蠢くは悪の意思25
目の前にいる悪魔は何を言っているの? 私のリィリアをどうするって?
可愛いリィリアをあんな化け物に変えようと言うのね?
敵だ。こいつは紛れもなく私の敵
リィリアに危害を加えるやつは許さないんだから
でも…
私は冷静に考えてみる
こいつは聖国で捉えた悪魔よりもはるかに強い。多分数段階レベルが違うと思う
今の私じゃ勝てない
幸い相手は逃げるようだけど、私は次にこの悪魔、ミザリーに会う時までこいつに勝てるように強くならなくちゃ
じゃないとリィリアを守れないもの
「どうやら行ってくれたようですね。今の私達じゃあの悪魔には勝てないでしょう。無理やり私を襲うかとも思いましたが、不幸中の幸いと言ったところでしょうか」
確かに今ここで襲われていたなら確実に私は殺され、リィリアは連れ去られていたかもしれない
そうなったら私は死んでも死にきれないほど後悔する
私は横目でリィリアを見た
彼女には友情関係以上の何かを感じるんだけど、愛、なのかしらこれは
リィリアは私のことどう思ってるんだろう?って時々そう考えてる
でも今はそんなこと考えてる場合じゃないわね
一刻も早く悪魔を討伐しなきゃ世界がめちゃくちゃにされるもの
数時間後、私達は無事ロクサーナ陛下を連れて聖都に戻って来ていた
聖都は悪魔に対抗するべくせわしなく忙しくなってるみたいで、聖女含めて多くの教会関係者が走り回ったり、他国への協力要請をしていた
悪魔の召喚、それは全世界レベルでの非常事態で間違いないという各国の判断だった
帝国はほとんど壊滅状態で、その属国もいくつか潰されている
そして今現在悪魔が生み出したと思われる化け物に攻められている国があった
それは“灰色の勇者”のメーゼさんがいる国セロランド
小国ながらも資源が豊富だったため多くの国からの侵略を受けた過去がある
それでも残ってこれたのはその地形と特殊な力を持つ種族が暮らしているから
メーゼさんは人間の男性だったけど、この国の大半の種族は星詠み族という予言者の一族。見た目は人間とあまり変わらない容姿で、違う点と言えば驚くほど全体が白いことかな
輝くような白髪に真っ白な肌に白い瞳の人々は世界一美しい種族とも言われている
そんなこともあってその美しさに目を付けた馬鹿な人間族が彼らを奴隷にしようと侵略
結果は歴史の語る通り大敗退を記した
利己な目的で行動した人間たちの末路は悲惨だったらしいわ
自業自得ね
とにかくそこに救援として私とリィリア、それにアエトが行くことになった
ライラはセリセリとロクサーナ陛下の治療を引き続きしてくれるみたいね
「それでセロランドは現在地形を生かしてなんとかその化け物の侵略にたえてるみたい。普通なら地形的に有利でもあの化け物には敵わないと思うけど、やっぱり星詠みの一族が強力なのね。それにメーゼさんもいる。きっと私達が行くまで耐えてくれるはずよ」
「ええ、急いで向かいましょう」
私達はアエトが召喚した友達魔物、ワイバーンのジェシーくんに乗って空から向かうことにした
ワイバーンは世界でも屈指の飛行速度を誇ってる
かなり長距離を移動できるスタミナもあるので飼いならして移動手段として使う人も多いのよね
まぁそんな人一部のお金持ちだけだけど
ワイバーンの背中に乗り込んだ私達はいちろセロランドを目指して進む
途中鳥の魔物や虫の魔物が襲ってきたけど、ワイバーンはそれをものともせずに悠然と飛ぶ
亜竜と呼ばれる竜に似た魔物だけど、結構かしこいし、人に慣れれば人懐っこく頭を摺り寄せて来るのも可愛い
実は私、昔はワイバーンと暮らすのが夢だったのよね
だから小さなころにお父様にねだったこともあったけど、当然却下されたわ。「どこで世話するんだ」ってね
世話できる場所があったらいいのかって話になるけど、その時の私はそれで諦めたのよね
数時間後、私達はセロランド上空にまで来ていた
ところどころに黒煙が上がってて、周りにある森が燃えているのが見える
素早くワイバーンから飛び降りると魔法で落下速度を軽減して、直接都市に着地した
「だ、誰ですか!?」
「敵?!」
その場にいた美しい兵たちに囲まれたけど、事情を説明したらすぐに武器を収めてくれた
「そうでしたか! 失礼いたしました。聖国は私達と友好国、救援助かります」
そう言ったのは星詠み族の首長であるミレさんで、この国の王女様でもある
様付けなんてしないでと言っていたので一応さん付けで呼んでいるけど、この国の王女様は非常に接しやすく、まるで聖王様のような優しい雰囲気を纏っていた
それでいて自分でも戦うんだからすごいわ
とりあえず今はメーゼさんが食い止めてくれているんだけど、そろそろ疲弊しているみたいなのですぐ私達が向かい、入れ替わることになった
すでに準備万端のリィリアと私はメーゼさんの元へ走って向かう
アエトには化け物が生み出した変な魔物を処理してもらうため残ってもらったわ