悪魔13
しばらく逃亡を続けているけどおかしいことに今になって気づいたわ
いくら何でも私達を捕まえるための追手がこなさすぎる
キャリーとエスターはあの場から離れられないにしても、自由に動いているミザリーはもう私を見つけていてもおかしくない
それに魔人の追手も来ないのが気になるわ
魔力を極力抑えてばれないようにはしているけど、カレアナはそれができないから私が抑え込むしかない
でもそうなるとカレアナの強すぎる魔力ではどうしても漏れ出てしまう
その微かな魔力をミザリーなら辿れなくもない。だからこそずっと警戒していたのにここ数週間全てが順調すぎて怖いくらいだわ
本当なら別世界に逃げればいいんだけど、今は人間と契約している期間中だから別世界へ飛ぼうにも飛べない
悪魔は契約に縛られる。その契約が果たされる、もしくは契約者が死ななければこの契約は解除されないのよね
とりあえず今はまだ隠れておこう
きっとカレアナと幸せに暮らせるときが来ると信じて
「カレアナ、今日は魔力安定の修行をするわよ。魔法に込める魔力を安定させて魔法の向上をさせるの。より上級の魔法を扱えるようになるためには必要なことよ」
「うん分かった!」
素直なカレアナは私の言った通りに魔力の安定を行う。それも驚くような速さでコツをつかんですぐ物にしていくもんだからそのまま上級魔法の使い方を説明していった
「でね、あなた達魔人は光魔法は使えないはずだから、まずは闇系統の魔法から覚えましょう。私達悪魔やあなた達魔人は闇系統の魔法に優れていると言われているわ。強力な魔法が多いのだけど、その分扱いも難しい。まあカレアナの魔力ならもう十分に使いこなせるはずよ」
なにもこの子に危険な魔法を覚えさせたいからやるんじゃないの。そりゃあこの子は一度教えただけでコツは掴むし、どんな魔法もきれいに扱うしで申し分ないけど、危険な魔法はやっぱり覚えて欲しくはない
でもそれじゃあいざ私がいなくなったり、死んでしまった時自分で自分の身が守れるようになっておかなきゃだめだと思うの
だからこそ最初に闇系統の魔法を覚えさせたわ。護身のためにね
「光魔法ってどんなのですか?」
レッスン開始をしようと思っていたら唐突にカレアナが聞いてきた
「そうね、光魔法というのは闇に蠢くモノや私達悪魔、魔物や魔人に非常に効果のある魔法よ。本当はそっちも教えてあげれたらいいんだけど、私は悪魔だから、使うと自分を傷つけちゃうの。カレアナ、あなたも使わない方がいいわ。あなたも魔人なのだから傷ついちゃうわよ」
「でも、気になっちゃって」
「そうね…。教えるだけなら問題ないわ。ただし使っちゃだめよ? 私はいいけどカレアナが傷つくのは嫌だもの」
カレアナはコクンとうなづいてわかってくれたみたい
で、私は収納ボックスから一冊の本を取り出した。昔私が読み漁っていた魔法について書かれた本。その中の一冊の光魔法について詳しく書かれた本
カレアナにそれを渡すと彼女は大喜びして本を読み始めた
この世界の言語で書かれてはいないから、私が魔法で読めるようにだけはしておいたけど、内容は結構難しいはず
それなのにカレアナは黙々と読み始めた
闇魔法の訓練はまたこんどにしよっかな
それから一時間ほどが経ってようやくカレアナは本を読み終えた
そして彼女はおもむろに左手に魔力を込めると呪文を唱える
「ちょ、ちょっとカレアナ! 危ないからやめなさい!」
「大丈夫! できそうなの!」
カレアナの左手からは魔力があふれ出して集約し始める。それはまるで光の球のようになって辺りを照らす
これは、光魔法なの!?
「ライト!」
カレアナが光りの玉を宙に頬り上げると、周りはまばゆい光に包み込まれた
これ、見たことあるわ
確か数十年前に別世界で召喚された時に魔導士が使ってた光魔法で、周囲を明かりで照らす他、弱い霊やアンデッドなら浄化する力もある
でもカレアナは魔人。光魔法は普通なら使えるはずがない
この子は一体なんなの?
「で、出来たよお姉ちゃん! 光魔法、私にも使えたよ!」
まあカレアナはこんなに喜んでいるんだからそんなことどうでもいっか
光魔法を使えるならミザリーが来てもなんとかなりそうだし、ここは前向きに考えよう
それにこの子の魔力なら追ってくる魔人も簡単に撃退できるわ
フフ、カレアナの成長が今の私の一番の楽しみ
この幸せがいつまでも続くよう、おかしな話だけど、私は神様に祈った