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悪魔7

 私はひとまず魔王に会うためにシュライナさんの命令を聞くことにした

 どこどこの薬草を1万本もってきてだの、どこどこにいるAランク指定魔物を生きたまま連れてこいだの、どこかの国の偉い人を殺してこいだの、およそ無理難題なんであろうことばかりを言いつけられた

 ただ、この世界の基準で言う強い魔物、危険な仕事は私にとっては大したことのないことばかり

 まあ殺しの依頼だけはうまくごまかしておいたけど…。 具体的に言うと自分で深手を負って敵にやられました。 予想以上に強い人間がいますと嘘の情報を流したの

 シュライナさんにはその辺りを確認する術が下級魔人の情報しかないから、そこはどうにかうまく出来たと思うわ

 だって私、殺しなんてやりたくないもん

 悪魔だから殺しが好きなんて誰が言ったのかしら? 少なくとも私は大嫌いよ

 でもここまでのびのび出来るとは思わなかった。 ここにはキャリーもミザリーもエスターもいない。 つかの間の楽園みたいな場所だわ

 でも早く魔王に関しての報告をしないとミザリーかエスターが確認しに来そうで怖い


「あらヨローナ、いいところにいました。 少し付き合ってほしいのですが」


 今話しかけてきたのはチェリアラという魔人の女の子で、見た目は15歳くらい

 人間に近い容姿だけど、頭に捻じれた角がある

 人間を食べるのが好きらしいから好きにはなれないけど、それが無ければ普通の女の子って感じね

 現に人間を食べる話以外ではとっても気が合うのよね


「実はザルフ様についにあれをやろうと思うんです」


「まあ! それはいいじゃない! でもザルフさんって気難しそうだけど?」


「フフフ、そこは考えてあるのです。 私の色気をもってすればいちころ、だと思うのですが」


「い、色気…。 ザルフさんは見ためより内面を見る方だと思うんだけど、まずデートにでも誘ってみたら?」


「デッデデデデートだなんてまだ早いですよ! そ、それにザルフさん、私が誘っても来てくれそうにないですし、だから人間の死体を一緒に食べようかと…」


「ザルフさん、人間は食べないって言ってたよ。 ザルフさんの好物は鳥肉らしいからそっちを用意したらいいんじゃないかな?」


「なるほど! ありがとうヨローナ!」


「それから、多分ザルフさんなら鳥肉を一緒に食べようって誘えばついて来てくれると思うよ。 鳥肉のこととなると目が無いみたいだし」


「ふむふむ、じゃぁ鳥肉をまずは調達しないとですね。 色々ありがとうございます!」


 チェリアラは鳥肉を用意するために走って行ってしまった

 彼女は寡黙でたくましいザルフさんに一目ぼれして、猛アタックを現在進行形でかけてる

 でも武人気質のザルフさんはまるで相手にしてくれないのが問題なのよね

 まあチェリアラの頑張り次第ってとこかな?


「さてと、アエトちゃんの様子でも見てこようかな」


 私は最近ここに来たアエトちゃんという魔人の少女のことが気になっていた

 いつも何かにおびえておどおどしてるし、悲しそうな顔をしている

 だからなんていうか、ほっとけないの

 城に新人を教育する場所があって(私の場合は強さを認められて教育は免除されたけどね)、そこでは日夜魔人になったばかりの子供達を人間を憎む存在として育てている

 そんな中でも一番優しくて争いを好まないのがアエトちゃんだった

 いつも皆に馬鹿にされて、教官の魔人から折檻されて、そんな姿を私と重ねて目にかけてるんだけど、いつも傷だらけで思いつめた表情で座ってることが多いから、少し心配


「来たわよアエトちゃん」


「あ! ヨローナお姉ちゃん!」


 アエトちゃんは私によく懐いてくれている。 ご飯を抜かれることが多いから私はいつもお菓子を持って行ってあげるの

 別にご飯で釣ってるわけじゃないんだけど、お姉ちゃんと慕ってくれる姿は本当に妹ができたみたいね

 妹、欲しい…


「アエトちゃん、大丈夫?」


「はい! 私、魔王様に認めてもらって友達と一緒に平和に暮らすんです! それまで我慢して頑張るって決めたんです」


 アエトちゃんの友達というのは魔物の友達のこと

 彼女の力は魔物を使役する力なんだけど、心の底から魔物の方が友達になりたいと思わなきゃ発動できないみたい

 使役と言ってもそうしなければ強化などの付与ができないからやってるだけで、アエトちゃんは一切命令なんてしない。 それだけアエトちゃんは優しい


「どう、お菓子美味しい?」


「はい! いつもありがとうございます!」


 その可愛さに思わず自分の分のお菓子まであげちゃった

 すっごく喜んでるからいいか

 と、その姿を微笑ましく見ていると


「困りますヨローナ様! 幹部と言えど勝手にこのようなことをされては!」


 そう言って教官がアエトちゃんにあげたお菓子を取り上げた。 その上にアエトちゃんに鞭を振るおうとしたのでその手を止めた


「何してるの? 私の前でこの子を傷つけるなんて、そんなこと許すと思ってるの?」


 魔人同士の争いはご法度らしいけど、私は構わずに力を少しだけ解放した

 落ちこぼれ悪魔だけど、こいつらよりは遥かに強い

 教官はたじろいですごすごと行ってしまったわ


「ごめんねアエトちゃん、私がここにいるからゆっくり食べてね」


「ありがとうございますヨローナお姉ちゃん!」


 それから夢中でお菓子を食べるアエトちゃんに日々の疲れを癒されながら、シュライナさんの次の指令を待った

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