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[66話]炎の家屋

「…がぁっ!」


ポルナスは嗚咽をこぼしながら、地面へと座り込む。


肉が切り落とされる激痛。

幾許かの傷を負っているが未だ痛みに慣れる気配はない。

無力な俺は立ち上がることもできず、息を荒げながら黒づくめの男を睨むことしかできなかった。

ポルナスを斬った黒づくめの男は黒いローブで全身を覆い、顔はフードで隠している。

手にはナイフを持っており、それにはポルナスを斬った際につく偽の血が付着していた。


「こいつは殺しても良かったか?」


黒づくめの男が俺に刀を向けながら、ラグのいる部屋に向かって問いかける。

すると、その部屋から同じ服装をした男がもう1人現れた。


「…!」


俺はもう1人の男を見て驚いた。

なぜならそいつの指に髑髏の装飾がついた悪趣味な銀の指輪がついていたからだ。


「殺してもいいか…だと?」


コツコツと音を立てながらその男はこちらに近づいてくる。

そして、スッと人差し指をこちらに向けると。


ポルナスの体が炎に包まれた。


「ギャアアアァ!」


「話を聞いていたのか?ダリア。確実に殺せ。それが命令だっただろ」


ポルナスは必死に火を振り払おうと、悶え、転がり、苦しむが、火は消えない。


熱い!熱い熱い熱い熱い!

苦しい!なんで!


「ア゛ァ゛!」


振り払うことのできぬ痛みに身を焼かれ絶叫する。

そんな姿を顔色ひとつ変えないまま見つめる2人。


「あー。俺がやりたかったのになー」


「…お前が話を聞いていたら殺せたかもな」


黒づくめの男2人はその様子を見て満足したのか、ポルナスを見ることをやめラグのいた部屋へと戻ろうとした。


その様子をみてポルナスは必死に止めようとするが熱と痛みで体が上手く動かない。


行かせたらだめだ。

あっちにはラグが。

守らないと。


痛みに悶絶し朦朧とする意識の中、何をするべきか、何をしないといけないのか。


俺は何もできないのか?

いや違う。


根性で動け!

魂を振るわせろ!

ブチ殺すってほどの気概で!!



ダリアと呼ばれる男はあそこから立ち上がれる男がいるとは思ってもいなかった。

だから後ろで起き上がっていたポルナスに反応が遅れた。


「…!」


気づいた時にはもう遅く、顔を鷲掴みにされ、体は宙に浮き、


「ーーぁ」


「こいつはお礼よぉ!」


そのまま壁へと叩きつけられ、嫌な音を立てながらめり込んでいった。


「…!?ダリア!」


「根性だけならテメェらにも勝てるぜ!なにせ数ヶ月暗闇の中で耐え抜いたぐらいだからなぁ!」


音でようやく気づいたのか、もう1人の男が隠し持っていた小刀で臨戦体制にはいる。

だが周りは燃え盛り、相棒は倒れ、こちらへ向かって駆け出してくる敵。

この状況はまずいと考えたのか踵を返し、部屋へと走り込んだ。

ポルナスも逃がさないようにと追いかけ、後を続く。

部屋に入ると、縛られて身動きの取れなくなったラグを抱えて窓から逃げようとする男が目に映った。


「ラグを…置いていけ!」


体から触手のような腕が何本も飛び出て、彼を捕まえようと窓へと向かう。

だが思い届かず、指は彼の服すらとらえることはできなかった。

窓に近づき周りを見渡すがもう闇に溶け込める範囲まで逃げられていた。

こうなってしまえば見つけることは困難だろう。


「くそっ!」


ポルナスは拳を叩きつけながら、唇を噛みしめる。

ドンドンと複数回にわたって窓枠を叩き、抑えきれない感情に表情を歪ませた。

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