悪魔1
愉快でしょうがないデス。 わたくし達に簡単に操られて滅びに向かう人の姿が、本当に愉快デス
ミザリーもキャリーもうまくやっているみたいデスね
四恐の悪魔ことわたくしエスターは、小国アルザマードへ来ているのデス
我ら悪魔を崇めるこの国は信仰心によって力を得る悪魔にとっては絶好の降臨場所なのデス
まぁ信仰心で強くなるのは神の奴らもいっしょデスがね
「エスター様、紅茶の準備ができました」
「ありがとデス」
紅茶を用意してくれているこの娘はミラ。 わたくしの忠実な下僕デス
人間族にしてはよく分をわきまえた可愛い子デス
「ミラの紅茶はいつも美味しいデス。 褒美をやるデス」
「ありがたき幸せにございます」
わたくしの足をミラに差し出すと、ミラは恍惚として舐め始める
クヒ、可愛い、本当に可愛い下僕デスよ
「エスター様、キャリー様がお見えになりました」
わたくしの座る王座にこの国の王が報告に来る
こいつはわたくしを心底好いているようデス。 人間族の王のくせに悪魔に堕落するなんて、最高にクズで最高に気持ち悪い男デスね
こいつは私たちを召喚するために4万もの生贄を用意した。 だから願いを叶えてあげるデス
その願いは、全ての支配
そんなことでいいなら容易いデス
わたくしは王を蹴り捨てるとキャリーに駆け寄った
「キャリー! 会いたかったデスよ」
「フフフ、エスターは本当に可愛い子ね」
キャリーはわたくしの一番大切な、何よりも大事な悪魔なのデス
ミザリーもわたくしを可愛がってはくれますが、キャリーほどじゃないデス
「キャリー、どうデスか?」
「順調よ。 ミザリーは手間取ってるみたいだけど」
「聞いたデス。 変な聖女がミザリーのテラーナイトメアを消し飛ばしたらしいデスね」
そうなのデス。 この世界の人間にあれが消せるとは思わなかったのデスよ
テラーナイトメア、その名前の通り恐怖の悪夢はとにかく人に恐怖を植え付けるために存在するデス
人ならば、一目見ただけで恐怖に震え、発汗し、失禁、嘔吐、痙攣をおこして無様な死に至るデス
それを右手の一当てだけで…
その聖女、まともじゃないデスね
「まぁ、ミザリーならまた新しいテラーナイトメアを生み出すでしょう。 それに、私の方もうまくいったわ。 帝国はもう私の意のままよ。 邪魔な皇帝の妹も勇者会議ってやつでいないしね」
「さすがキャリーデス。 もはや世界は取ったもどうぜんなのデス」
「ヨローナはどうデスか?」
「ああ、魔王のとこへ向かわせたけど、あれは悪魔の面汚しね。 これで失敗したら消すわ」
「クヒ、出来の悪い奴はどうしようもないデスね」
ヨローナは四恐で一番駄目なやつ。 魔界でも落ちこぼれ
潜在能力だけで四恐に選ばれたらしいデスが、いつまでたってもダメダメダメなのデス
とっとと殺しちゃえばいいデス
「じゃぁ私は戻るわね。 エスター頑張ってね」
「はいデス! キャリーも頑張るデス!」
キャリーはわたくしをハグして行ってしまったデス。 もっと一緒にいたいデス
でも今はわたくしはわたくしの仕事をするデスよ
「何見てるデスか。 とっとと聖女を捕まえてくるデス」
こいつらには聖女を捕まえて来るように命令しているデス
これまで捕まえれた聖女はまだたったの3人デス
拷問して情報を聞き出そうとしたけど、意外と口が堅くて苦労するデスよ
だから頭を直接切り開いて聞いたデス
ミザリーのテラーナイトメアを消した聖女の名前は分かったから、キャリーに伝えておいたデス
でも、名前とほんの少しの特徴だけデス
もっともっと色々情報があれば、どういう仕掛けでテラーナイトメアを消したのか分かるデスのに
「クヒ、クヒヒ、趣味と実益を兼ねたいい仕事デスよね。 聖女の悲鳴、本当に、気持ちいいデス」
股を抑えて疼きを止めて、わたくしは一人拷問の様子を思い出しながら絶頂するデス
なんで私ばっかり…
私は四恐何てなりたくなかった
ただ、平和に
ダメダメ、こんなこと考えてるから悪魔らしくないってみんなにいじめられるんだ
でも、それでも争いは嫌い。 なんでみんな血とか臓物とか好きなんだろう?
私が好きなのはお花とか、ちっちゃな可愛い動物とか、あと人間の服もいいわね
ああいうの、着てみたいなぁ
でも私は悪魔だから、人間と友達になんてなれない
なんで私、悪魔になんて生まれたのかな?
あーもう! ダメダメ、考えない! 今は魔王に合って支配しなきゃ
じゃないと、私が殺されちゃうから
魔王の気配は手に取るように分かってる。 この世界でひと際魔物としての質が高い魂。 それが魔王だから
もう少しで見つけれる
魔王には悪いけど、私だってまだ死にたくないもん
でも、私は魔王に合った瞬間に、思ってしまった
守らなきゃって…