悪魔10
現在
勢いで連れてきた魔王カレアナはだいぶ回復したみたい
以前の痩せていた体からしたらかなり健康体になったと思うわ
でも今私は一つ心配事が、他の悪魔やシュライナ配下の魔人たちに追われるよりももっと不安なことがある
それは魔人たちの城に残してきてしまった魔人のアエトちゃんのこと
魔人は魔物から進化して人間のような姿を得た者たち
その力は魔物であった時の数倍から数百倍にまで増すって言われてるけど、アエトちゃんに至っては天才と言ってもいいほどの力を持っていた
魔物を使役し、改造、強化、召喚と幅広く、そのために訓練を終えた現在あの子はザルフさんと組んで様々な任務に順次しているみたい
ザルフさんならあの子を任せられる
というのも彼は子供にはすごく優しい
武人気質で人を率先して殺すこともない
アエトちゃんはまだまだ子供だからきっとザルフさんが守ってはくれると思う
それでも私が直接守ってあげられないのが悔しい。 あの子だってカレアナと同じように私は、妹だと思ってる
あの子もいずれ助け出すわ。 必ず!
「お姉ちゃん、私も、戦えるようになりたい」
道を歩いていると魔物が襲ってきた
それを倒した直後にカレアナは私に告げた
子供でまだ魔王としての力を使いこなせていない彼女は魔力も操作できず魔法が使えない
それどころか魔人としての能力も覚醒していないし、魔王なら当然使えるべき威圧もない
彼女はそこいらにいる人間の少女とあまり変わらないスキルや能力しかない
アエトちゃんと違って本当に私が守ってあげないと、きっとすぐ死んじゃう
シュライナが生かしておいたのも、恐らく魔王としての力を持てるのは才覚ある魔人でなければならないことが関係しているんだと思う
それだけ実はカレアナはすごい子
守りたいから守ってるんだけど、強くなるのはいいことだと思うわ
もし私が守り切れなくなったとき、戦える術を持っていないと危ないもの
「というわけで、まずは初級魔法を覚えてもらうね」
一応悪魔である私にとって魔力の操作で扱う魔法はお手の物
どんなに弱い悪魔だろうと魔力の扱いだけは生まれながらに理解できる
こんなにも悪魔として未熟な私でもそれは変わらない
だからこそカレアナに魔法を教えれると思うの
まあそのぶん剣術や槍術と言った武器を使うような戦い方は教えれないけどね
私ができるのは無手の格闘術くらいかな? 相手を傷つけず戦うためにこれだけは達人と言っていいまでに修練できてると思うわ
魔法主体で戦う悪魔らしくはないけどね
「魔法、私にも使える?」
「もちろんよカレアナ、あなたの魔力量はこの世界でも頂点の一角よ。 それだけの魔力があればどんな魔法も思うままね」
「が、頑張る!」
「うん!」
カレアナのやる気に満ちた目が可愛すぎたから思わず抱きしめちゃった
で、最初に始めたのが魔力感知
これをすることによって周囲に流れる魔力を感じれるようになったり、体内の魔力の操作方法を理解できるようになるの
まあ私達悪魔のように思ったままは動かせないだろうけど、初級魔法を覚えるのならそれでも十分
そう思っていたら、カレアナの魔力感知と操作は思った以上に有能だった
しかも教えたそばから簡単に魔法を使ってしまう
私はその吸収の速さに興奮して思わず中級までの魔法をほとんど教えてしまった
もっと時間をかけてレッスンしながらカレアナの尊敬をもっともっと集めるつもりだったのに…
でもこれでわかったわ
カレアナは多分魔神になれるほどの力を持っている
この世界にはいたことが無いみたいだけど、私達四恐がかつて召喚された世界に上位の悪魔ともまともに渡り合えるほどの魔神がいた
当然四恐では一切通用しないほどの強さを持った、魔王から進化した存在
それが魔神だった
だからこそカレアナを魔人や悪魔たちに奪われちゃいけない
魔神になれるとわかったら、無理やり魔神に変えられるに決まってるもの
そんなこと絶対にさせない。 この命に代えても
「いい感じよカレアナ。 魔力も安定してるし、込められてる魔力量も少し多いけど許容範囲。 カレアナ、天才だわ」
褒められて嬉しそうにするカレアナの頭をまた撫でる
目を細めて細長い尻尾を振ってる
それからも少し魔法の練習をして、街で買っておいた材料で料理をしてご飯を食べた
今日の献立はシチューと硬いパン
これでも私は料理が上手いって自覚があるわ
特にシチュー料理には自信があるの
でね、硬いパンは普通に食べたらボソボソして食べれたものじゃない(カレアナはよくこれとハエのたかるような腐った料理を食べさせられてたみたい)
でもシチューにこのパンを浸して食べると、途端に柔らか食感の美味しいパンになることを発見したわ
これにはカレアナも大喜びしてくれた
本当に可愛い、私の、妹…
ご飯を食べたらカレアナは眠くなったみたい
私の足を枕にしてスヤスヤ眠り始めたわ