悪魔14
とある国、遺棄された古城にて
そんなまさか、とは思ったけど間違いないようね
まさか千年近く共に歩んだキャリーがこんな下位世界なんかで死んじゃうなんてね
まああの子が弱かったのがいけないのだわ。それに恐らくだけど、殺したのはあの子
これは増々あの子が欲しくなったわ
キャリーは人間を嘗めすぎる傾向にあったわ。でも長く生きている私は知っている。人は決して舐めてはいけないことを
かつてそれでルシファー様も痛い目を見たと言っていた
あのルシファー様をしても人間に負けたというのは衝撃的なお話だったけど、あの方は負けるのは恥ではないとおっしゃっていた
負けこそ次の勝ちに繋がる経験。私も幾度か負けたけど、そこから得られるものは多かった
何にせよ、キャリーが死んだからと言って動揺はしない
だって悪魔は死ねばまた魔界…。地獄で蘇る
そう、あの子はただ地獄に帰っただけ
だからこそまた会えるもの
でも今はあの子も敗北を噛みしめて次に生かし、成長すべきときね
「さてバース、いい感じに仕上がったわ。あなたは今まででも最高峰の出来よ。聖女を素体とするならやはりリィリアちゃんがほしいわ。バース、だからバースお願いね。リィリアちゃんを連れてきて頂戴。あの子ならその姿を保ったまま、テラーナイトメア、いえ、いい悪魔になれそうなのだもの」
私のテラーナイトメアというのは、爵位を持つ悪魔の方々の真似事で、人から悪魔を作り出す技術を見よう見まねでやってみたものだ
四恐という肩書を私達四柱はもってはいるけれど、そんな肩書は爵位に比べれば平々凡々でしかない
あの方たちは人間を簡単に悪魔にしてしまえる
あのヨローナだってもともとは人間。人間だったからこそあんなに落ちこぼれたに違いないわ
私達純粋な悪魔とは全然考え方が違うんだもの
「では行きなさいバース。愛しい私のバース」
このバースは私が丹精込めて作った悪魔崇拝者を素体としたテラーナイトメア
この子はあの馬鹿王の民としては珍しくほんとうに、心の底から私達を崇拝していたわ
だからこそ自我を保ち、姿すらも人に近い
私がこれまで作ったモノの中でも本当の最高峰。可愛くて仕方がないわ。交わるほどにそう思える
「デハイッテマイリマス」
言葉も話せる。意思疎通ができるから高度な命令もこなせるわ
それに力も強い。おそらく本気になったキャリーよりも上
まあキャリーの力はヨローナの次に弱かったからあの子に勝てるかどうかは分からない
それでもバースならいいようにやってくれると信じてるわ。賢いもの
「さて、私はまたテラーナイトメアづくりにいそしむとしますか。最近またいい素体が手に入ったのよね。獣人とエルフ、それに魔族、竜人、ドワーフにホビットにジャイアントまで。フフ、すばらしいわ。ここまでの素体を手に入れれたのもエスターのおかげね」
私は素体となる者たちを見て笑う
おびえる表情のこいつらは最高に濡れるわねぇ。ああ、一人一人と交わらなきゃ。まずは、エルフの子の娘ね
エルフは魔力が高いから楽しみ
あ、でもこの子は確か王族の子だったわね。それじゃあ素体にするのは後にしましょう。何かに使えるかもしれないもの
それならまずホビットで作ってみましょうかしら。小人族は初めてだからどこまでのテラーナイトメアに化けるのか楽しみだわ
私は小さな少年とも見間違いそうなホビットの男を掴み上げると、牢から自分の部屋へ向かった
「は、放せ化け物! 僕を国に返せ! なんで僕みたいな平民攫ってんだ! 僕なんかを人質にしても価値なんてないぞ!」
「あらん、そんなに自分を卑下するものじゃないわ。あなたには素晴らしい才能があるの」
「え? ぼ、僕に才能? 嘘だ…。だって僕はただの農民で、剣の腕だって」
「魔力は、図ったことが無いのかしら?」
「だってホビットは魔力もそんなに強い種族じゃないし」
「フフ、大丈夫よヘムト。あなたの力は私が保証するわ。だから、私、あなたが欲しいの」
たったこれだけ。これだけでホビットのヘムトは簡単に私の虜になってその身を自ら差し出した
これから化け物に変えられるとも知らずに
「いらっしゃいヘムト」
ベッドに入った私は下着を脱ぎながらヘムトを呼び寄せる
キャリーに作ってもらった魅了の香水が効いているのか、ヘムトはトロンとした表情でベッドにもぐりこんで私に愛撫を始めた
小さな手で一所懸命に私を喜ばせようとする姿は何とも可愛らしいじゃない
ヘムトを抱き寄せ、私達はまぐわった
「フフフ、いいわヘムト、あなた上手よ」
「ハァハァ、ミザリー様、僕は、貴方に忠誠を誓います」
ヘムトが宣言し、私は彼をテラーナイトメアに変えた
小さいながらも力強いナイトメア。ホビットには珍しく群を抜いて魔力の高かったこの子は体中を鱗に覆われた鋭い牙を持つキラーナイトメアホビーへと変化を完了させる
小さくて可愛い
「み、ミザリーざま、ごれはいっだい?」
「あら、自我が残ってるなんて素敵よヘムト。やっぱりお前は優秀だわ」
「ぼぐが、優秀?」
「ええ、私にもっともっと相応しい男になってねヘムト」
「はいぃい!」
いい子。この忠誠心ならどんな言うことも聞いてくれそうだわ
自我が残るほど我が強かったのは予想外だったけど、これなら複雑な命令でもこなせる
「なにをずれば?」
「まだよヘムト。あなたには私が危なくなったときの手助けをしてもらうわ」
「わがりまじだ」
こうして私はまたも意志あるナイトメアを作り出すことに成功した
私の力も上がっているのかしら? これなら悪魔を作り出すというのもそう遠くない未来かもしれないわね