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聖乙女生まれる45

 なかなかに険しい道を進み、道中に出てくる魔物を倒したり、私の能力やアエトの力で仲間にしながら歩いて行くとようやく岩石地帯へとたどり着いた

 大体いつもこの場にいると聞いていたのだが、どこかへ出かけているのだろうか?


「いませんねぇ。 セリセリはちょっと周りを飛んでみてくるですよ」


「気を付けてくださいね」


 セリセリなら大丈夫だと思うが、なんだか胸騒ぎがする

 とにかく無理をしないように偵察に行ってもらった


「リィリアちゃん、ここなんだか様子がおかしいです。 普通こういうところにはトカゲ型の魔物や蛇型の魔物がいるはずなんですよ。 でも、気配や匂いすらしないんです」


 アエトが匂いを嗅いでクンクンと鼻を鳴らしている

 彼女の魔物探知能力はかなり精密なため、彼女がいないと言うのなら本当にいないのだ


「そう言えば鳥のさえずりなんかもなくなってます。 さっきの道はたくさん泣いてたのに」


 耳を澄ましていたライラも違和感を感じたようだ

 そこにセリセリが慌てて帰っていた


「大変だよ! あっちの方でナグ・ソドースっぽい魔物がワイバーンっぽいのに襲われてる!」


 ワイバーンは亜竜種で凶暴なのだが、ランクはBランクでナグ・ソドースならば勝てない相手ではないだろう

 それなのに襲われている?


「なんか、いっぱいいたんだよ。 えっと、ぱっと見だけど23匹くらい!」


「おかしいですね。 ナグ・ソドースならそのくらいなんてことないはずなんですが」


 アエトの言うとおりだ。 単体で一騎当千をするほどに強いのがナグ・ソドースである

 

「それで、そのワイバーンってどんな感じでした?」


 アエトが魔物の分析モードに入っている。 彼女の魔物に関する知識でこの状況を整理するようだ


「えっと、体色は赤、あ、一匹だけ白いのがいたよ。 全ワイバーンの目が赤く光ってて、風の魔法と炎の魔法を交互に操っているみたいだったよ」


 アエトはその情報から答えを導き出した


「ワイバーンリーダーがいます。 リーダーは長く生きて知恵をつけ、一回り大きく、体色が白くなったものです。 群れをまとめ上げて的確に指示を飛ばす厄介な相手ですね。 ナグ・ソドースが襲われると言うのも納得がいきます。 リーダーが率いるワイバーンの危険度はSランクに跳ね上がり、通常の竜種と同じくらいになりますから」


 アエトはもともとが竜種の魔物だっただけに竜種や亜竜種に対してかなり詳しい

 とにかく、まずはナグ・ソドースを助けた方がいいだろう


「では今からナグ・ソドース救出作戦に切り替えます。 アエトは魔物召喚で牽制、ライラは後ろで強化魔法をお願いします。 セリセリは上空のワイバーンを狙い撃つ、もしくは飛んで動きを制限してください。 私は近距離から攻撃を行います」


 作戦が決まったことで私達はすぐにナグ・ソドースの元へと走った。 案内はもちろんセリセリである


「こっちですよ!」


 セリセリの後をついて走ること数分、岩石のない開けた場所でナグ・ソドースがうずくまっているのが見えた

 見た目は角の生えた青い馬で、尻尾はトカゲのようで、ところどころに棘が生えている。 体は硬い鱗が覆い、顔立ちはなんとも凛々しい顔をしている

 だがそのナグ・ソドースは体中が傷つき、それでも立ち上がって雷を放っていたのだが、強力な雷は出しつくしたようで、その弱まった雷をワイバーンは平然と避けていた


「カンムリ、ベッキー、ミザリア!」


 アエトがまず魔物三匹を召喚した

 巨大な鶏型の魔物のクロカトリスのカンムリ、角の生えた猫魔物、ケットウォードレーダーのベッキー、鷲型魔物のファルクベガのミザリアが召喚され、ワイバーンたちの目を引き付ける

 特にベッキーは魅了という力を持っているので、ワイバーンはジッとベッキーの方を見つめていた


「強化します!」


 ライラが全員に身体能力強化とある程度の攻撃を防いでくれる結界を張ってくれた


「ロックバレット、ボンバ!」


 次にセリセリが空を飛ぶワイバーンを銃で落とす。 この銃撃は対象にあたったとたん爆発するという強力なもので、本人でも思っていないような威力に驚いていた

 今の一撃で5匹のワイバーンを討つことに成功し、ワイバーンたちの陣形が崩れた


「ハイジャンプ! からの! フルボルトクラシュラ!」


 中位の雷魔法でワイバーン数匹を落とす。 地面に叩きつけられると同時にそこから電撃が周囲に走った

 それは地面に降り立っていたワイバーンを痺れさせ、そこをカリスで首を落としていった

 私達の連携によりみるみるワイバーンの数が減っていき、ライラが治癒魔法によってナグ・ソドースを回復させることに成功した

 ナグ・ソドースは起きあがるとワイバーンを雷を纏った牙で噛み砕いて行き、最後に残ったリーダーを強力な雷で撃ち落とした


「ふぅ、ナグ・ソドースは無事みたいですね。 作戦終了です」


 後にはワイバーンの死体が積みあがる。 この死体は持ち帰ることにしよう。 何せワイバーンの肉は高級品なのだ

 魔力を消耗した疲れを感じていると、ナグ・ソドースがこちらに近づいてきた


「う、まずいですね。 今襲われればひとたまりも…」


 そう思っていたのだが、ナグ・ソドースは私に跪いて頭を摺り寄せてきた

 どうやら助けたことでお礼を言っているようだ。 ふむ、改めてみるとかなり可愛い目をしているではないか


「ナグ・ソドースはお礼がしたいって言ってますよ」


 おお、それならばちょうどいい。 尻尾の針を少しだけもらうことにした


「そんなことでいいのかって聞いてますよ」


「そんなことも何も、それ以外に目的はないですし」


 ナグ・ソドースは私に尻尾を向けた。 引き抜けということらしい

 なるべく痛くないように慎重に、何本かの針を抜くと、ナグ・ソドースは嘶いて空を飛んで行ってしまった

 無事尾針を手に入れた私達は村に戻ることにし、ワイバーンの死体を回収した

 今夜はこのワイバーンの肉を使ってステーキ、いや、焼き肉パーティでもいいかもしれない

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