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初恋の危機

お父様が街に下りる許可をだしてくれた後、すぐにお昼になったので、家族で昼食をとったあとに街に下りることになった。髪を出来れば切っておきたかったんだけど、セリアから街に下りたら気をつけることを聞かされていたら時間がなくなってしまった。

今は屋敷の前で馬車に乗り込むところだ。


「お姉様、街に行くのは楽しみですね。」


ニコニコと笑いかけてくれるマイエンジェル。あぁ、幸せ推しが目の前にいる。

2度目なのだが許して欲しい、推しなんだ。


「うん、とても楽しみだね。それじゃあお父様、お母様、行ってきます。」


「「行ってらっしゃい。」」


仲睦まじい両親2人に見守られ、私達は馬車に乗り込んだ。


________________________


さて、乗り込んだ馬車は街に向かっており、屋敷はもう見えなくなった。

今、私は今日1番沈んでいる。会議中の居眠りの時と同レベルと言っても過言ではないと思う。


お父様にローズと第一王子の婚約の件聞くの忘れてた〜!


終わった。不甲斐ない姉を許して欲しい、ごめんねローズ。


「ごめんね。」


「……?お姉様、どうしたのですか?まさか、怪我が……!?」


「いや、違うんだよ。ごめんね。」


身体的というか、精神的に辛い。


「え?お姉様?」


私は街に着くまで馬車の中でローズに謝り続けたのだった。


________________________


気を取り直して、街に到着だ。

私達は大通りを歩いている。大通りの両側には所狭しと物凄い数の路店が並んでいる。売られている物は食べ物に、アクセサリーに、武器と様様だ。


「わぁ〜、お姉様凄いですわね!」


先程まで落ち込んでいた私の隣では、ローズが目を輝かせて路店を見ている。

眩しい!その瞳は一体何カラットなんだ!

だが、それにしても本当に凄い。なんというか、活気を感じる。


「……うん、凄いね。色々見てみたいけど、まずはローズにプレゼントをしよう。」


自然と言葉になった同意の後、あらかじめ立てていた予定通りに靴に入れるクッション材、を買うために足を進めるように促した。


えっと、セリアに聞いた限りではやっぱり靴屋だな。

セリアに書いて貰った地図を見て、ローズと手を繋ぎながら靴屋のある方へ向かった。


私達は公爵令嬢だが、服装などを変えているので周囲の人達にまじまじと見られることはない。魔力があるのは貴族だけだが、まだ容姿にそこまでの影響が出ていないので、ちょっと良い所の子ぐらいに見えるのだろう。


靴屋に着くと、すぐに店員に聞き買い物を済ませた。

ベリルとローズの出会いのためにも時間を多くとりたかったからだ。ちなみにベリルの防具屋は大通りのちょうど中間ぐらいにある噴水の近くだ。

まぁ、これもセリアから聞いた情報なんだけど。


「ローズ、少し休憩しようか。噴水の所に行こう。」


ローズをベリルの店の近くまで誘導しようと、声をかけた。


「はい!お姉さっ……きゃっ」


ローズが私に返事をしようとしたところで、誰かとぶつかってしまった。いや、ぶつかられた、に近いか。


まずい……噴水は近いっちゃ近いけど、まだベリルの店は反対側だ。ここじゃ、助けにくるか分からない。


「あぁ?」


そう考えているうちに、男が絡んでくる。


「ちゃんと前見て歩けよ、ガキが!ん?いい身なりしてんじゃねぇか。なら、金さえ出せば今回は見逃してやるよ……ほら、早く金出せよ!」


「ひっ」


涙目のローズに男が勢いよく掴みかかろうとした。

ベリル……ここで、来ないの!?

ベリルが来る可能性を考えるが、一向に来る様子はない。


私が助けなきゃ!

急いでローズを庇おうと手を伸ばしたが、男の手はもうアクアよりもローズに近かった。

ダメ……間に合わない!


スローモーションのようにゆっくりと、近づく最悪の瞬間に悔しさで顔を歪めた。


その時、バチッ!と電流の流れる音がしたかと思うと

「うぉっ!」という男の声が聞こえた。


先程までローズに掴みかかろうとしていた男は、腕をひいて、「いってぇ!」と言いながら驚いた顔をしている。


「急げ!逃げるんだ!」どこからか少年?の声が響いた。


アクアは急いでローズを連れて逃げようとするが、男の回復の方が早く、今度はさっきよりも勢いよく手が伸びてきていて逃げるのは難しい。


「クソッ、お前かっ!?」

少年(仮)の声は聞こえなかったようで男は先程の電流を起こしたのがアクアだと思っているようだ。怒りで頭が回っていないのか掴みかかるどころか、その手は拳を握っていて殴ろうとしている。


逃げられないなら仕方ない!

アクア急いでローズを自分の後ろへと庇い、自分が殴られるようにする。後ろから悲鳴のように、ローズの「お姉様!」という声が聞こえて、衝撃に備えて強く目をつむった。


しかし、その衝撃が訪れることはなかった。

アクアが恐る恐る目を開けると、目のまえには自分の探していた背中があった。見覚えのある茶髪、ベリルだ!


「おっさん、ちょっとぶつかったぐらいでそんなに怒るなよ。そうやって昼間っから酒飲んでるから金もないんだろ。」


ベリルは男の拳を見事にいなし、男の体勢を崩すと挑発するような言葉をかけた。

男はまだ諦めていないようでベリルに攻撃しようとしたが、ベリルの持っていた模造刀でそれを払われていた。そのやり取りが何度か続いた所でやっと護衛がやってきた。


男は護衛により、取り押さえられ連れて行かれて事態は収束した。


アクアはお礼を言おうとしたが、ベリルはすぐにアクアとローズの側から離れてしまった。


え?

ベリルは走っていくと外套を被った子供の手を掴み、私達の元へ戻ってくる。


は? 何してるの?

私もローズも唖然である。


「1番の救世主が逃げるなよ。」

ベリルはやれやれとその子供に声をかけた。


「お嬢さん達、最初に助けてくれたのはこいつだから、礼ならこいつに言ってやってくれよ。」


そういうことか。男が最初にローズに掴みかかろうとした時に助けてくれたのはこの子だったのか。


「あぁ、さっきの雷はあなたが……。ありがとうございました。ほら、ローズ……?

……ローズ、大丈夫?大丈夫ならお礼を。」


納得しつつ外套を被った子どもにお礼を言って、ローズにもお礼を促そうと後ろを見た。ローズを見ると、頬が赤く染まっており、目をキラキラと輝かせている。


おおっと、これまた眩しい!やっぱり恋に落ちちゃった感じか〜!その視線は私の後ろにいるベリルに向かっているんだね、うんうん。


「……はい。大丈夫です!お姉様!助けて頂いてありがとうございました。」


ローズは、意識が戻ったように私に返事を返してからお礼を言った。


「あなたも、ありがとう。」


さすがに外套の子だけに言うのは申し訳ないのでベリルにもお礼を言う。さあ、ローズ、君も初恋の相手とついに会話の時だよ!


「ありがとうございます。」


ローズはぺこりと頭を下げてお礼を言った。その後に言葉が続く様子はない。

え?それだけ?初恋じゃないの!?もっとガンガンいこうぜ!

初対面ってこんなものなのか?


「あぁ、気にしなくていい。俺は完全には間に合わなかったし。」


「僕も大したことは出来ていないので、気にしないでください。では、これで。」


ベリルに続いて、先程まで黙っていた外套の子が話した。どうやら、声と服装から察するに男の子のようだ。返答はしてくれたが、すぐにベリルの手を解こうとする。


「だから、逃げようとすんなって。あんな堂々と魔法使ったんだ。このままだと俺が兵に報告したら強制帰還だぞ。聞きたいことがある。ここじゃ道の真ん中だし、俺の家に来いよ。お嬢さん達も。」


「はぁ……」

外套の少年はため息を吐くと、ベリルに着いて行くことを決めたのか、大人しくなった。


魔法を使ったってことは、ほぼ貴族で確定だしね。

「そうだね。じゃあ私達もお邪魔しようかな。ねぇ、ローズ?」


「はい!お姉様。」


襲われたのがバレたら強制帰還は私達も同じ気がするし……

護衛への報告はベリルがしてくれるっぽいから、恩人で子供となれば家にお邪魔するだけなら大丈夫だろう。


もう少しローズとベリルが話が出来るように、ベリルに付いて行くことにした。返事をしたローズの頬はまだ少し赤い。やっぱり、好きな人の家にお邪魔とか他に人がいても嬉しいよね。


外套の少年はベリルに手を引かれて、私とローズは微笑み合いながら、周囲から見れば非常に仲の良い子供の集団に見えるような構図でベリルの家へと向かった。


実際は、私とローズ以外初対面なんだけどね。















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