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[第19話]

「流石に死にましたよね」


ナタはあなぼこになった何かに話しかける。


「…」


血も涙も流れず、身動き一つしない。



「…死んでいて良かったです」


ナタは地面に向けて一礼し業務に取り掛かろうとする。


次の瞬間轟音が鳴り響きなにかが飛来する。

衝撃で木々が倒れ、濛々と土煙が立ち込んだ。


ナタはノミを構え最大限の注意を払うも隣に何かを近づかせることを許してしまった。

そいつの重い一撃が横っ腹を直撃し体からミシミシと骨の折れる音が聞こえた。

体が強引に宙に浮かされ、軽々と吹き飛ばされる。

意識が飛びそうなほどの衝撃がナタを襲い、豪快に木に打ち付けられた。

朦朧とした状態で殴り飛ばした相手へと視線を向ける。

どこかで見た気がする。

だがそれ以上はこの朦朧としてる頭ではわからず、女だということしか理解できなかった。




「大丈夫か!?しっかりしろ!?」


レイがナタを殴り飛ばし、無数の穴の空け、倒れ込んでいるポルナスへと駆け寄る。

渡したコートは脱ぎ捨てられ、首から下が元の黒紫色の物質になっていた。

そんな姿になったポルナスの肩を掴み乱暴に揺さぶるが動かない。

手足がだらんと地面へ伸び、かろうじて人型を保っているような状態だった。


「ポルナスさん!!」


木の上から大胆に飛び降りるラグドール。

着々と同時に足の傷が開き包帯がより一層血に染まっていく。

苦痛に顔を歪ませながらも必死に揺さぶり声をかける。


「ポルナスさん!ポルナスさん!!」


誰が揺さぶろうと同じでなにも反応はない。

それでも涙ぐみながらラグドールは起こそうと奮闘する。


「ラグちゃん足が!治さないと!」


レイはラグドールの血濡れた足に気付き治療しようとする。

だがラグドールは話を聞かずポルナスを揺さぶり続ける。


「顔色も悪いし早く治さないと死んじゃうかも知れないよ!?」


「でも!私のせいでポルナスさんが!」


「治してる間でも起こせるから!」


出された足から包帯を剥がし直接血液を流し込む。

だがリュックを索敵前に置いてきてしまい欲しいものが色々と足りない。

とくに血液を大量に作ることができなくなり、余裕はあるが一度取りに帰らないといけなくなった。


「包帯は…これでいけるかな?」


鎧を脱ぎ捨て黒いインナー姿が晒される。

腕まで伸びている部分を豪快に破き取りそれを包帯代わりにラグドールの止血をする。


「これでいいかな。あとはポルナスを叩き起こし」


そう言い終わることなく、気配を察知し振り返る。

すると殴り飛ばされたナタが起き上がり首をゴキゴキと鳴らしながらこちらに近づいていた。


「思い出しました。あなた、国直属の機関にいる人じゃないですか」


レイも立ちあがりナタへと近づいていく。

あの2人を少しでも巻き込まぬよう。


「私も有名人になったものだね」


「「戦姫(ワルキューレ)」、「月姫(げっき)」、「賢者(けんじゃ)」、数々の偉業を成し遂げ、ついた異名が多すぎた結果、「重解(じゅうかい)」なんて呼び方に落ち着いた奇特な方を忘れる方が難しいですよ」


「いろんな所で活躍したからか統一しなかったんだよ。今の呼ばれ方は正直気に入ってはないが」


話しながらも両者近づきあい、腕一本の隙間があろうかと行った所でピタリと足を止めた。

どちらも武器に手をかけることはなく、穏便に話し合いで済まそうという意志を見せる。


「私は亜人さえ渡していただければ何もしないのですが」


「こっちも亜人に手をださないなら何もしないけど」


目線がぶつかり合い世界を沈黙が支配していく。

木の葉が落ちる音がした瞬間、目にも止まらぬ速さで抜刀し金属がぶつかり合う音が響いた。

武器と武器がかち合い、ギリギリと押し問答を続けたあと共に飛び下がる。


「交渉決裂ですか」


「そうみたいだね」

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