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蠢くは悪の意思17

 思わぬ障害に出くわしたせいで少し時間はかかったけど、ようやく帝都ヴァレアファルメに入ることができたわ

 フロレシアさんの言う通り、帝都は本当に顔パスで街の奥の方まで入れた

 どうやらフロレシアさんは警戒されていないみたいね

 帝国側のそれも女帝の妹であることがプラスに働いているのかとも思ったけど、フロレシアさんはおかしくなった女帝ロクサーナさんに逆らわないよう、自分が味方であるってことをしっかりと認識させてからこの国を離れたから、警戒されなかったのかもしれないって言ってる

 フロレシアさんはロクサーナさんがおかしくなり始めたころからすでにだましていたみたい

 それにしても今会った兵たち、彼らはどこか目が虚ろだった

 もうこんな末端らしい兵たちにまでその悪魔の魅了が届いてるってことなのかしら?


「なんにせよここまで無事たどり着けたのは幸いです。 このまま一気に城にまで入り込んでその悪魔を討伐しましょう。 そうすれば帝国全体に掛かっているこの魅了は消え去るはずです。 予測の域を出ませんが…」


 そう、もしかしたら魅了が解けない可能性もある

 兵や一般市民にはそこまで深く魅了はかかっていないかもしれないけど、ロクサーナさんやその近衛になると深い魅了に掛かっていて、それが解けないなんてことも十分に考えられる

 そうなると、フロレシアさんはロクサーナさんを討たなきゃいけなくなる

 でも今はそれを考えている暇はない

 一刻も早く問題を解決しなきゃ大規模な戦争が本当に始まってしまう

 聖国には私の大切な家族や友達もいる

 いくら聖国の聖女や聖人が強いとは言っても、帝国にだって強い兵はたくさんいるし、数の上では圧倒的に不利だもの


「たとえそうなっても守りますよ。 出来るだけ多くの人を救いたいんです。 この手で守れるものは少ないかもしれないけど、手が届く範囲は必ず守って見せます!」


 リィリアならできると思う

 だって私の親友だもの

 この子はすごい

 年下ながら漂う大人な雰囲気、魔力保有量の多さに神力の多彩性

 どう考えても普通じゃない力の持ち主だけど、この子には周りを変える不思議なカリスマ性がある

 声は心にまで響き、言葉は胸を打つ

 まるで聖王様みたい


「お帰りなさいませフロレシア様、陛下が私室にてお待ちです。 お付きの方々はこちらへ」


 私達は別室へ通されてそのまま待機するよう言われた

 フロレシアさんのことは心配だけど、合図があるまでは下手に動けばこっちが不利になっちゃう



 仲間と引き離されてしまった

 でも姉様に会える。 姉様を何とかして魅了による支配から助け出さなくちゃ


「姉さ…。 皇帝陛下、失礼いたします」


 私室には姉様だけで、あの悪魔らしき女はいない


「良く帰ったなフロレシア、苦しゅうない、近う寄れ」


 姉様に言われるがままベッドに横たわる姉様の横に座った

 警戒していたのだけど、なんだか姉様の雰囲気が、少し前と違って元の優しい姉様の雰囲気になってる気がするの

 すると姉様は私を引き寄せた


「そのまま、私にハグして、口をなるべく動かさないように小声で話して」


「ね、姉様!?」


「しっ! どこであいつが聞いているか分からないわ。 お願いフロレシア、この国を、民を救って。 あの悪魔を倒して」


 姉様は小声でまくし立てるように私の耳元でそうつぶやいた

 なんてこと、姉様への魅了は解けていたのね

 それなのに姉様は悪魔を倒す算段をつけるために魅了されていると偽って、危険な橋を渡っていたんだ

 やっぱり、姉様は偉大だ


「待っていてください姉様、必ず助け出しますから」


 今は連れていけない

 悪魔の目がどこにあるかわからないし、あいつを確実に倒せるようにならなくちゃ

 私達が全員やられるわけにはいかない

 なんとしてもあの悪魔の弱点を探って倒して、それから()()()()()を救うんだ!

 絶対的な敵なんていない。 きっとその悪魔にだって弱点はある

 まずはそれを探り出して


「あらあら、妹君は何か企んでいらっしゃるご様子、これは行けませんねぇ陛下、お仕置きが、必要かしら」


「キャリー!?」


「ええ、キャリーですとも妹君、貴方は陛下の意思に逆らうのですか? フフ、悪い子、悪い子には罰を」


 絶望が、私を包み込んで、私はそのまま闇の中へと溶け込んだ


「遅いね、フロレシアさん…。 一体どうしたのかな?」


 ライラが扉を開けて廊下を確認しながらつぶやいた

 確かに遅いわね。 もう一時間になる

 その間給仕が一度来て紅茶を入れてくれた以外にはなんの音沙汰もない

 重い不安が胸を締め付ける

 

「リィリア、どう思う?」


「分からないけど、胸騒ぎがさっきから治まりません。 フロレシアさん、無事だといいのですが」


 みんながフロレシアさんを心配していると、当の本人が扉を開けて入って来た


「お待たせ、姉様はもう大丈夫よ。 あなたたちはもう国に帰っていいわ」


「え!? それは一体どういうことなの?」


「どうもこうも、もう問題はないから帰ってほしいだけよ? 何かおかしいかしら?」


「あなた、本当にフロレシアさんですか?」


「何言ってるのよ、まごうことなきフロレシアよ? 仲間を疑うって言うの?」


 確かに姿は完全にフロレシアさんだけど、言っていることの支離滅裂さや雰囲気からそれがフロレシアさんじゃないと告げている


「偽物! 本物のフロレシアさんはどこ!?」


「あらあら、見破られて当然のクオリティだったわね。 まあわざとやっているのだけれど」


「お前は、悪魔!」


 フロレシアさんの姿をした何者かはその正体を現した

 その雰囲気、力、たたずまいからその女が悪魔だとはっきりわかった

 天地がひっくり返ろうとも、私達に勝機はないんだと分からせるために出て来た化け物…

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