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[第9話]スキル

「結局なんであの子はいきなり顔色が良くなったんだ?こっちからだと何したかまったく分からんかったぞ」


「それは私のスキル[液体生成]で血をつくり流し込んだからだな」


「スキル多すぎだろ。インフレしてんのか?」


鑑定に意思疎通、そこに液体生成ときた。

俺やだよこんなスキルばんばんあっても過酷って言われる世界。

もっとやさしい、いっそマヨネーズを知らないぐらいの異世界がよかった。


「スキル持ち…そう呼ぶよりはスキル判明者は少数だ。ほとんどの人が才能に気づくことなく死んでいく」


スキルは見つけることが難しい才能…セパタクローとか棒倒しの才能みたいなイメージか。


「お前が見てやればいいんじゃねぇの?鑑定とかうってつけな感じするけど」


「運動にはエネルギーが必要とされるようにスキルを使えばなにかと代償が必要となる。比較的軽いスキル…例えば相手をつまずかせるスキルがあったとする、その場合失うのは体力だけで済む」


「低出力、低コストってわけか」


「そうだ。逆に重いスキルの場合、その分代償も大きいものとなり、条件が発生するものもある」


「条件?」


「簡単に言うならば、相手の寿命を奪うスキルでは相手の寿命を知らないといけない、みたいな感じだ。君の奪取も相手のスキルを知らないと奪えない」


一撃必殺の代わりにそれをするのがとても難しくなっているのか。

というか俺のスキルの[知る]って線引きはどこなんだ?

名前を知ればいいのか?

それとも見ただけでも理解すればいけるのか?

脳内の整理が追いつかないまませかせかとレイの口だけが動いていく。


「たまに代償としてやったこと全てが返ってくる能力がある。私の鑑定などな」


「相手の情報大体把握できるって強力すぎるもんな。でもそれだったら自分の情報相手に見えるだけだからやっぱり鑑定してもいいんじゃねぇか?というか俺には普通にやってたじゃん」


ピリついた雰囲気が世界を汚染し、喉が乾くような嫌な感覚を覚える。


「私は自分の情報を他人に教える気はいっさいない。君に見せたのは君がこの世界の言葉を理解していないと知っているからだ」


怒気ごもった声が聞こえなくなると同時に見覚えのある薄茶色の半透明ボードが目の前に出現する。

ボードの上には白い記号がびっしりと書いてあり、見れば見るほど知らない言語だと理解していく。


「君が読めないだけでここには私の情報が幾千と記されている。私ですら知らないものまでな。そしてこの中には私の誰にも教えられない秘密がある。もしこのことを君が口外しようものなら…私は君を殺すことに躊躇はしない」


顔を伏せていて表情は分からないが殺気とすら感じる圧迫感を漂わせ心臓に刃物を突きつけられているかのような錯覚を覚える。


「…お前以外と喋ることできないんだから心配する必要ないだろ」


「君が理由を問うから釘を刺す羽目になったんだ。言わなくても良かったんだが君には一度見せているからね。念のためってやつさ」


声色はいつものに戻ったが肝心の表情は未だ窺えず、有り余る緊張感が空間を支配していた。


「…悪かったよ、軽はずみに鑑定のこと扱って」


有能なスキルを持っていたら当然利用される。

こいつにもなにかトラウマのようなものがあってそれを呼び起こしてしまったのかもしれない。


「別に怒っていない。ただ嫌なことを思い出してうまく表情を変えれなくなっただけだ」


顔の筋肉を柔らかくするよう揉み込んでいるが、指の隙間からは憤怒と悔恨の混ざった狂気的な瞳がちらりと見えた。

その一瞬でこいつにははち切れるほどの業を背負っていることを理解してしまった。


「救えない」と思ってしまうほどの。

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