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聖乙女生まれる44

 ラタリウスさんの家から飛び去る道中、女神様に何か思うところがあるようなので聞いてみた


「わたくしは、あの子のことを誤解していました。 あの子は聖女になったにもかかわらずその役目を放棄し、一方的にわたくしたちのことを嫌っているだけだと思っていましたわ。 でも、間違っていたのはわたくしの方だったのですね。 ありがとうございます、リィリア。 あなたがラタリウスに会った事でわたくしは考えを改めることができますわ」


 女神様は私に感謝の気持ちを素直に伝えて下さった

 私もラタリウスさんに会えてよかった。 異世界人とこんなにも早く合えるとは思わなかったし、彼女の考えに触れることもできた

 きっと彼女に会えたのは運命だったのだろう


「そうかもしれません。 運命の女神様のなせる御業ですわ」


 運命の女神様ですか?


「はい、わたくしとはまさしく次元の違う女神様です。 全ての世界の運命を司っていますわ」


 なるほど、ティライミス様よりも上位の神様がおられると言うのは聞いていたが、運命の女神様もそうなのか

 いずれティライミス様以外の神様にもお会いしてみたいものだ


「わたくし以外の神様に、ですか…。 確かにあなたなら…」


 私なら?


「い、いえ、何でもありません」


 どうにも要領を得ないが、女神様には何か考えがおありなのだろう


 それから私達は数ヵ月をかけて依頼書の束を順調に片づけて行った。 残る依頼書はあと一枚、これが一番難解だと言っていいだろう

 とある魔物の捕獲依頼だ

 魔物の名前はナグ・ソドース。 天を駆け、雷を喰らい、大風を巻き起こして雨期の訪れを告げると言う。 魔物の中では比較的おとなしい魔物だのだが、当然危害を加えようとすれば攻撃してくる

 敵に回った時のナグ・ソドースは危険だ。 危険度はAクラス。 今の私では勝つことはできるかもしれないが、捕獲となると厳しい

 実はこのナグ・ソドースという魔物は傷つくと雷鳴を呼び起こし、半径1キロ圏内を襲う雷を落とす

 一撃一撃が必殺の威力を誇るため、その範囲内に人がいれば大変なことになるだろう


「セリセリ、ライラ、アエト、恐らくかなり危険な任務になると思います。 心してかかりましょう」


 三人供うなずき、私と共にナグ・ソドースの元へ向かう

 ナグ・ソドースはラタリウスさんの家から東にあるエリード村、そこから少し離れた岩石地帯にいるらしい

 そもそもなぜこの魔物を捕らえるのか?

 依頼書に書かれている内容によると、ナグ・ソドースの尾針というものが必要なのだそうだ

 この尾針は強力な痺れ薬の素材となるらしい。 この痺れ薬は要は麻酔として使われるのだ

 そういえばラタリウスさんの家にもナグの尾針と書かれた瓶が置いてあったな


 宙を飛び、時には歩きつつ、一週間をかけてエリード村にたどり着いた

 この村は農業を中心としており、カブンというオレンジのような果物が有名だ

 私も食べたことがあるが、強烈な酸味の後にとろけるような甘みが訪れるという不思議な果物だった

 これをジュースとして絞って飲むと、甘酸っぱいフレッシュな飲み物になる


「一回来てみたかったですよ。 産地で採れたてを食べるって素敵ですよね」


 セリセリは既に涎をたらしている。 それをライラが拭きとっていた


「おお、聖女様、お待ちしておりました」


 村に入ってすぐに話しかけてきたのは、教会から派遣されている医療のスペシャリスト、リカバリーズのメンバーと思われる男性だった

 彼はベンズ・アードットと言って、リカバリーズの幹部

 彼自身の治癒魔法も強い上に、医師としても非常に洗練された技術を持っているらしい

 そう、このリカバリーズというのは、魔法と医学で人々を救う組織なのだ


「実はですね、今までは我々に協力してくれていたハンターが針を取って来てくれていたのですが、その彼が数日前のSランク魔物との戦闘で怪我を負ってしまいましてね。 幸い命に別状はなかったのですが、しばらくは安静が必要なようなのです」


 なるほど、それで私達に代わりにとって来て欲しいというわけなのか


「尾針さえとってきてもらえれば、捕獲でなくても大丈夫です。 できれば、あまり傷つけないようお願いします」


 この針を取って来ていたハンターとは相当な実力者だったのかもしれない

 何せそのハンターはナグ・ソドースを一切傷つけずに尾針のみを抜き取ったと言う


「一応これを持って行ってください。 奴は麻痺の魔法を行使すると聞きます。 これは飲むとたちどころに麻痺を取り除いてくれる薬です」


 ありがたい、もし麻痺状態になった時は使わせてもらおう


「ではお気をつけて」


 ベンズさんは深くお辞儀をして私たちを送り出してくれた

 岩石地帯までは歩いて3時間ほどらしい。 道中CランクのロックゴーレムやBランクのグランドベアなどが出るので注意していかなければな

 アエトは臭いに敏感なので警戒してもらおう

 しかし、いまだにどうやって尾針を手に入れればよいか、その手段を思いつかない

 普段温厚でおとなしい魔物だけに傷つけるのは気が引けるしな

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