[22話]
「それよりリュックはどうした。持ってきてないのか?」
「探す前に置いてきたよ。帰りに回収するつもり」
「取りに行った方がいいんじゃないか?取られるかも知れんぞ」
「…まぁ大丈夫でしょ」
顎に手を当て考えたあと楽観的になり思考を放棄するレイ。
そんな姿を見ているとこの世界で生きていくのも案外楽そうに思えて少し安心する。
「もうすぐ村につきます」
森が開け野原のような場所に出る。
少し進むと木の柵に囲まれた集落が現れた。
「…」
「…そういえばさっき攻められたばっかりだったね」
柵の一部が剥がれ、煙も立ち上っている。
血痕などの争った形跡も周囲に散々とあり、何があったか容易に想像できた。
「…ラグドールも送り届けたことだし帰るか」
これ以上この村に負担はかけられない。
寄ったら確実におもてなしされる。
そう言って踵を返そうとしたら、
「英雄が来たぞーー!!」
「バカッ!!何やってんだよ!!」
門に向かって盛大に手を振り、自分の存在をアピールするレイを叱咤する。
「君が何を考えてるかは知らないが私はもう限界だ!!このままだと帰る前に餓死してしまう!!」
「あっ、…そうだったな」
この体には食欲か無いせいかすっかりそのことを忘れていた。
「食料が足りないのは君のせいでもあるからな」
「ごめん…」
門の前に2人立っておりこちらに気づく。
すると片方が村の中へ、もう片方はこちらへと走ってくる。
「さっきはありがとうございました。あと、これを」
脇に抱えられていた見覚えのある服を手渡される。
「ありがとうございます」
渡されたもの、それは戦う前に着ていたあのコートだった。
それをすぐに羽織り裸体を隠す。
「よく俺のだって分かりましたね」
「いやそちらの方がこの服をあなたが起きたら渡してくれ、と頼んできたので」
「え、なんで渡したの?」
「両手を塞ぎたくなかったんだ。何かあった時動かないといけないし」
俺を運んでいる間にも何かある可能性はあったしその判断は合理的だと思う。
だけど森の中実質全裸で歩いていた俺の気持ちも少しは考えて欲しかった。
「…?どうしたの不満そうな顔して」
「今更になって羞恥心がちょっと」