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22/カルミア4

 大勢のニンゲンたちが、玉座の前に集まっていた。この広間にこれだけの数のニンゲンたちが集うのは、いつ以来だろうか。

 ニンゲンたちはみな、武装をしている。鎧に身を包み、手には武器を持ち、そうして自分たちをここまで連れてきた指導者の行く末を見守っている。

 カレらの先頭。わたしの目の前には長い白髪に赤い瞳をしたヒトリの少女が、背の丈ほどある木の杖を手に立っていた。

 その瞳は真剣で、力強くて。真っ直ぐにこちらを見つめてくるものだから、逸らしてしまいたくてたまらなかった。

 けれども逸らすわけにはいかない。王として、民から目を逸らすなんてことは許されない。

 ニンゲンたちによる統治を行うこと。ニンゲンとわたしが共に手を取ってこの国をより良くしていくこと。

 それがカレらの願いであった。カノジョの願いであった。

 わたしが玉座から立ち上がると、少女の後ろにいたニンゲンたちがざわめきを上げる。殺されるのではないか。逃げた方がいいのではないか。そんな不安に包まれる中で、たったヒトリ、目の前の少女だけは変わらずわたしを見つめていた。

 少女はわたしにとって、大事な友であった。

 わたしにとって滅びの予言、救世主の予言は無視できないものであった。それはこの世界を滅ぼす予言であり、わたしを殺す予言であったのだから。

 だから、魔法使いが発生するたびに、そのニンゲンに接触してはそれが本当に救世主なのかどうかを確かめる、なんてことを繰り返してきた。

 ああ、無駄なことをしていたとは思う。それでも死や破滅は誰もが恐れるものだろう。

 この少女も、その行為の中で知り合ったヒトリだった。そうして接触したカノジョは、どこにでもいるただの女の子だった。

 本当は面倒なことは嫌いで、好きなことだけしていたくて。ダレよりも普通の日常に憧れていて。救世主なんて、自分には荷が重いと感じていて。

 それでも救世主として期待された少女は、その称号に恥じぬ言動を心がけていた。その期待に応えようと一生懸命だった。

 ダレを殺すこともなく、みんなを救ってみせるのだと。

 そんなひたむきなカノジョに、多くのニンゲンが同調した。多くのニンゲンたちがカノジョを支持した。主教も星教も関係ない。みんなが、カノジョを救世主として認めた。

 そうして、この玉座にたどり着いた。

 ああ、立派になったものだ。この娘はただの少女だったのに。

 成長が嬉しくもあり、ただ、普通の少女らしく日々を過ごすことができなかったことが悲しくもあり。

 少女はわたしに、手を差し出した。


「アステール。わたしの願いは、あなたと共にステラをより良き国にすることです。あなたを倒すことではない。わたしはあなたと、この国を良くしたい。今日とは違う明日を、見たいのです」


 そうしてにこりと、大人びた笑顔を見せる。

 差し出された手はかすかに震えている。

 当然か。

 目の前にいるわたしは残虐、冷酷とされる存在。カノジョはわたしが、これまで何度も接触してきた友人であるとは気がついていない。

 その恐怖は、ニンゲンならば当たり前のものだ。

 しばらく黙り込んだ後、差し出された手にそっと右手を重ねる。

 少女は目を丸くして、あり得ないという顔をしていた。

 馬鹿だな。ここでそんな間抜け面を晒してはいけないだろうに。

 しばらく呆然とした後、少女の表情はみるみる明るくなっていく。目を輝かせて、これ以上ない満面の笑みを浮かべた。

 任せてもいいと、思えたのだ

 カノジョならきっと、ニンゲンたちを良き方向へ導くことができると。これから先、より良い世界を築いていけると。

 そう、思っていた。

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