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男装令嬢の誕生

セリアと感動?の夜を過ごした後、私はルーデスト家を継いで領主になろうとしていることをセリアに告げると、口を開けて驚いていた。


それもそのはず、家を継ぐのは男性というのがこの世界での常識であり、女性の領主が居ない訳ではないが少ない。あまり居ないからか、人によっては侮蔑の目を向けることがある程だ。


しかし、アクアには上手くいく自信があった。なぜならゲームの中でのアクアは領主どころか騎士になることが周囲に認められていたからだ。しかも、学園卒業後はあの第一王子の護衛騎士になるだろうと言われていた。


女性騎士の数は、女性領主に比べるともっと少ない。そんな中で第一王子の護衛になるだろうと周囲に認められるなんて、かなり稀有なことだ。


アクアに実力があったからというのもあるが、あの男装の麗人という立ち位置がご令嬢から人気であり、アクアを敵にしようものならほとんどのご令嬢が敵になるほどの人気だったことが大きい。


まぁ、これはキャラ人気が不動の1位だったからついた設定なのだが……

アクアが貶められるようなことがあれば、アクアファンからのバッシングの嵐で、公式ツイッターの炎上確定である。


制作側にとってアクアの扱いはかなりデリケートな問題だったからなぁ。


まぁ言ってしまえば、”原作通りならば"ゲームのキャラ補正でアクアが、酷い目に合うことはないと言ってもいいということだ。


よって、出来るだけ原作通りに行くのが安全。特に男装の麗人になるのは必須ということだ。


セリアにゲーム補正がどうだとかは言えないので、女の子だからと舐められたくないと言うことをやんわりと伝えて納得して貰った。


そして、現在私は朝食をとりに行く前にローズを迎えに行こうと思い廊下を歩いている。

いきなり髪が短くなり、服も男物を着始めた私の姿を見て、すれ違う侍女や執事が顎が外れるのではないかというほど口を開ける。


やはり、令嬢がいきなり令息になるというのはかなり驚かれるらしい。

しまった。周囲にも事前に説明くらいするべきだったか……

そりゃそうだよね。アクアにも前世、雪乃だった頃に同じようなことがあった。雪乃は驚く側だったが……


雪乃が高校生だった時、2年ぶりに会った同い年の従兄弟(男)が立派な(女の子)になっていた時は腰が抜けそうだった。いや、抜けた。


アクアは若干後悔しながらも、いつも通りにすれ違う者には笑みを返して行く。

数人には逃げられてしまった。雪乃だった時も驚いた後は恐怖を感じたし……


早く慣れてもらわないとだなぁ。原作通りにするためにあんまり深く考えてなかったけど、両親の反応が未知数だ。


「お嬢様。かなり驚かれていますが、セリア以外にこのことを伝えていなかったなんてことはありませんよね?特に旦那様には……」


セリアが声を小さくして聞いてくる。

やっぱり思うことは同じみたいだ。


「うーん……伝え忘れていたね。」


アクアもセリアに合わせて小さな声で答えると、ハハハと乾いた笑いをこぼした。


「な!?なぜ伝えていないのですかー!旦那様なら倒れてしまいかねません!」


「急いでたんだ。」


セリアは、小声ながらも少し声を張って焦った様子を見せたが、アクアの返答を聞き諦めたようにため息をついた。


ローズの部屋の前に着くと、扉の前にローズ付きの侍女がたっていた。


「リリア、ローズと一緒に朝食に行こうと思って迎えに来たんだけど……ローズは起きてるかな?」


「……ハ!は、はははい!ロ、ローズ様にもこれから朝食をお勧めしようと思っていた所で、です!」


「……そっか。呼んで貰えるかな?」


「は、はい!すぐに!!」


「ありがとう。」


どうしよう……これ今日1日、この反応だよね。最近ローズに付いたばかりで新人のリリアはかなり動揺していた。言葉を交わした分、どれだけ動揺しているかよく分かる。


リリアに呼ばれ、ローズが部屋から出てきた。


「……お姉様。髪を切られたんですね!それにお洋服も!とても似合っていますわ!素敵です!」


ローズは一瞬、言葉を失って動きを止めたが、その後はまさかの大絶賛の嵐だった。ローゼライトの瞳がキラキラと輝いている。


「ありがとう。ローズも今日は私のプレゼントを使ってくれたんだね。」


「はい!お姉様のおかげでお母様から貰った靴を履けますわ!ありがとうございます!」


「どういたしまして。喜んで貰えて嬉しいよ。じゃあ朝食を摂りに行こうか。」


ローズのはい!という元気な返事を聞き、私達は足を進めた。昨日の階段も問題なく降りることが出来て、いよいよおそらく両親が揃っているであろう部屋の前だ。


セリアの言っていた通り、1番気になるのは父様の反応だなぁ。

アクアは密かに深呼吸をすると、部屋に入った。


…………沈黙


「……あら、素敵ねアクア。とても似合っているわよ。」


母様は驚いた顔をしたもののすぐに、いつもの女神のような笑みで私の姿を褒めてくれた。


「ありがとうございます。母様。」


さて、問題の父はというと……固まっている。

ローズと母様のリアクションがあっさりしていたので、大袈裟に思えるがこれが普通の反応なのだろう。


それにしても見事に固まっている。コーヒーを既に飲んでいたようで、カップを持ち上げた状態で固まっている。中々きつい体勢のように見えるが、銅像のように1ミリも動かない。


父が動くのを待っていると……

「……そ、そうだな。似合っている。」


その一言と共にコーヒーのカップを置こうとする。が、その手の震えようが凄い。中身ちょっと溢れてないか。声もかすれていた。


とりあえず、今は流そう。食事を終えてから領主になる件と一緒に話をしよう。


男装令嬢アクアが誕生したその日の朝食は、いつも豪快な父が一言を話さないという、実に珍しい状態となったのだった。


朝食が終わりそうな頃に、父様に話をしたい、と伝えると、「分かった。朝食を終えたら部屋に来なさい。」と言われ、その珍しい朝食の時間は続いたのだった。






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