[46話]起床戦争
今まで一緒にいた相棒が訳のわからん骨を持っていて困惑している。
『考えてもどうせ分からない』とその感情を飲み込み、時間通りレイを起こす。
「レイ〜6時だぞ〜」
「…」
返事はない。
ただの屍のようだ。
「…起きてるか?」
布団をめくり中を確認する。
その瞬間私は絶命した。
返事はない。
なぜなら猛獣には言葉の意味がわからないのだから。
恐ろしい眼光を振り撒くレイ。
いまなら触れただけで手首が喰いちぎれてしまうだろう。
だから身震いしてしまう。
『今からこいつを起こさないといけないのか』と。
作戦1
強引に布団を引き剥がす。
失敗した。
引っ張るも抵抗され動かせなかった。
布団の中から唸り声が聞こえ身の危険を感じた。
作戦2
美味しそうな匂いで布団から出す。
失敗した。
美味しそうなものが近くに無かったからだ。
作戦3
大音量を鳴らして起こそうとした。
失敗した。
ラグだけが起きた。
イライラしているのか布団がしきりに動く。
作戦4
諦めて待つことにした。
失敗した。
もうすぐ7時になる。
作戦5
決死の覚悟で突入する。
成功した。
代わりに私は散った。
「ごめんね。私こうなるんだ」
「…先に言っててくれよ」
「言ってもなににもならないかなって思って」
「それはそうだが…」
ため息をつきながらもがれた四肢を再生させる。
俺以外だったら即死亡とかいうとんでもトラップである。
「今までどうやってたんだよ」
「酒をたくさん飲んだ日しかこうならないから…。でもそういう時はヒット&アウェイで起こしてもらってたね」
「…その人は怪我しなかったのか?」
「打撲、擦り傷、さまざまついたね…」
「…」
気の毒である。
生身の体でレイを起こすなんて無謀。
素手で火を触るようなものだ。
「…そいつは大丈夫だったのか?一回だけじゃないだろ?」
「途中から遠距離の武器使い始めたみたいだったしそこから怪我しなくなったんじゃないかな」
「遠距離の武器…」
「槍とか銃とか」
「槍…銃…」
嘘見たいだろ…?
これ朝起こす時の話なんだぜ…
「…それは…レイは大丈夫なのか?」
「大丈夫。私の体はちんけな攻撃は通らないし、ハンドガン程度だったら内出血でおしまいだよ」
ハンドガン程度?
ハハっ、普通肉片が飛び散るぜー。
規格外のバケモンだぜー。
「…とにかくこれから次の日朝早い時は酒飲むなよ」
「…はい」
「俺はそうやって起こせないから致命傷負うんだよ」
「…?」
「…なんで不思議そうな顔すんの?俺が人を起こす時に銃を使うと思うのか?」
「…」
「なんで無言で頷くんだよ。俺そんなやばくねぇだろうが」
「…」
「無言で首振るな!」