうもすぐに気づいたようで返事をもらったが、やはり自分の格好が不自然に見えるらしい。

 まるでパーカーそのものを初めて見たかのように。


 「ここはなんてとこなのですか?」


 「ここかい?ここはマサーク村だよ」


 はて初めて聞いた地名である。


 「まさーく?それは一体どこに位置するものなのですか?」


 「アンタ何言ってるんだ?どこもなにも、このアーべフック北東のマサーク村だぞ」


 はいはいマサークにアーべフックね、

 なるほどわからん。


 日本にそんな場所があるとは思えないし、だからといって目の前の男性が嘘ついているとは思えない。


 ここまでの経緯を考えると答えは絞られる。


 「……異世界ってやつ?」


玄関を出たらそこは異世界でした。

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