第十六話 甘いデザート
すみません、昨日は脱水症状起こしてダウンしてました。
それでは、どうぞ!
マノンお祖母様が自ら運んできたデザートは、とても華やかだった。
『プリンアラモード』という名前のそれは、宝石のようにキラキラとした果物がふんだんに使われたもので、当然、プリンもフルルンと中央で震えている。
透明なガラス食器に入れられたプリンアラモードは、もはや芸術品のようにすら見えるが、その中でもまぁるいビスケットにチョコで書かれた文字に目を吸い寄せられる。
「ようこそ、リコちゃん。私達は、リコちゃんを歓迎するわ」
文字は、まだあまり読めはしない。それでも、そこに書かれた内容はちゃんと理解できた。
『ようこそ、リコちゃん』。それは、先程マノンお祖母様が言ってくれた言葉と全く同じで、とても、とても温かかった。
「ありが、とう、ございます」
食べ物に、ここまでの細工をしてくれるなんて、考えてもみなかった。
いや、一応、前世でチョコペンというものがあることも、それでメッセージを書くことができるというのも知ってはいた。ただ、あまりにもそんな温かなものは縁遠かったため、完全に忘れていたのだ。
その美しさと温かさに、私はいざ食べようとスプーンを片手に、ピタリと固まる。
こんなに嬉しいのに、食べたらなくなっちゃう……。
食べないことの方が失礼だし、食べ物なのだから、ずっと残しておけるわけもないのだが、どうにももったいない気持ちでいっぱいになる。
「リコちゃん?」
しかし、マノンお祖母様の不安そうな表情を見れば、私も覚悟が決まる。
た、食べよう!
そして、まずは端から崩すべく、クリームとバナナを少しだけ掬う。
っ……おい、しいっ!
もはや、これは人が食べて良いものなのだろうかと思えるほどに、柔らかくて、甘くて、自分が今食べてしまったという事態が信じられない。
それでも、まだ食べてみたくて、一口、二口と食べ進めて……いつの間にか、完食していた。
「うふふ、リコちゃんはプリンアラモードがお気に入りみたいね」
綺麗になくなってしまったプリンアラモード。それを恨めしげに見ていたのがバレたのか、マノンお祖母様にそう言われて、思わずビクッとする。
周囲を見てみれば、なぜか、全員の視線が私に向いていて、しかも全員が穏やかな笑みを浮かべていて、どう反応すれば良いのか分からずに固まってしまう。
「リコ、きっと、お祖母様は目一杯リコを甘やかすだろうから、今のうちに覚悟しておきなさい」
わけの分からない覚悟を要求された私は、ただただ混乱の渦の中、うなずいた。




