悪魔5
帝国に侵入したキャリーはまず下から洗脳を始めることにした
とはいってもヨローナのように絶対的な支配はできない。 違和感を与えればすぐに解けてしまうだろう
だがそれはかかってすぐならばの話である
年月をかければ洗脳は深くなり、やがては人格をも変えてしまうだろう
キャリーたち悪魔の寿命は無いに等しい
それ故に数年など人の一日にも満たないほど短いのだ
長い年月を生きた悪魔ほど力は強いが、キャリーを含む四恐はまだ若く、経験も浅い
悪魔にも上には上がいるのだ
それが元天使のアザゼルやルシフェルと言った最高位の悪魔ならなおさらである
「ふぅ、街に潜り込んで、人々の意識から変えていくしかないわね。 まさかたかが人間の癖に、ここまで自我が強いなんて思わなかったわ」
私は最初から女帝とやらを洗脳しようとしたわ。 でもあの女、強固な意志ではねのけてしまった
洗脳の種くらいはなんとか植え付けることができたけど、あれが発芽するのはまだまだかかりそうだわね
それなら帝国全体を根幹からおかしくしてしまえばもっとスムーズに事が進むはずよ
我ながら良い考えだわね
まず私は周辺の街や属国に分体を送って市民の意識を改変していった
かなり領土が広いからこれには1年ほどかかりそう。 その間私はここから離れられない。 だって離れると分体が消えちゃうんだもの
私の主な力は本来蹂躙にこそ向いているんだけど、そこそこ他のこともできるからこういった役回りばかり任せられるのよね
まあ親友の頼みなら仕方ないのだけれど
「さて、分体は各地に散ったかしら? ちょっと覗いてみましょう」
目をつむって分体の方へ意識を向けるとその情景が見えてきた
可愛いエスターならその分体一人一人が本体になることができる。 あの子本当に優秀なのよね。 そんなところが私とミザリーのお気に入りの理由でもあるんだけど
それに比べてヨローナの方は糞の役にも立たない。 力だけはあるのに性格があれじゃあ悪魔に向いていないわね
そこまで憎々しいわけじゃないけど、あいつは人間に感情移入しすぎている。 今のうちに死んだ方がいくらかましなんじゃないかしら
「うん、分体は無事各地についたみたいね」
ざっと50人ほどの分体は、帝国の属国や街にそれぞれ配備したわ
これでそれぞれの様子が手に取るように分かるわね
それに分体に働きかけてちょっとした洗脳くらいならできる
さて、ここからが正念場だわね
少しずつ市民や属国の住人の意識改革を進めて、帝国の意向に沿うように改変
そのあとは同じく兵、その上司、さらには上層部からゆっくりと洗脳。 あとは女帝の心をじっくり変えてしまえば完了よ
全く、ここの女帝も他国を攻めることしか頭になければ簡単だったのに、とんだ手間だわね
まあ契約した以上真面目に取り組まなきゃ悪魔の名折れ。 それに完了後はあれだけの魂を好きにできるんだから、考えてみれば破格よね
悪魔のことに詳しい契約者ならそいつの魂すら得ることもなくいいように使われる。 なんてこともあるものね
無知な契約者ほどいい契約者はいないわね
私はこの任務が終わった後のことを考えて舌なめずりし、そこから得られる魂の使い道をあれこれ考えた
食べてもいいし、魂が消滅するまで悲鳴をあげさせてもいい。 それに新しい悪魔を作り出すのも楽しそう
まあ新しい悪魔は私達じゃたかが知れてるから、選択肢からほぼ外れるわね
アザゼル様やルキフグス様に頼めば何とかなるかもしれないけど、お忙しい方たちだし、無理かしら?
ま、それはおいおい考えましょう
「分体、住人達を惑わせなさい。 帝国の言うことならば何でも聞くように洗脳し、いずれ来たる大規模な戦争へと向かわせなさい」
帝国を戦争へと駆り立てて他国を侵略させる
侵略が完了した暁には女帝に死んでもらってヨローナの力であの馬鹿な人間を王として挿げ替える
アルザマードではエスターがその準備を進めてくれているから助かるわ
あとはミザリーに任せればいいだけね
ミザリーのテラーナイトメアで人々に恐怖を与えて支配
結局のところ恐怖が一番簡単に人々を操るためのスパイスになる
それにあの人間どもの恐怖に歪んだ表情って、フフ、気持ちよくなるのに最適
うずく体を抑えつつ私は私の役目を淡々とこなす
これが終わったら、たっぷりエスターと愛し合いましょう。 あの子のテクニックは最高なの
ミザリーも私も虜
ああ、魂を食べながら愛し合うのもいいわね
それを楽しみにしながら私は任務に再び取り掛かる
待っていてねエスター。 私は必ずやり遂げるわ