ギフト
輝く何かが鏡のようなもので映像を見ている
その映像には血まみれの少女と化け物が映り、少女は臓腑が飛び出ながらも必死に化け物にしがみついて仲間を守ろうとしているようだった
「重要な器官がいくつか潰れちゃってるねー。 これで動けるってこの子どんな精神力してるんだよ」
「ふふ、体と精神は密接なのさ。 僕らのような精神生命体は精神こそが魂だからね」
彼らはさらに映像を見続ける
にこやかに見守る者、ハラハラしながら顔を伏せる者、応援する者様々だが、彼らの共通する点は誰もがその少女のために祈っているところだろう
自分の仲間を殺そうと歩みを進める化け物に対し、少女はただ足を掴むだけだ
どう考えようとももはや死を待つばかりであろう少女の力ではない
「ほら、変化が始まりましたよ。 最初に発現したのはどうやらわたくしのギフトのようですわ」
「敵の能力をコピーするというあれか? 確かにあの化け物の能力はこの状況で適切かもしれんな…。 ん?待てよ、もう一つ力が発言しているな」
彼らは少女に一人一つずつギフトと呼ばれる力を与えていた
それぞれが違った能力のギフトであり、少女は自らの成長と共にその能力を発現していくこととなる
最初に発現したのは優美で清らかな乙女が与えた“模倣”という力だ
触った相手の力をほぼ完全に再現できる力であるため、死にかかっていたその少女は化け物の“再生”の力を模倣し、自らの体を再生したのだ
その際に魔力を大量消費したのだが、化け物の生命力を奪ってそれを補った
それこそがもう一つ発言した力“吸生”という触れた相手の生命力を奪う力だ
「二つ目は僕、の、力だね」
その吸生の力を与えたと思われるのは少年で、少しカールのかかった髪にダルそうな目だが、顔立ちはかなり整っている
「彼女が願ったからだろう。 強い願いはどんなことでも叶うからねぇ」
彼らは体を再生させ、化け物を倒して見せた少女に増々心酔しているようだ
自分たちの与えたギフトがいつ発現するのかとワクワクしているようでもある
「ま、あの子にはいずれもっといろいろしてもらう予定だからね。 このくらいで死んでもらっては困るよ」
彼らは再び映像を見守る
全員がなぜその少女にギフトを与えたのか? それは彼らにしかわからない
だが彼らの思いは同じだ
少女を強くすることが目的であり、それがひいては彼らの目的達成へと繋がるのだろう
「それで? この場にいないメンツは何をしているんだい?」
「ああ、何人かは直接見に行ってるよ。 あとは忙しいのもいるからね」
「僕も、少し、用事ある。 先戻るよ」
「ではわたくしも」
「待てよ、もう少し見て行かないのか?」
「暇じゃないんだよ、お前みたいに」
「んだよ、真面目ぶってさ。 良いよ一人で見るし」
「あ、私は残って一緒に見るよ?」
それぞれがそれぞれの用を済ませるために消え、鏡の前には二人のみが残った
一人は少年のような口調の少女で、もう一人はお嬢様のような服装の少女
二人は仲がいいようで、少年のような少女にお嬢様のような少女がべったりと寄り添っている
「こいつさ、いつ俺の力を発現すると思う?」
「分からないけどきっと早いうちに発現するよ」
「だよな? 楽しみだな!」
「うん! 私の力も発言してほしいなぁ」
「大丈夫だって。 お前の力なら俺の次くらいには発現するって! だって俺たちはこんなに仲がいいんだぜ?」
少年のような少女がお嬢様のような少女の顎を指でクイと引く
「う、うん、チュッ」
お嬢様のような少女が恥ずかしがりながらも少年のような少女の頬にキスをする
「お前は本当に可愛いな。 でも他の奴らがいる前でやっちゃだめだぜ? 怒られるからな」
「うんうん、二人っきりの時だけだもんね」
二人きりの愛の空間が広がる中、二人は仲良く手を繋ぎ鏡をまたのぞき込んだ
「よしよし、いい感じで力も安定化してるぜ。 これなら他のギフトもうまく開けるはずだ」
「どんどん開いてもらわないとね! 私達の、目的のために」
二人は笑い合う
彼らの正体は女神ティライミスですら知らない
世界から一線を画す何か
神と呼ばれることもあるが、神とは似て非なる存在であった