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悪魔と女帝1

 ククク、我の野望は着実に進んでいる

 まずは周辺の小国を内滅ぼし、聖国の周り全てを属国としてから孤立させる

 その後一気に四方八方から攻め込んで徐々に殲滅

 女子供も残さず根絶やしにしてやろう

 我は笑いながらこれからのことを考えていた

 だが、何かおかしい

 我はなぜあの国を滅ぼしたいのだ?

 過去に何か、憎むべきことがあったはずだ

 それが思い出せない、いや、そもそも記憶が無い?

 我は一体なぜ…

 考え始めるとその疑問はワインのシミのように心の中に広がっていった


「我は、あれ? 私、は…。 そうだ、フロレシアに会わなきゃ。 あの子に伝えなきゃ。 く、頭が痛い。 フロレシア、あの子なら気づいてくれる…。 そうよ、行かなきゃ、フロレシアの元へ」


 私は急にはっきりした頭で考え始める

 始めはあの女が来てからだった

 あれを一目見たときその危険性を瞬時に理解して剣を抜いたけど、たった一言言葉を発せられただけで抗いがたい気持ちよさを感じた

 あの女の言葉には不思議な魅力があり、私の臣下も近衛兵もみなが誘惑されつくされた

 ただ私はその言葉に何とか抗いながらしばらくは抵抗を続けていたのだけれど、それでも数ヵ月で私はあの女の虜になっていた

 では今なぜ私はここまで意識がはっきりしたのだろう

 考えられる要因は三つ

 一つ目は女が死んだ可能性

 これは限りなく低いと思うわ

 だってあの女は私が見たところ、フロレシアの何百倍も強い

 それこそ世界中の実力者で取り囲んで協力して討伐するような化け物だわ

 だからこそ可能性はないといっていい


 二つ目は女が魅了を解いた

 言いなりになっていた間の記憶はうっすらとだけど覚えてる

 あの女は私に世界に宣戦布告させて世界の支配をもくろんでいたわ

 それにあんな女と愛し合っていただなんて…

 いえ、あの女から愛は感じなかったか

 何かを流し込まれたのは覚えているんだけど、あれは多分女の魔力

 でもそれだけ時間をかけて私を魅了しておいたのにもかかわらず、そんなにあっさりと解くかしら?

 魅了を解いた理由として考えられるのは、解かざるを得ない状況に陥ったから

 力ある存在のあの女がそんな状況に陥るって言うのは考えにくいけど、もしかしたら他国から私の異常を察知した人が救援に来てくれたのかもしれない

 まあ可能性は一つ目よりは高いけれど、それでもかなり低い


 三つめは、私がレジストに成功した可能性

 これが一番可能性的には高いかしら

 最初から少し抵抗できていたのだもの

 もしそうならこの状況は利用できるはず

 女に魅了されたままの演技をして隙をついて殺す…

 いえ、殺すのは難しいわね。 あれは人間では殺せそうにないもの

 それなら私を不審に思っていたフロレシアが救援に来てくれる可能性にかける方がよっぽど現実的ね

 フロレシアならきっと私の異常に気付いてくれているはず

 あわよくば勇者の仲間を引き連れて私を助け出してくれるかもしれない

 その可能性にかけるしか、今はできない


 考えていると急に私室の扉が開いてあの女が入って来た

 どっちなの? 私が魅了をレジストしたことに気づいているのかしら


「あら、起きていたのねロクサーナ。 そろそろメストローゼ王国を攻め滅ぼす準備ができたわ。 あそこを先に落としていれば聖国へも攻めやすいわよ」


 どうやら気づいていないみたい

 私は魅了されていた時と同じ口調で話し始めた

 どうやらこの女、キャリーは私のこの口調が好きなようで、無理やりこの口調に変えられていたようだ


「そうか、ならば打って出るぞ、すぐに兵を用意せよ」


「ええ、そう言うと思ってもう用意してあるわ。 いつでも出兵できるわよ」


「うむ、ではよい報告を待っているぞ。 我はここで高みの見物と行くとしよう」


「そうね、一緒に人間が駆逐されていく様子を眺めましょうか」


 く、何て趣味の悪い女なのかしら

 なんとかメストローゼの人々を助ける方法はないかしら?

 するとまた扉が叩かれて兵の一人が飛び込んできた


「伝令です陛下!」


「なんだ騒がしい! まあいい、言ってみろ」


「ハッ! 伝令によるとメストローゼが壊滅したとのことです!」


「なんだと!? 確かか?」


「はい! 監視班からの確かな報告です」


「それで、原因は? 災害か、それとも魔物か?」


「それがその、どうやら見たことのないどろどろとした魔物が次々と人間を虐殺していったとのことで、監視していた数名も見ただけでし死した者、精神に異常をきたした者がいるようです」


「なんだと? そのような魔物聞いたことが無いぞ? 貴様我に嘘の報告をしているのではなかろうな?」


 一応私は厳格で失敗を許さない女帝を演じる

 それにしても見ただけで死ぬ魔物? そんなもの聞いたことない


「あらあら、その魔物、私の友人が作り出したモノね。 うまく作り出せたみたいね」


 なんですって!? 仲間?

 こいつ以外にも同じような化け物がいるってこと!?

 しかも見ただけで人を殺してしまう魔物を作り出すなんて… 

 こんなの、人類が勝てるはず、ないじゃない

 絶句していたところ、キャリーは手間が省けたわと笑いながら私の手を引いてベッドへといざなった

 また交わりあうつもりなのね

 でも、今の私なら抵抗できる

 この女をだまして、フロレシアの役に立たなくちゃ、女帝の立つ瀬がない

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