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蠢くは悪の意思29

 揺らめく黒のその姿はあまりにも美しくて、私は思わず見とれてしまった

 リィリアの様子が明らかに変なのは分かったけど、女神のようなリィリアは一瞬で悪魔を殺し、私を見た


「ナリヤ、私」


 今にも泣きだしそうな声で一言そうつぶやくとリィリアはガクリと膝をついた


「リィリア!」


 駆け寄ってその小さな体を抱きとめる

 今の力が一体何なのか分からないけど、あれはどう見ても異常な力だった

 今までリィリアが魔法や神力以外の力を使っていたのは分かったけど、今のはそのどれとも違う

 あまりにも、あまりにも異質な力

 どちらかと言えば今殺した悪魔に近い力だと感じたわ

 あんなのは駄目、絶対使っちゃ駄目だわ。何の力で、リィリアに何が起こったのかなんて一切分からないけれど、使わせてはいけない

 リィリアが壊れていく

 私は涙を流しながらリィリアの顔を覗き込む

 凄く苦しそうで、黒く染まった腕の皮膚がズタズタに裂け、破裂した血管からおびただしい血が流れ出ている

 必死で治癒魔法をかけるけど、私の力じゃ全然回復できない

 リィリアが発揮していたあの再生力も、この黒い何かに阻まれて戻っては裂けるを繰り返していた

 何とかしないと、このままじゃリィリアが


「見せてください!」


 私に声をかけたのは今しがた恋人を失ったばかりのミレさん

 苦しむリィリアの手を握ると、星詠み族の力でその傷口を癒し始めた

 黒い部分の治りは遅いけど、それでもゆっくりろ傷口が塞がっていく


「ひとまず、応急処置はできたと思います」

「あ、ありがとうございます。でも、メーゼさんが」

「ええ、彼も覚悟の上で戦っていました。彼は勇者として、立派に務めを果たしたのです。なれば私も、この国の王女としての務めを」


 下唇に血がにじむほど歯を食い込ませるミレさん

 彼女もつらいはずなのに、リィリアのために力を最大限に使ってくれた

 感謝しても、しきれない

 私達はリィリアと、メーゼさんの亡骸を背負って街に戻った

 悪魔を無事倒せたけれど二人の顔は暗い

 ライラとアエトが慌ててリィリアを運んでいく


「さて、此度の戦いで勇者メーゼが亡くなりました」


 数日後のこと、ミレさんは大々的に上げられる勇者の葬儀の中、自分の国民にそういった

 国民は大いに嘆き悲しんで、彼のために祈る

 私達も黙とうをささげた

 リィリアは目が覚めないためこの国にとどまっている

 いずれまたこの国から新しい勇者が選ばれるだろうけど、私自信もメーゼさんが亡くなったことがまだ信じられない

 接した時間は少ないけれど、あの人は真に勇者だった。国民もみんな彼が好きだった

 メーゼさんは愛されていたの


「どうですかリィリアさんの様子は」


 葬儀のあと、私達がリィリアの看病をしていたらミレさんが部屋に入って来た

 ミレさんは心配そうにリィリアの顔を見ている


「まだ、目覚めないんです。もう傷はすっかり癒えてるはずなのに…」

「そうですか…。あの、少しお聞きしてもよろしいですか?」

「はい、なんでしょう」

「この子のあの時の力についてです」

「あの力ですか」

「あれはどう見ても神力や魔法と言った類ではありませんでした。あのような力、私の一族にも伝わっておりません。何か知りませんか?」

「それは、私にも分からないんです。リィリアは、この子はなぜか神力以外の力も持っていて、時々その力が作用して助けてもらっていたんですけど、今回のは私達も見たことがないんです。なんだか恐ろしい力で、その力がリィリアに何か悪影響を与えないか心配で」

「分かりました。ではこちらでも何かわからないか調べてみます」

「本当ですか!? ありがとうございます!」


 まだ恋人を失って間もないと言うのに、ミレさんはそう言ってくれた

 本当に、感謝しなきゃ

 ミレさんはリィリアの頬にそっと触れてから部屋を出ていった

 心配だけど、今はこの子が目を覚ますのを待つしかない

 リィリアはスゥスゥと寝息を立てているけど、今一体どんな夢を見てるんだろう?

 私もライラもアエトも、寝る間を惜しんでリィリアの看病を続けた

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