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蠢くは悪の意思6

 ようやく砂漠も終盤に差し掛かり、街の外壁が見えてこようかというとき

 砂漠が大きく揺れるのを感じた

 まったく、また魔物なのだろうな。 地面にばかり潜っていて普通に出てきてくれる魔物がいない

 まあこれだけ砂嵐吹き荒れる中、得物を音で捉えて襲うというのは奴らの生存戦略なのだろう


「ひぃいい、揺れがおっきいですよ~」


「振り落とされちゃう~」


 セリセリとライラが必死にリラクラルの背にしがみついているが、かくいうリラクラルも今にも倒れそうだ

 地面はもはや揺れを通り越して波打っている。 相当な巨体がこの砂漠の下を移動している証拠だろう


「んぐににに、リラクラル、頑張ってぇえ」


 アエトは必死にリラクラルたちを励まし、その強化をしていた

 彼女が強化していてくれなければとっくに振り落とされていただろう


「出てきますよ! みんな備えて!」


 私は下から何かがせりあがってくる気配を感じて注意を呼び掛けた

 揺れはさらに大きくなり、ゴバッと砂が巻き上がると何かの頭が見えた

 巨大な蛇だろうか。 鎌首というには巨大すぎる頭をこちらに向けて来る


「あ、あれは!」


 アエトが何やら興奮して蛇に手を振っている


「アエト、あの魔物は一体…。 あそこまで巨大だと攻撃が…」


 私の魔法では恐らくあの蛇には通らないだろう。 勝ち目が万に一つもなさそうなのだが、逃げようにも足がすくんでしまった


「大丈夫ですよリィリアちゃん、あれはこの土地の守護神獣、バラジュアジュラです。 見かけと違っておとなしく、この国を守護してくれているので友好的ですよ」


 確かによく見れば優しい眼をしている。 ノペッとした顔も可愛げがあるではないか

 フィニキアちゃんも可愛いが、バラちゃんもいい、すごくいい


「勝手に愛称をつけないで下さいませ」


 いいではないですか、私は前世ペットや動物と触れ合える機会などなかったんです。 こういった神獣が今の私の癒しなんですよ


「そういうことなら、まぁ仕方ないとしますわ」


 ありがとうございます

 ではバラちゃんと戯れさせていただきますね

 女神様の許可は得た。 存分に味合わせてもらおうではないか、蛇ゆえのそのひんやりとした肌とつやつやの鱗を


「ああ、これは…。 なんと気持ちのいい鱗なのでしょう」


 バラちゃんはおとなしくチロチロ舌を出し入れしながらこちらに頬を摺り寄せてきた


「すごいリィリアちゃん、懐かれてるよ」


 神獣や聖獣は私に懐く。 それは女神様が下さった力の一つだ

 クルクルと喉を鳴らすバラちゃんをひとしきり楽しんで、別れ際にうろこの保湿をする魔法をかけてあげると大いに喜んで帰っ行った

 この魔法、私が創りだした生活魔法である

 肌の保湿用に作ったのだが、これが案外人気で、女子たちに教えて回ったのはいい思い出となった

 ちなみにバラちゃんも女子らしい。 やはり肌に潤いを与える魔法は彼女も気に入ってくれたのだろう

 彼女と別れて私達はようやくアードラントへ入国することができた

 リラクラルとはここでお別れだな


「ありがとう、君たちのおかげで無事ここまで来れたよ」


 リラクラルたちに砂糖の欠片を食べさせると嬉しそうにカリカリと齧っていた

 こういうところは馬に似ているな

 さて、入国したのは他でもない。 帝国の勇者フロレシアさんに会いに行かなくてはならないからだ

 やはりというか、この国でも帝国のいきなりの宣戦布告にざわついている

 それもそうだろう。 ここから帝国領は離れているとはいえ、一つの国を挟んでいるだけだ。 他人事ではないのだ


「みんな混乱していますね。 本当に、なんで帝国は今になって再び進攻を始めたのでしょう。 今のところは動きはないですが、いま世界中が一丸となって戦わなければいけない敵がいるでしょうに」


 ライラの指摘ももっともだ。 帝国は確かに虎視眈々と他国を侵略する機会をうかがっていたと聞いてはいたが、魔王という脅威を認知できないほど愚かではないはずだ

 歴代の魔王はそのどれもが国をいくつも滅ぼしている

 今代も恐らくそれに連なる力は既につけているだろう。 人同士が集まっている場合ではないのだ


「とにかく、フロレシアさんを探しましょう。 聖王様の連絡が届いているはずなので城に行けば会えるはずです」


 この国に行く前に聖王様は伝達魔法で私達が行くことは伝えて下さっている

 城には話が通っているのであとは向かうだけでいい


「城は中央にあるみたいですね。 内壁を通って貴族街の先です」


 この国は外壁の内側に平民街があり、その内側に商業区、病院、学校などの施設があり、内壁を挟んで貴族街、その中心に国王の住む城がある

 その城に住むアードラントのセレム・アードラント国王は先代が無くなってすぐに国威に着いた若い王だ

 年齢は17、少年と言ってもいい歳だが、なかなかどうして切れ者だ

 国民に愛される王だが貴族には嫌われているらしい

 今回は国王に会うわけではない、フロレシアさんに会うだけなのですぐに会えるだろう

 案の定城の兵に話を通してもらうと城の一室を用意され、そこでフロレシアさんを待つことになった

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