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悪魔11

 私のテラーナイトメアを破壊したあの子、あの子はいい素材になりそうだわ

 あの子をどうにかして攫えないかしら? 久しぶりに世界を滅ぼせるほどの個体が作れそうで私は胸が高鳴っているわ

 この胸の高鳴りを例えるなら、そう、恋

 悪魔たるこの私が人間であるあの子に恋しているのだわ

 でもあの子と愛し合うわけにはいかない

 たとえあの子がそれを望んできても、私はあの子を素材にしなければならない

 人間と悪魔という種族での弊害かしら


「じゃあリアナ、行きましょうか」


 新しく作り出したテラーナイトメアのリアナは自我が少し残っているせいか、私の言うことをあまり聞かない

 はっきり言えば失敗作だわ

 素体が聖女だったせいなのかもしれないわね

 偶然捕獲できたのだけど、やっぱりあの子とは素体というか、資質が全く違う

 聖女とは言ってもピンキリってことなのね


「ほらリアナ! 何をグズグズしているのかしら?」


「グゴガ、ゴロジ、で」


「は? あんたはもうあたしの玩具なのよ? 死ぬなら私を楽しませてから死になさい」


 もとは可愛らしい顔立ちだったこのリアナも、今では首はねじ曲がり、顔はただれ、体は膨満して醜く膨れ上がっている

 それでもこの女は自我を保っている

 弱いとは言ってもさすが聖国の聖女というところね

 まあもう元に戻ることなんてできないから、このまま自我が消えて本当の化け物になった方が楽なのにね

 ・・・

 そうだわ、いいことを考えた


「リアナ、死にたいなら殺してあげる。 でもその前に、リィリアという聖女を私の前に連れてきなさい。 そうすれば安らかな死を与えてあげるわ」


「り、りあ、ヅレデ、ぐる?」


「ええそうよ、私の前まで生きたままね」


「い、やだ、アノゴも、わだじミダイに、ずる、つもりが! させな、い」


 はぁ、これだから意志の強い人間は厄介

 こいつにとっても好条件の筈なのに飛びつきもしない


「ぐ、あがぁあああ!」


「言うことを聞けない悪い子は、おしおきね」


 私はリアナの体をいじくって常に苦痛を与えるよう改造した

 情人なら気が狂うほどの痛みのはず

 それなのにリアナは耐え続け、その心を折るには至らなかった

 だから私は脳を壊して考えることをやめさせた

 これだけはやりたくなかったのよね

 脳が破壊されれば当然自分で考えて行動することなんてできない

 私の命令を聞くようにはなるけれど、単純な行動以外できなくなる


「はあ、あんたが余計な抵抗をするから、役に立たないテラーナイトメアになっちゃったじゃない」


 口から涎を垂らし、焦点のあっていない目で私を見つめるリアナを蹴り上げる


「うー、あー」


 痛みすらも脳が無いから感じないだろうに

 それでもこいつのこの目、まだ意志が宿っているように見えて気色が悪いわ


「リアナ、適当にその辺りで人間でも殺してなさい。 あんたはここに捨てていくから」


「ぐぶぁあ、ああー」


 まったく、以前作ったダニエルのような可愛らしさがない

 あの子は本当にいい子だったわ

 言うことをよく聞いたし、人間の殺し方も私好みの殺し方を覚えてくれた

 あの子のような従順なテラーナイトメアを作り出すのは難しい

 とにかく魔力の調節が大変なのよね

 注ぎすぎれば暴走するし、足りなければこいつみたいに自我を残してしまう

 見極めが肝心なのかしらね

 

 リアナはぐちゅりと腐った足で一歩を踏み出すとどうやら人間の臭いのする方へ向かっていった

 人間を殺して少しでも役に立ってきなさいな

 この先は確か、セロランド王国だったかしら?

 あそこの勇者は今勇者会議で不在の筈

 それならリアナでも十分滅ぼせそうね


「さて、新しいテラーナイトメアを作りに行きましょうか。 さすがにまた聖女を攫えるとは思わないけど、いい素体が手に入れば御の字」


 私は新たなテラーナイトメアの素体を手に入れるために一旦アルザマードへ戻ることにした




「くそがぁあああ!! クソ!クソクソクソ! 魔王を攫われた! あのがきがぁあ! 何が悪魔よ! 何が協力するよ! 許せない許せない許せない! 私の計画を狂わせやがって! 見つけたら殺す殺す殺す殺すぅうう! ・・・ハァハァ」


 おっと、酷い口調になっていたわね

 私は魔人たちの統括、冷静にふるまわなければ


「シュライナ様! 報告です! アエトが裏切りました!」


「何ですって!? ぐっ、お前たち、一体何をしていたのですか?」


「そ、それがその、聖国の聖女に寝返ったようで、その、我々の実力ではその聖女に手出しもできず」


「それで逃げ帰ったというの?」


「も、申し訳ありません!」


 私は報告に来た魔人にそっと手を添えて慰めの言葉をかける

 どんな魔人でも使いようはある。 こいつは偵察に特化した魔人で変えは効かない

 戦闘力は低いけど、この能力だけは重宝している


「いえ、お前だけを行かせた私のミス。 戦闘に適した魔人も付けるべきだったわ。 ごめんなさいね」


「そ、そんな、もったいないお言葉です! 次こそはこの命を賭しても必ずや任務をやり遂げて見せます!」


「ええ、頑張ってね、魔王様のために」


「はっ! 魔王様のために!」


 魔王が攫われたことを知っているのは私と私に忠実な幹部のみ

 こいつのような偵察しか能のない魔人たちには一切教えてはいない

 

「それじゃあアエトを引き続き捜索して頂戴。 居場所が分かり次第報告をお願いね」


「はい!」


 ふぅ、理解ある上司を演じるのも楽じゃないわ

 でもこの程度で私に忠誠を誓う魔人が増えるなら大した労じゃない

 それにしても魔王とあの悪魔はどこへ…

 早急に探し出さねば

 

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