[27話]
「…君はどこかでラグちゃんを守ってあげなきゃ、って思ってない?」
「そう思ってるけど」
亜人といってもか弱い女の子。
連れて行くというのならしっかりと守るのが筋だ。
「多分だけど君が思っている以上にラグちゃんは強いよ。どちらかといったら君が守られるほどにね」
「…!」
発言の内容に驚きの表情を隠せない。
いつもであれば「そんなことねぇ」と否定できたが相手はあのレイ。
戦闘面において彼女以上に正しい判断はできないだろう。
「ちなみにどこでそう思った?」
「それはね、君が気絶したあとラグちゃんとどっちが運ぶかってちょっとした言い争いをしたんだよ」
「そう思えば運ばれてたな」
目覚めた時は確かラグドールの背中だったか。
「で腕相撲で勝った方が運ぶことになったんだ」
「その決め方は合理的だな。少し大人気ない気もするが」
「私もそう思ったんだけどラグちゃんから提案してきたしそれでいいかってなっちゃって」
ラグから提案した?
レイが戦わずにナタを追い返したのなら力をみれないしまだ分かるが…
それでもあの体格差でそれを提案する意味がわからないぞ。
「それで手を握った時分かったんだ。この子はヤバいって」
「な、なにがあったんだ?」
「力を込めた瞬間、揺らぐことのない巨木が脳裏に浮かんだんだ。少しどころかピクリとも動かなかったよ」
ラグドールはレイに勝てるという自信があったからあの提案が出来た。
もしナタとの戦いを見ていたのならそのレイの実力を知ってなお勝算があったということ。
「負けたのか?」
「いやゾワっときちゃって本気を出しちゃった。マジでやったらこっちが勝つけど、ポテンシャルだけで言ったら私より上だよ」
「それは化け物すぎんだろ…」
熊を単独で仕留めたやつ以上のポテンシャルを持ってることを知り驚きを隠せない。
「じゃあ俺が戦わずに後ろに隠れてたら全部蹴散らしてくれた…ってこと!?」
「うーん…全快時ならいけたと思うよ。あれが全力の話ならだけど」
腕を組み頭を悩むような仕草をしながら答えられる。
ナタに勝てると言うことは必然的に俺に勝てるということ。
「俺は本気で戦っても幼女に負けるの?情けすぎないか?」
「君は誰と戦っても負けるんだから気にすることないよ」
「慰めてる風に酷いこと言うじゃん」
「でも事実でしょ?」
「…」
否定もできずただ口を横に結び目を逸らす。
「君の覚悟を見たから連れていくことに反対はしないけど、自分が守られる側…弱者ってことは理解してた方がいいと思うよ」
レイの目がまたもや凍てつくものへと変化し突き刺さる。
「弱きことを受けいれる者など…守る価値もない」
「…胸に刻んでおきます」
強き者としていつかラグドールを守れるようになると、いま心に誓った。