表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/155

悪魔9

 現在より数ヵ月前


 ダニエルが気に食わないガキに壊されたから新しいテラーナイトメアを作ってみたけど…

 フフ、なかなかの個体が完成したわね

 でも知能がどうにも足りないわ

 私の言うことも聞かないし、失敗作かしら

 まあこれはこれで使い道はありそうね

 キャリーにでもあげて適当に使ってもらおうかしら

 そうね、それがいいわ

 私は眠らせておいたそのテラーナイトメアを運んでキャリーのいる帝国に侵入すると、すぐにキャリーの元へ行ったわ

 彼女の気配はすぐにわかる。 どうやら王宮にいるみたいね

 影を縫うように移動して人間に見つからないように進むとキャリーの気配がひと際大きい部屋へたどり着いた

 扉を叩いて開けると、キャリーと見知らぬ女が同じベッドで愛し合っている最中だった


「キャリー何をしているのかしら?」


「み、ミザリー!? どうしてここに」


「あなたにこれを届けに来たのだけれど、そんなことよりその女は一体誰よ?」


 その見知らぬ女は裸で体液にまみれたまま立ちあがる


「無礼な! ここをどこと心得るのだ侵入者! 我の私室であるぞ! 切り伏せてくれるわ!」


 枕元にあったこの世界では力ある剣を抜くと私を斬りつける

 痛くもかゆくもないわ、こんなもの

 私はその女の首を絞めて持ち上げる


「無礼は誰かしら? お前程度のクズのような人間風情が私の体に剣を向けるなんて、愚かね」


 そのまま首の骨を折ろうとさらに締め上げると女は失禁しながら顔を真っ赤に染めて苦しみ始めた


「フフ、その表情、それはちょっといいわね」


「待ってミザリー! それはこの国の皇帝よ。 今殺しちゃダメ」


「なによキャリー早く言いなさいよ」


 ビチビチという音と臭いが部屋に充満し始めたので投げ捨てるように女を地面に叩きつけた


「グブッ、ゲホッゲホッ」


「全く、キャリー、私達意外と愛し合うなんて何を考えているのかしら?」


「それは違うわミザリー、この人間に私の力を注いで洗脳をより強力にかけていただけよ。 こいつが自由に言うことを聞くようになれば帝国は私の思うままに動くもの。 こいつ、意外と意思が強くてね、いまだに抵抗し続けているのよ」


 その話を聞いて納得した

 私達悪魔は時に自分の力を注ぎ能力を定着させたい時にはまぐわうことがある

 よかった、キャリーのこの行為もそれだったのね


「勘違いして悪かったわキャリー。 貴方と愛し合うのは私達だけですものね」


「ええそうよ、こんな人間にみじんも愛など注がないわ」


 キャリーは相変わらず私とエスターを愛してくれていることが分かった

 ひとまずこのいうことを聞かないテラーナイトメアをキャリーに託す

 彼女はこれを国境付近に放って聖国からの侵入者を防ぐのに使うと言っていたわ

 彼女なら暴走状態のこいつでもうまく使えるでしょう




 うう、一体どうすればいいのかしら

 私はこのままじゃダメだと魔王をこっそり探すことにした

 いつもシュライナが守っている扉の奥、そこに魔王がいるはずよね

 私には他の悪魔たちに黙っていた能力がもう一つある

 これはあまり強力じゃないし、こういった事態くらいにしか使えないから

 それでも知られればもっと危険なことをさせられちゃう

 だからこそずっと黙っていたの

 それが“認識阻害”という能力で、周りからはまったく私を認識できなくなってしまうわ

 まあ悪魔相手にはあまり意味がないわね

 以前あの三柱から逃げようと使ったことがあるけど、同じ悪魔じゃ通用しないみたいですぐ見つかっちゃったし


「さて、これで魔人たちからは見えて、ないわよね?」


 ひとまずその辺りを歩いていた魔人に話しかけてみたけど、彼はまったくこちらに気づいていなかった

 これなら大丈夫そうね

 いろんな魔人の前を素通りして、シュライナの前まで来た

 この人、何かおかしいのよね、魔王に会わせてくれないのもそうだけど、何か企んでそうな気配がする

 私の能力でこの女は私を認識できていない

 ただ扉を開けばばれちゃいそうなのよね

 さて、どうやってこの扉を開けようかしら

 しばらく考えてシュライナが動くとき、それを思い出した

 ご飯もここで食べてるから、動くのはトイレの時と寝る時か

 ただ寝るのも備え付けのすぐ横のベッドなのよね

 だったらトイレかな?

 トイレはこの廊下の少し先にある突きあたりだから、トイレに行く時がねらい目ね

 

 で、しばらく待っていたけど、数時間たっても動かないから逆に私がトイレに行きたくなった

 まあ少しだけ離れるくらいならいいか

 トイレに行こうっと

 素早く動いてトイレに入るとコツコツとヒールが石畳の廊下を打つ音が聞こえてきた

 これ、シュライナの足音じゃない!

 ひとまず用を足してからシュライナがトイレに入るのを確認

 拭くのもままならなかったからそのまま下着を履いて扉まで戻る

 怖い魔王だったらどうしようと思いながら恐る恐る扉を開くと、そこにはやせ細ってボロボロの角の生えた女の子が転がっていた

 生きているのか死んでいるのか分からないほどの衰弱っぷり

 その時が私と魔王の初めての出会いだったわ

 そして私はこの子を、魔王を助けたいと思ったの

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ