[52話]なれそめ
『さっきのゴウルって人とはどういう関係なんだ?』
『気になる?結構ややこしい長話になるけどいい?』
『あぁ、教えてくれ』
ゴウルは鎧の上からでもわかるガタイの良さがあった。
だから研究職のレイがどうやって知り合ったのかが少しだけ気になる。
…それだけであって別に他意はない。
『話す前にまず王都にある2つの組織の名前を覚えてほしい。1つは王国護兵団。これは4つの階級に分かれていて、上から団長、その下に5人の副団長、そしてそれに従う合計25人の師団長、あとは団員。副団長1人につき5人の師団長が管理されている』
なるほど、副団長をリーダーとするグループ5つを団長が管理しているということか。
大部分は団長が全て決め、細かい部分になれば副団長、師団長と判断を促していく。
いざという時でもすぐに対応できる合理的な組み方だ。
『もう1つは王直13機。選りすぐりの精鋭しか入ることができない王国の最高戦力。けど王都護兵団と違って国を守るじゃなくて国王を守るがモットーだし、2人は城にいないといけないとかめんどくさいルールも多い。それでも高収入、高待遇だから結構人気の職業。まぁ十数人が定員なんだけどね』
守るものの優先順位が違う2つの組織があるのか。
王直13機は国王の私兵みたいなものだろう。
優秀な人材を金で釣るなんて、取られた側はたまったもんじゃないな。
『この2つの組織はわかった?』
『わかったけど今の所どうやって知り合ったのか見当もつかないな』
『私がゴウルと出会ったのは大体12年前。当時12歳だった私は王都護兵団で師団長と団員として出会った』
『なんか若すぎないか!?』
『自分で言いたくないけど天才だから、私。試験官ボコボコにしたから。ちなみにゴウルは20代前半だった』
『ゴウルもすごい気がするけどレイのせいでいまいちわからんな』
『それと同時期に私は異能総合研究施設、通称[羅業]に入ったの。数年経って私とゴウルが副団長になっていた頃に研究成果とか色々認められて王直13機にスカウトされたんだよね』
『あのエリート集団に!?』
『そう、あのエリート集団にね。その時の私は金に目がなかったから喜んで引き受けたよ。そこからゴウルとは疎遠になっちゃったって感じ』
『なんか…聞けば聞くほど優秀なんだな』
なんとなく優秀だとわかってはいたが、いざ聞くと想像以上だった。
正直ずるいと感じるほどにすごいスペックをしている。
『そうだよ、文武両道、才色兼備。…結構完璧に近かったんだけどなぁ』
『…?』
『大事なもの落としちゃ意味ないよね』
レイが感慨にふける。
『…』
『ねぇポルナス君』
『?』
『私は今日死ぬと思う…いや、死ぬ気だ』
『…は?』
いきなりの発言に脳が止まった。