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悪魔3

 カレアナを連れ出してから数日後、うまく隠れれたと思うわ、我ながらだけど…

 悪魔の中でも相当な落ちこぼれだった私は、大きすぎる力を全く扱いきれていなかった

 どれだけ大きな力も使えなきゃ本当に意味がない

 四恐に選ばれたのも、力以外に一つだけ特化した能力があったから

 それは“洗脳”。 どんなに心が強い人でも私が少しささやくだけで簡単に操れるようになる

 そんな力いらないのに、それができるのは私だけだった


「どうしたの? お姉ちゃん」


 家族になってからカレアナには私をお姉ちゃんと呼んでくれている

 うんうん、いい傾向ね

 私はカレアナを心配させまいと抱きしめる


「うわ、お姉ちゃん。 良い匂い。 あたし、こんなに幸せなの初めてだよ」


 この子にはもっともっと幸せを味わってもらいたい

 あの時みたいな嫌な思いはもうしたくない


 約数百年前、悪魔である私はとある少女の願いを叶えるために召喚された

 悪魔と人間は契約することでその関係性を明確なものにする

 願いを叶えればその対価として悪魔は魂、もしくはそれに見合う代償をもらうことになる

 その子は、病気だった

 生まれてから10年、一度も病院から出たことがなく、願いは健康な体

 でも、彼女の病は既に命にまで達していて、悪魔の力では治せるけど、その対価は彼女の魂を持ってしか支払うことができなかった

 それでも、彼女はつかの間の健康を祈って…

 たった数日だったけど、彼女は本当に幸せな顔をしていた

 だから私は魂を奪うことができなかった

 もっともっと長く生きて欲しくなった


「そんなこと、許されざることデスよね? よく分かっているはずデス」


 奪えなかった私の代わりに、エスターが彼女の魂を奪ってしまった

 そして私は、彼女に数年間拷問されつづけることになって…

 あの時の痛みは今でも恐怖として焼き付いている。 でも、そんなことより、私はあの子の魂を守れなかったことが悔しい

 悪魔に魂を奪われれば、二度と天へ帰ることはない

 同じ悪魔に転生するか、魂を喰われるか、おもちゃとして扱われ、魂をすり減らして消滅するか、いずれにしても悲惨でしかない

 だからこそ、カレアナを守り切りたい。 たとえ全ての悪魔を敵に回そうとも


「お姉ちゃん?」


「大丈夫よカレアナ、私が絶対にあなたを守る。 死んでも、守って見せるから」


 頭を撫でて、カレアナと手を繋いぐ

 それからさらに数日が経って、人間の住む街へようやくやってくることができた

 ここならそうは簡単にキャリーやエスターも追跡してこれないはず

 一番厄介なのはミザリーね。 あいつが出すテラーナイトメアは私じゃ防げない

 二人そろってその恐怖に取りつかれて死ぬのが落ち…。 それどころか町の住人ごとテラーナイトメアに殺されちゃう

 逆に言えばミザリーにさえ出会わなければ何とかなるはず


「カレアナ、ここで何か食べましょう? お金ならいっぱいあるから」


 そう、お金はいっぱいある

 カレアナを連れ出すときに城から失敬した大量のお金

 私達悪魔は異空間を操れるため、どれだけの重さ、量でもその異空間に詰め込むことができる

 それが唯一悪魔でよかったと思えた点かしらね


「ど、どんなものたべるの!? はっ! お肉! お肉がいい!」


 ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶカレアナが可愛くてしょうがない

 よし、奮発してあそこのリストランテでも行ってみよう

 かなり高級そうなお店で、一番安いものでも金貨が必要みたい


「さぁ、好きなものを頼んで…って、字は読めないんだっけ、それじゃぁ」


 適当な肉料理のコースを頼んで、しばらく待つとオードブルが運ばれてきたからカレアナにマナーを教えながら食べさせた

 まだぎこちないけど意外と様になっている

 こんな子が魔王なんて誰も思わないに違いない

 特徴的な角も帽子で隠してるから、本当に普通の女の子に見える

 かくいう私も悪魔だから人間には見えないんだけど、そこは体を変質させれるから問題ないのよね


「おいしい! すっごくおいしい! あたし、こんなに美味しいの食べたの生まれて初めて!」


 ものすごい喜びようで、お店いっぱいに響く声だったからもう少し小さな声でねって注意をしてから食べる様子を眺めた

 この子は本当に普通の子だ。 魔王なんてしがらみも全て忘れさせて、私の妹として大切に育てよう


「美味しかったね」


「うん!」


 お肉料理をものすごく気に入ったみたいで、また食べたいとおねだりしている

 じゃぁ次は遊びも楽しんでもらわなきゃね。 この辺りにある遊び場を街の人に聞くと、近くに魔獣とのふれあいができる名所があるって教えてくれた

 この世界では魔物や魔獣を飼いならせる職やスキルがあったり、人懐っこい魔物もいるらしいから不思議なことじゃないのね

 カレアナも嬉しそうにどんな魔獣かな~なんて言ってるから連れて行ってあげよう


 私達の生活は今のところ恐ろしいくらいに順調

 でも注意しなきゃ

 あの三柱の悪魔が黙っているはずないもの

 いざとなったらこの命に代えても、カレアナを守る!

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