表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/27

第九話 帰る場所

ノォォォオッ!!


すみません、投稿予約、すっかり忘れていましたorz


……本日、昨日更新するはずだったこの話と、今日の更新分を同時にアップしています。


それでは、どうぞ!

 なんで、どうして、なんていう思いがグルグルと頭の中で回る。

 そもそも謝罪の意味が分からないということもあるが、あまりにも、その言葉は予想外だったのだ。



「すまない、怖い思いをさせた。本来なら、私達が守ってやらなくてはならなかったのに……」



 その声に、嘘の色は見当たらない。



 守る……? 私を……?



 今まで、誰かが私を守ろうとする場面など、一度だって見たことはない。



「旦那様っ、そこは、お嬢様を抱き締めて差し上げるところですよっ」


「っ、あぁっ! すまなかった。リコ」



 フワリと、優しく抱き締められるその感覚は、この世界に来て初めて、経験するようになったもの。未だに慣れないその感覚に、私は思わず体を強張らせる。



「っ、こんなに、震えて……。本当に、すまない」



 何度も、何度も受ける謝罪。

 どうやら、私を怖がらせてしまったことに対するものらしいが、私が怖いのは狼ではない。ただ、それを説明する力なんてものは存在しない。



「もう、大丈夫だ」



 お父様は、何も知らない。知らない、けれど……その言葉は、今の私には何にも代え難いものだったらしい。



「……っ…」


「っ、怖かったな。もう、家に帰ろうな」



 視界が歪んで、頭の芯が熱くなる。



「お、うち……」


「そうだ。ルミアも待っている、私達の家だ」



 家が、帰る場所であるというのは、他の人達にとっては、普通のことだった。しかし、前の世界の私には、とても憧れながらも諦めた、特別なことだ。



「おうち……かえる……」



 その特別が今、当たり前のように目の前に提示され、私は必死に飛びつく。

 これは、私の都合の良い夢かもしれない。目が覚めたら、失われてしまうものなのかもしれない。それ、でも……。



「かえるっ」


「あぁ、帰ろう。私達の家へ」



 前の世界の私は、きっと、この言葉を求めていた。


 化け物だと散々罵られ、その場に置き去りにされて、必死に家に戻った記憶は、まだ薄れてはいない。

 捨てないで、と。そう泣きじゃくったという記憶は残るものの、きっと、そんな私を見る両親の目は、恐怖に満ちたものだったに違いない。



 帰、れる……。



 しかし、今は……。



 帰る、家が、迎えてくれる人が居る……。



 その記憶とは真逆の方向に、私は掬い上げられる。



 私の、家。



 どんなに大切でも、きっと、どこか怯えがあった。いつ、捨てられるのだろうかと。いつ、嫌われるのだろうかと。


 お父様に抱き着いた私は、いつの間にかわんわんと泣きじゃくっていて、そのまま眠りに落ちる。


 『幸せになってくださいね』と、いつかに聞いた声が、また聞こえた気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ