第九話 帰る場所
ノォォォオッ!!
すみません、投稿予約、すっかり忘れていましたorz
……本日、昨日更新するはずだったこの話と、今日の更新分を同時にアップしています。
それでは、どうぞ!
なんで、どうして、なんていう思いがグルグルと頭の中で回る。
そもそも謝罪の意味が分からないということもあるが、あまりにも、その言葉は予想外だったのだ。
「すまない、怖い思いをさせた。本来なら、私達が守ってやらなくてはならなかったのに……」
その声に、嘘の色は見当たらない。
守る……? 私を……?
今まで、誰かが私を守ろうとする場面など、一度だって見たことはない。
「旦那様っ、そこは、お嬢様を抱き締めて差し上げるところですよっ」
「っ、あぁっ! すまなかった。リコ」
フワリと、優しく抱き締められるその感覚は、この世界に来て初めて、経験するようになったもの。未だに慣れないその感覚に、私は思わず体を強張らせる。
「っ、こんなに、震えて……。本当に、すまない」
何度も、何度も受ける謝罪。
どうやら、私を怖がらせてしまったことに対するものらしいが、私が怖いのは狼ではない。ただ、それを説明する力なんてものは存在しない。
「もう、大丈夫だ」
お父様は、何も知らない。知らない、けれど……その言葉は、今の私には何にも代え難いものだったらしい。
「……っ…」
「っ、怖かったな。もう、家に帰ろうな」
視界が歪んで、頭の芯が熱くなる。
「お、うち……」
「そうだ。ルミアも待っている、私達の家だ」
家が、帰る場所であるというのは、他の人達にとっては、普通のことだった。しかし、前の世界の私には、とても憧れながらも諦めた、特別なことだ。
「おうち……かえる……」
その特別が今、当たり前のように目の前に提示され、私は必死に飛びつく。
これは、私の都合の良い夢かもしれない。目が覚めたら、失われてしまうものなのかもしれない。それ、でも……。
「かえるっ」
「あぁ、帰ろう。私達の家へ」
前の世界の私は、きっと、この言葉を求めていた。
化け物だと散々罵られ、その場に置き去りにされて、必死に家に戻った記憶は、まだ薄れてはいない。
捨てないで、と。そう泣きじゃくったという記憶は残るものの、きっと、そんな私を見る両親の目は、恐怖に満ちたものだったに違いない。
帰、れる……。
しかし、今は……。
帰る、家が、迎えてくれる人が居る……。
その記憶とは真逆の方向に、私は掬い上げられる。
私の、家。
どんなに大切でも、きっと、どこか怯えがあった。いつ、捨てられるのだろうかと。いつ、嫌われるのだろうかと。
お父様に抱き着いた私は、いつの間にかわんわんと泣きじゃくっていて、そのまま眠りに落ちる。
『幸せになってくださいね』と、いつかに聞いた声が、また聞こえた気がした。




