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蠢くは悪の意思2

 勇者会議開催。 この報道は世界を駆け巡った

 私はティライミスの教会でこの様子をマジックウィンドウというモニターで観覧していた

 今年は新人勇者が多く、ナリヤもその一人だ

 久しぶりに見るナリヤの顔は非常に凛々しく、勇者としての責任がのしかかっているにもかかわらず、それを感じさせないほど自信に満ちているように見える

 その横に並び立つのは他国の勇者たち。 特に目を引いたのはデトロライト帝国の皇女、女帝の妹である勇者フロレシアだ

 “友愛”という彼女の力は女神様曰く、敵と戦い勝利すれば、その敵と心を通わせて友にすることができる力らしい

 神力だけではなく、彼女自身の力も大したもので、単独でAランクの魔物を倒せるほどだという

 “友愛”の力のすごさはただ友にするだけではない。 彼らを一瞬で転移、つまり自分の元へ召喚することができるのだ

 アエトの友達魔物召喚と似たような力だが、彼女の場合力ある人種までをも召喚でき、上位互換のようなものだ

 一騎当千の実力だけではなく、軍隊を呼び出すこともできる彼女は正に新人勇者最強と名指されていた


「リィリアちゃん、あの人がいつも言ってるナリヤちゃんですか?」


 アエトは目を輝かせてモニターを食い入るように見ている


「そうですよ。 そのうちアエトも会えると思います」


 そうだ、私がハイプリエステスになることができれば、自由に世界を回ることができる

 同じように世界を回るナリヤとどこかで会えるかもしれないのだ

 共に行動することはできないかもしれないが、それでも話くらいはできるだろう

 

 モニターの映像が切り替わり、魔人の出没情報が流れ始める

 以前アエトと行動していた魔人、ザルフの情報だ

 アエトの話だと、ザルフは魔人の中でも武術家気質で、強い者と戦うのが好きなようだ

 アエトは魔王と会った事はないが、その右腕を名乗る魔人には会った事があるという

 そいつは真っ赤な服を着た女魔人で、シュライナという名前くらいしか分からないのだが、そいつがいつもアエトや他魔人に魔王からの指示を飛ばしていたらしい


「でもザルフはあまりシュライナのことをよくは思っていませんでした。 誰も魔王に会っていないこともありましたが、どうにも胡散臭いって言ってました」


 アエトとザルフはいつも行動を共にしていたらしい

 それはザルフがアエトを可愛がっていたからだ

 まるで本当の娘のように、本当の父親のようにお互いを思っていた


「だから、ザルフもきっと、人間と分かり合えると思うんです。 確かに彼も人を殺していますが、それはザルフも、大切な人を魔王に囚われているからで…」


 どうやら魔王陣営は一枚岩ではないようだな

 それならば人質を取られている魔人をこちらに引き込めるかもしれない

 魔人は確かに人に害成す者もいる。 だが感情があり、アエトのように争いを好まない魔人もいるのだ

 ザルフの場合は少し違うが、人質によって従わされている魔人は多いのだとか


「あ、また映像が切り替わりましたよ」


 指をさすアエトに頷いてモニターを見ると、驚くべき情報が流れてきた


「速報です、帝国が、全世界に対して宣戦布告しました」


 モニターに映るキャスターと思しき女性が慌てた様子でその情報を伝えた

 さらに続いて帝国の女帝、ロクサーナ陛下が映る


「我が帝国は、世界統一国家を目指すため動き出すことをここに決定した。 従属する者にはそれなりの地位を与えようではないか。 だが、抵抗するというならば、生存の道は閉ざされたと思い知ることになるだろう」


 魔王が動いている今この時に、人同士で争うだと!?

 何を考えているのだあの女帝は!

 ロクサーナ陛下はそれだけ告げると映像が切れ、キャスターの女性が映る映像に戻った


「何ということだ…。 以前からこの国を狙っていたが、本格的に侵略行為に出るということか」


「全く、帝国は何を考えてるんだ! 今はそんな場合じゃないだろう!」


 まわりの大人たちも口々に怒りを口にしていた

 帝国は真っ先に目の上の瘤であるこの国を狙うだろう。 聖王様は周りの国々と連携を図るだろうが、帝国軍は力ある者が多い上に、その数も他国と比べれば圧倒的だ

 だてに世界二位の国土を誇る国ではない。 さらには属国も多い。 このティライミス聖国の周りにもいくつか属国がある

 それらの属国の軍事力も相まれば、ティライミスは滅びるかもしれない


「何としてもこの戦争を止めなければなりませんね。 リィリア、帝国の勇者フロレシアと接触してくださいな」


 女神様が私にそう指示を下さった


 わかりました。 勇者会議の開かれている国、アードラントへ向かいます


 隣国アードラント

 帝国に隣接する国で、その国土は帝国に次いで世界三位という非常に広い国なのだが、そのほとんどが砂漠という過酷な土地でもある

 その砂漠のオアシスにあるのがアードラントだ。 砂漠には食料に飢えた凶暴な魔物も多い

 心していかなければ命の危険もある

 だが、今すぐにでも行かなければ。 行って勇者フロレシアに会わなくては

 私はすぐにアエトと共に旅立つ準備を済ませ、聖王様に報告

 聖王様は快く許可してくれた

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