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蠢くは悪の意思4

 アードラントに広がるトクラカ砂漠。 ここは砂漠にすむ飢えた魔物が数多く出現する上に、数メートル先も見えないほどの砂嵐が常に吹き荒れている

 ここを進むにはアードラント所有のリラクラルという魔物に乗らなければ街へ行くことができない

 馬のようだが背中にコブがついており、ラクダにも見える


「この子に乗ればいいんですか?」


 私達四人にそれぞれあてがわれたリラクラルは人懐っこく可愛らしい

 アエトに至ってはベロベロと舐められ続けている


「ではアードラントへ向けて出発しますよ。 砂嵐が激しいので布を顔に巻いてください」


 この布を巻いていなければ目や口に砂が入りとにかく大変らしい

 そう言えば前世でも砂漠の民はこうして身を守っていたな

 全員砂漠に入る準備を済ませるとリラクラルに騎乗して砂漠を進んだ

 やはり視界は悪く、私達ではとてもではないがたどり着けなかっただろう

 リラクラルに感謝だな。 可愛い上に力強い走りを見せてくれる彼らのことを私はすっかり気に入ってしまった

 老後に一緒に過ごすのも悪くないかもしれない

 アエトに頼んでみるかな。 彼女ならリラクラルを友達にすることくらい容易いだろう


「ちょっと待ってください。 何かが迫ってきているのを感じます」


 アエトが魔物の気配を感じとったようだ

 リラクラル一匹なら逃げ切れるだろうが、今は私達が乗っているため恐らく追いつかれるだろう

 ならば迎え撃ち、仲間とリラクラルを守るしかない


「迎え撃ちます。 私のリラクラルをお願いします」


「うん分かったです!」


 セリセリにリラクラルの手綱を渡して私は砂場に足を付く。 途端に地面が揺れて長いワーム型の魔物が飛び出してきた

 数は10体ほどか


「あれはトクラカランデスワームです! 猛毒を吐き出すので注意を!」


 ふむ、毒か。 とにかく吐き出す液体は全て避けねば


「いえ、貴方なら頭からかぶっても問題ないですわよ? その程度の毒なら無毒化できますから」


 ああ、女神様の加護のおかげですね?


「ええ、わたくしがあなたの中にいる限り、どんな毒だろうと浄化して見せますわ」


 なんとありがたい。 それならば遠慮なく


「氷結魔法、ミストフリージア!」


 辺りに霧が発生し、デスワームを包み込んでいく

 中位の魔法だが、それで十分だった

 霧が晴れるとカチカチに凍り付いたデスワーム達の姿があり、それらを手分けして砕いて行った


「リィリアちゃん、なんだか魔力がまた上がってない?」


 ライラに指摘されて気づいたが、確かに私の魔力は以前と比べると1.5倍は上がっているようだ

 年々魔力が上がり続けており、その理由については女神様も首をかしげる始末

 今はまぁ便利くらいに思っていた方がいいだろう


「また何か来ます! 今度はさっきよりおっきいです!」


 アエトが叫ぶと再び地面が揺れて、次はサメのような隊長は8メートルはありそうな巨大な魔物が飛び出した


「あれはサンドシャーキッシュ、口に入る者なら何でも食べる凶暴な魔物です」


 あの大きな口なら大概のものが食べれるじゃないか

 それにするどい歯。 アエトの説明によると、あの歯は鉄よりも硬度が高く、鋼鉄の鎧をも噛み砕くのだそうだ


「火に弱いのですが、これは亜種のようです。 普通のサンドシャーキッシュならここまで大きく歯育ちません」


 亜種となると火に耐性があるらしく、魔法もほとんど効かないという

 ならば剣技などで戦うべきなのだろうが、あの大きさでは私のカリスの刃は通さないだろうし、セリセリの弾丸も弾いてしまうだろう

 逃げようにも砂中での奴の速さは通常種でも時速70キロを超える

 亜種ともなるとリラクラルでは逃げ切れないな


「任せてください! 私ならいけます!」


 アエトは自分の手を変化させた

 彼女の能力は魔物と友好関係を結ぶだけではない。 改造という強化も行えるのだ

 改造と言っても魔物の嫌がるような無理やりな改造はしないのがアエトのモットーで、今はその改造の力を自分に使ったのだ


「無双竜爪(りゅうそう)、業火!」


 竜の爪をその手に出現させ、燃え上がらせた

 相手は火に耐性があると言っても通常種より火に強いというだけだ

 アエトの狙いはその鱗を切り裂き、内部から燃やすことだった


「てりゃぁ!!」


 速い! アエトは一瞬でサンドシャーキッシュの背びれを斬り裂き、傷口を燃え上がらせた


「ギュガァアアア!」


 サンドシャーキッシュの悲鳴が響き、アエトを睨みつける

 すると奴の頭上に砂が集まり始めた


「り、リィリアちゃん! 結界をみんなに!」


 慌ててアエトの言う通り結界を張る

 サンドシャーキッシュの頭上の砂は固まり、槍のような形を形成した

 それらは一斉にこちらに向かって射出される

 結界が無ければこちらは全滅していたかもしれない。 それほどにやつの砂の槍は速かったのだ


「ありがとうございますリィリアちゃん! それじゃあとどめと行きますよ!」


 今度は自分の尻尾を出現させ、アエトはくるくると空中で縦回転を始めた


螺業一閃(らぎょういっせん)!」


 燃え盛る尾をサンドシャーキッシュに叩きつける

 だがサンドシャーキッシュは何事もなかったかのようにニヤリと笑った


「フフフ、気づいていないようですね。 もうすでに死んでいることに」


 アエトが笑うとサンドシャーキッシュはニヤリとした表情のまま、縦に分かれて燃え始めた

 死んだことすら一瞬気づかせないほどの速い斬撃。 さらに追い打ちの炎で骨まで燃え尽きてしまった


「友達を傷つけようとするやつは許さないのですよ」


 アエトはフンスと鼻息を鳴らして胸を張った

 私達は再びリラクラルに騎乗するとアードラントを目指す

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