2話 精霊チーチと月夜の誓い
人族のひとが元気ない。
パンケーキじゃたりなかったかな、元気になる味ってゆってたけどダメなのかな。
「人族のひとはねむい? ねる?」
ねたら元気になるって聞いたことあるよ!
「そうだな……そこの廃墟、いや遺跡か? 入っても良いのだろうか」
ぼくがお粉まぜまぜしていた家。石でできてるけど木の根っことか、ながーい草とひかるお花が咲いててかわいいの。
ゆっくりと人族が立ってゆらゆらしながら家へ入っていく。ぼくはしんぱいで人族の足をぎゅっとささえた。
「ありがとう」
頭をなでなでしてくれた。
うれしいけど、しんぱいのほうが大きいよ。
「奥の扉を開けたことはあるか?」
ううんってする。
あけ方がわからないんだあ。家とお外のあいだの扉はずぅーっとパタパタしてたから、ぼくとポッポがギュウーってしてあけたの。
「鍵はかかっていないようだ」
人族がおくにあった扉をあけた! ぼくたちが届かなかった金色の棒をさわったみたい!
「すごいね! すごいね!」
人族は大きくてすごいなぁ!
ニコニコしてたらまた頭をなでなでされた。それからぼくのオデコにあるちいちゃくて先がまぁるいツノをスイっとさわっていった。
お部屋にはいった人族はちょっと魔法をつかったあと、おくのほうの台のうえに寝ころがった。
台はぼくのお顔がようやく出るくらいの高さ。両手をかけて横になってる人族のお顔をみる。
「ねる?」
「ああ、魔力の満ちたここで眠ればほぼ回復するだろう」
「おうた歌ってあげる?」
「フフ、大丈夫だよ。それより君もいっしょに寝るか?」
「うんっ!」
わあ! いっしょなのはすき!
森でもたまにオオカミさんとかクマさんとねるの。あったかいんだぁ。
ぼくは背のびして、がんばって足を台に乗せるのにふんばる。でもなかなかむずかしい。ふぐぅ、台が高いぃ……
モフッ。ひょい。
人族がちょっと体をおこして、てのひらでおしりを持ちあげてくれた。人族は力もちだ!
「えへへっありがとう」
「落ちないよう気をつけるんだぞ」
台のうえはふわふわしててきもちいい。葉っぱで作るベッドみたい! ぼくは人族のおなかの横にまるまってねることにした。
「おやすみなさい、人族のひと」
「ああ……」
おひるねしようね!
パチッて目をあけたらひかるお花が咲いてて、おへやのなかも明るかった。
「ピカピカきれい♪ あかるいね♪」
ぼくのおなかに布がかけてあって人族のひとがつけてたのだってわかったよ。あったかぁい。布を抱きしめて台からピョンって飛びおりる。
「チパチパチーチ♪ あったかチーチ♪」
おうたを歌いながらお外にでると、人族が魔法のトリさんをとばしてた。お星さまがキラキラしてるお空にスイーって飛んでいく。
「起きたか」
「うん! トリさんバイバイしたの?」
「ああ、森と勇者の対処に問題なし。私を探すなと部下に伝えたのだ」
「ふぅん???」
「フフ、私とお店屋さんをするのだろう?」
「! そうなの!」
おみせやさんするんだった!
「人族は元気になった?」
「ああ、すっかり元通りだ」
「よかったねーっ♪ 人族げんきっ♪ チパチパランラー♪」
元気なのうれしい! おいわいのおうたを歌ってあげたら、なんだか楽しくなってきて人族のまわりをくるくるまわる。
「精霊よ。私はイアス、人族のイアスだ。精霊はなんと呼べばよいか」
「人族にもおなまえあるんだね! ぼくはチーチだよ」
「チーチ……」
「はーい♪」
おへんじしたら人族のイアスがしゃがんだ。しゃがんでもぼくより大きいの。
「精霊チーチよ、あなたの尊い救済に魂からの感謝を。賢者イアスはいまより精霊チーチに永遠の忠誠を誓いたい」
???
イアスがむずかしいこと言ったあとおじぎをした。
ぼくもペコッとおじぎしたけど、お顔あげてくれない……ずっとツムジみえてる。
「よしよし、ねー?」
お月さまもでてきたし、人族はねちゃったのかな?
あたまをなでなでしてあげた。そうしたらやっとお顔をあげてニコってした。
「ありがとう。何があってもチーチを守ると誓う」
「はぁーい」
うふふ! ありがとうって言ってくれたよ!
ぼく、人族とお話したことなかったけど人族ってふしぎだね。
お話がたのしくて、ぼくのお尻のみじかいしっぽがピコピコ動いてた。