第三十八話 また会うために
『なっ……コホン! ど、どうしてもというのであれば、やぶさかではありませんわっ!』
頬が緩みそうなのをどうにか押さえながらのその返答に、私はすぐさま、具体的な日程も含めて約束を取り付ける。当然、貴族同士の話し合いとなれば、女性ならお茶会ということになり、私の家にレレ様を招待するということとなった。
『お、お茶会!? ふ、ふんっ、どんとこいですわっ! 格の違いを見せて差し上げますから、覚悟なさいっ!』
顔を真っ赤にして、そんな宣言をしたレレ様の様子に、『迷惑だっただろうか』と思ったものの、『絶対、招待なさい! もし、忘れたりなんかしたら、許しませんわっ!』という言葉で杞憂だったと気づく。
それが分かってしまえば、後は招待状の作成をして、お茶会の準備をすれば完璧だ。
「……そういえば、お茶会、主催、初めて、かも……」
話しは終わったとばかりにレレ様が去った後、一人、そんなことに思い至る。いや、それ以前に……。
「……セインさんのこと、相談、しておけば、よかった。……セインさん、また、会える……?」
セインさんと、どうやって約束を取り付けたものかと、今まさに直面してしまった問題に青ざめる。
「お待たせしました。リコさん、体調はどうですか?」
「ぁ……もう、大丈夫、です」
「良かった。ですが、また悪化してはいけませんし、今日のところは帰りましょう」
そうして、手を差し伸べてくれるセインさん。ただ、この手を取ってしまったら、もう会えなくなるかもしれなくて、私の本能は、そんなのは嫌だと叫ぶ。
「あ、あのっ」
だから、勇気を必死に振り絞って、声を上げる。
「リコさん??」
「そ、の……えっと……」
セインさんを引き留めたい。自分のものにしたい。愛してほしい。
そんな身勝手な感情がグルグルと渦巻く中、どう言葉にしたら良いのかを必死に考える。
「リコさん、落ち着いて。ゆっくりで構いません。何なら、馬車に乗りながらでも話しを聞きましょう」
「馬車……」
「はい、当然、家に送るところまでちゃんと着いていきますので」
柔らかく微笑むセインさんの言葉で、ようやく、私はすぐのお別れではないのだと落ち着きを取り戻す。
とはいえ、それも馬車に乗って家に着くまでの間のみの延長だ。
「わ、かり、ました……」
それまでに、何としてもセインさんと次の約束をしなければならない。そう決意して、セインさんの手を取った。




