蠢くは悪の意思9
久しぶりに会ったリィリアは魔力が洗練されていて、努力してたのがよく分かる
顔色もいいから元気そうで何よりだわ
「リィリア、元気そうで嬉しいわ」
「ナリヤも頑張ってるみたいですね。 何より無事な姿を見れてよかったですよ」
私はリィリアを力いっぱい抱きしめた
「うぐ、ちょ、ナリヤ、ぐるじいでず」
っと、またやっちゃった…。 何かここ最近力加減ができないのよね。 勇者としての力が覚醒したからなのか、やたらコップを壊したり椅子を破壊したり、日常生活に支障が出始めてる
今もリィリアを絞め殺しそうになってるし
「は、離じでぐだざ…」
「り、リィリア? リィリア?!」
まずい、リィリアをしめ落としちゃった! 回復、誰か回復魔法を!
てんぱっているとフロレシアさんが慌てて回復魔法をかけてくれた。 フロレシアさん、回復魔法まで使えるんだ…。 しかも聖女レベルの魔法じゃないこれ!
「ふぅ、死ぬかと思いました。 川の向こうで知らない変なおじさんが踊ってましたよ」
危うく死にかけたリィリアは、まだ意識が混濁しているのか変なことを言い始めた
「だ、大丈夫? ごめんね!」
「う、うう、まだ変なおじさんの顔がちらついてるけど大丈夫です。 あれ? ナリヤの後ろにいるのは三軒となりにいるマシューおじさんじゃないですか~。 こんにちはっはぁ」
まずい、まだ混乱してるみたい。 今度はライラにもう一度回復魔法をかけてもらってようやく元に戻ってくれたわ
「ナリヤ、ものすごく力が強くなってますね。 私もあなたの親友として非常に鼻が高いですよ」
今しがた私のせいで死にかけたのに、リィリアはそんなことを気にも留めずに私をほめてくれる
でもリィリアの力もだいぶ強化されてるみたいね
立っているだけで魔力が伝わってくるくらい強い魔力
「う、んん。 もういいでしょうか?」
「あ、ごめんなさい」
私の後ろで咳払いと声がしたから振り返ると、フロレシアさんが微笑ましくこちらを見ていた
取りあえずリィリアも加えてみんなでこれからのことを話した
その結果、帝国にリィリアやライラ達もついて来てくれることになったわ
なんて心強いのかしら
それに、魔人のアエトちゃん。 魔人だけどものすごく優しい子で、今はリィリアの妹として家族になったみたい
この子の身の上は聞いた。 魔王、何て卑劣なのかしら。 いずれは立ち向かわなければならないけど、今はまず人間同士での争いを止めなくちゃ
フロレシアさんについて帝国に入れば内部に侵入できそうだけど、そのキャリーって女が厄介かも
もし一人で帝国を裏から支配しているのだとしたら、それほどの力を持っているはず。 それに操られているのがロクサーナ陛下だけとは限らない
フロレシアさんが言うには帝国には強者が多くて、数人は勇者に匹敵するほどの力も持っているみたい
その人たちだけじゃなくて、その下に付く人たちも魔法と剣に長けた人達ばかり
数年前から聖国に幾度か戦争を仕掛けようとしていたけど、聖女の力は一騎当千の力を持った人たちばかり。 彼女たちがいることで抑止力になっていたんだけど、ここに来てロクサーナ陛下は非常に強硬な手段に出ている
きっと操られたせいでおかしくなってしまったからね。 フロレシアさんのためにも速く元に戻してあげないと
でも、私達で帝国の兵たちを相手にできるのかしら…
「目的はキャリーの裏を探ることと、証拠集め、それからできれば彼女の捕縛です。 もしこの洗脳が彼女を倒したとしても解けなかった場合…。 彼女自身にしか解けなかった場合には彼女に解いてもらうしかありません。それも敵わないのなら、私自身の手で…」
フロレシアさんはそれ以上を言葉にできなかった
そう、その時はフロレシアさん自身の手でお姉さんであるロクサーナ陛下を討たなければいけないということ
そんなの、悲しすぎるじゃない
いいえ、きっとそんなことは私達がさせない
キャリーを捕まえて、ロクサーナ陛下を助け出す!
「大まかな作戦はこんなところです。 まあ作戦というにはあまりにもずさんですが、それでも、方法はこれしかありません。 姉様…、ロクサーナ陛下の側近には私をもしのぐ実力者がいます。 名前をコールドマン。 本名は知りませんが、その力からそう呼ばれています。 彼は触れた者を凍らせ、粉々に砕いてしまうのです。 ロクサーナ陛下に多大な恩があるため彼女以外の言うことは聞きません。 この、私でも彼を動かすことはできないほどです。 もし戦うことになれば相応の覚悟が必要となります」
そんなすごい人が…。 私の力じゃ役に立てないかもしれない。 でも、今なんとかしておかないと、帝国は聖国を滅茶苦茶にしてしまう
そんなの嫌! 絶対に!
みんなを守るのが勇者なんだから、私がやらなきゃ。 リィリアも、ライラも、セリセリも、アエトちゃんも…。 聖国の家族もみんなみんな私が守るんだ
だって私は勇者だから