[23話]
門をくぐり集落へと入っていくと。
木で作られた温かみのある家やリヤカーなどの便利な道具が置いてあった。
町中の所々に傷跡が残ってあり、欠けていたり穴が空いていたりしていた。
そんな中でもすぐ隣を人が通って行きそこら中で人が行き交っている。
その人達は汗を流し必死に色々な物を運んでいる。
こちらに気づき小さく会釈する人も多く、こちらも慌てて会釈を返していく。
少し進むと数人の青年をつれた風格のある老人がこちらに向かってくるのが見えた。
「このたびは誠にありがとうございました。村の皆に変わって感謝の言葉を述べさせてもらいます」
そう言って膝をつき頭が地面につく勢いでお辞儀をされる。
後ろの青年にもそれは伝染していき、それを見た周りの人達も次々と頭を下げていく。
「頭を上げてください。私たちがやったことはただの偽善ですから」
「その行いが偽善であろうと私達が救われたのは事実であり頭を下げなくていい理由になりませぬ。この恩を返さずして明日の飯をどう食らえましょうか」
気迫の籠る声を放ちなにも求めないことを許さないと言われているようだった。
「では少しだけ食料をお願いします。あと少し疲れてしまったので一晩ほど泊まらせていただけますかね」
「一晩と言わず何日でも構いません。食料は出発の際にはいくらでも渡させていただきます」
そう言い終わるとスッと立ちあがり後ろにいる青年の一人と入れ替わる。
「宿は私が案内いたします。あとラグドールは両親の元へ帰りな」
「…ですが」
「2人とも心配そうにしてたぞ?一度元気な姿を見せに行ってあげなさい」
「…そうします。レイさん、ポルナスさんありがとござました」
優しく諭されたラグドールはぺこりと一礼し人混みの中へと去って行った。
「ちょっと寂しくなるな…」
「君は愛着湧くのが早くないか?まさかロリコンか?」
「やめろ、名誉毀損だ」
キッとレイを睨みつける。
「…では案内させてもらいます」
そう言って歩き始める青年の後ろをゆっくりとついて行く。
小さな集落だからか歩き始めて数分と経たぬうちに目的地へと辿り着いた。
「小さな場所ですが」
「とんでもない!十分だよ」
「二階もあるのか」
目の前にある家は先程見た他の家より数倍の大きさがあり、俺たち2人には十分とごろか有り余るほどだった。
「暗くなる前に戻ってきてもらえるならどこにいても構いませんし、もちろんここで休んでもらっても構いません」
「7時前ぐらいでいいかな?」
「そのあたりでお願いします。…最後に一ついいですか?」
家に入ろうとしていた足を止め振り向く。
「皆さんを助けてくださり本当にありがとうございます」
またもや深い礼をされる。
「私を含む数十人の男達は襲われた時、タイミング悪く村に在らず狩りを行っていました。そのため守ることもできずほとんどの人を連れ去られてしまい、帰った時にはもう遅く。私達はどこに行ったのかも分からなくなっていました」
青年は拳を振るわせ怒りや不甲斐なさで顔をぐちゃぐちゃにしながら喋り続ける。
「ですがあなた達のおかげで無事皆さん帰ってくる事が出来ました。長の言葉だけでなく私の言葉で伝えないと気が済まないので一言だけお許しください。本当にありがとうございました!!」
またもや深々とお辞儀をし、数秒後頭を上げどこかへと歩いて行った。
「気分がいいね。人に感謝されると」
「そうだな。俺は大したこと出来てないけど」
「そんなことなかったよ、って言って欲しそうだね」
「…若干言って欲しかった」