10話 精霊チーチとリンゴの種
イアスのお家のよこの、ぼくが寝てもへいきなくらい大きい切株。しゃがんで平たいところをジーって見るとパサパサしてた。いつもシットリだったのにふしぎ。
「お日さまあびてかわいちゃったのかな?」
お空を見あげるときょうも晴れてて気持ちいい♪
「種を植える場所はここか?」
イアスがおうちからバケツとシャベルを持ってきてくれた。
イアスとリンゴのタネを埋めようねってお話して、ぼくは場所を決めるかかりになったの。タネも落とさないようにちゃんとギュッて持ってる。
「おとなりでもいい?」
「リンゴの木はかなり大きいから少し離そうか。木陰ができればこの切株が良い休憩場になるだろう」
イアスはとっても物知りだ、かっこいい。ぼくもおとなになったら物知りになるかな?
切株からちょっとだけ離れたところ、森よりおうちのほうが近いところで、シャベルをもらって土をズムズムさす。ぼくの手にはすこし大きいシャベル。でもリンゴの木が大きく育つためにはがんばらなくちゃ。
「やわらかーくなるよー♪ ふわふわのーねんねー♪」
ズムズム。
かたい土がふわふわになるように、ねんいりにさす。ぺったんこだったのがモコっとしてタネを埋めるのにちょうど良くなった。
「イアス、イアス、もう埋めてだいじょうぶ?」
「ああ、よく耕せてる良い土だ。少し穴をあけて植えようか」
「はーい♪」
モコッとしたところに指でむにゅっと穴あけてタネを入れる。そうっと土をかけてあげて、手のひらでトントンしてあげた。
「ちゃんと大きくなるかなあ?」
「この森ならば心配ない。なにより精霊が世話をするのだから」
「うん! ぼく、ちゃあんとリンゴのお世話するよ」
そうだ!リンゴに大きくなるおいのりしよう♪
両手をぱんぱん♪ってたたいてぼくの笛をだす。
お口にくわえて、せーのっ
プー♪
今日もとってもすてきな音が出せてニコニコしてたら、イアスが胸をおさえてふるえてる!?
「まさかそれは……っそれは伝説の精霊笛では……!」
「イアス、イアスどうしたのっ? さむいのっ?」
ブルブルしててイアスがへん! どうしよう!
おひざを着いて大丈夫、大丈夫って言ってるけど、ダメとおもう! うでを伸ばしてイアスの肩をなでなでする。
「お家かえる? 寝たらなおる?」
「本当に大丈夫だ、なんともない。驚かせてすまない」
地面にすわってあぐらをかいたイアスがぼくをだっこしてくれた。
「でもブルブルしてたよ」
「感動したせいだな。こんなに興奮したのは数年ぶりで抑えられなかったのだ。精霊のもつ笛を我が生涯でみられるとは……本当に幸運だ」
「ふぅん?」
イアスがニッコリしてだっこしたまま頭をなでなでしてくれるから、ちょっと安心してきた。
「イアスは笛が好きなの?」
「ああ、そうだ」
「笛をふいたらげんきになる?」
「ああ、もちろんだ。……でもチーチがいるだけで私はもう元気でいられるよ」
ペタッとしてたぼくのおみみも少しピンとなった。
「! イアスは笛とぼくがいたらげんき!」
じゃあ笛を吹こう♪
ぼくはイアスがげんきなのがすきなの!
まっしろの笛をくわえて、
プープカププープー♪
ぼくのだいすきなはじまりの音。
おもいきり吹けたらイアスとリンゴのタネに聞かせてあげよう。
プッカプッカプー♪ プーカプッカプー♪
「チーチ笛吹いてるの〜」
「いい曲ね〜」
妖精さんたちもやってきて、いっしょにフワフワおどってくれる。ぼくもスキップしてみんなでリンゴの木のまわりをぐーるぐーる♪
「チーチ、もう芽がでてきたぞ」
フカフカの土からぴょこん!ってリンゴの芽がでてきた。
「わあ! かわいいね♪」
みどり色でとってもかわいい。
まだあかちゃんだから、しずかな音がいいかな?
プープカプープー♪プープー♪
リンゴの芽がゆらゆらして大きくなろうとしてるみたい。
「きょうはここまでにしようね」
「一度に大きくはしないのか」
「うん! あのね、きゅうに大きくするとそのこが疲れちゃうんだって」
湖の精霊が教えてくれたんだ。
なるほど、とか言ってるイアスのおひざ。
ぼくもちょっと疲れちゃったから、だっこしてもいいかなぁ。
もじもじしてたらイアスがニコッとしてだっこしてくれた。
「えへへ、ありがとうイアス」
「チーチもたくさん働いたな、おやつにしよう」
よいしょと立ち上がったイアス。
ぎゅっとくっついて、ぼくもお家にいくんだ♪
リンゴの芽のまわりをクルクル踊ってた妖精さんたちもよんで、みんなでいっしょにおやつ食べようね!




